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人生の深視力を鍛えるセルフサイエンスとEQ

by : 6SJ 田辺 康広  | 

2017年9月1日 | 

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自動車や二輪車の大型免許を取る時(2007年6月から道路交通法の改正により、
中型免許が導入され同免許でも深視力検査も必要)に通常の視力検査だけではなく、
「深視力検査」というものが行われます。

深視力検査とは、物を立体的に見る力や遠近感が正常に備わっているかを調べる検査で、
大型免許や二種免許では視力は片眼0.5以上 両眼で0.8以上が必要ですが、

深視力検査は、検査機器より2.5m離れた位置にて測定し、
検査機器内の3本の棒の内、真ん中の1本が前後に動き、
3本の棒が一列に並んだ時点でスイッチを押し、
1回の検査で誤差が前後2cm以内の範囲で合格範囲となります。
(通常3回検査を繰り返し、誤差の合計が6cm以内であれば合格となります。)

平たく言うと、立体視力ですね。

 

■「人間理解のグループ・ダイナミックス」(吉田道雄、ナカニシヤ出版)

この本を読んでいたら、第2章で「両眼視差」という説明が出てきました。

われわれは基本的には二つの目を持っている。それぞれの網膜に映る像にはズレがある。
これを両眼視差と呼んでいる。
このズレがあるために、我々は奥行きがあることを知覚できる。外界が立体的に見えるのである。

確かめるための簡単な実験は、目の前の物か景色を見たまま、片目を覆うのだそうです。
そうすると今まで立体に見えていたものが、途端に平面になってしまうそうです。
やってみました。
言われればそうだし、”いや、それでも私は自分は立体にとらえている”と言いたくなりそうな気持もあります。

 

■悩める人

私はキャリアコンサルティングや企業向けの人材開発研修で日常生活での相談をたくさん受けます。
例えば「昔から英語が大好きで大学時代も英語を子供たちに教えるボランティア活動をしてきました。
なのに英語を使う会社に内定をもらえないし、TOEICもあまり対策勉強をしないので思ったほどの点数が取れないのです。
どうしたらいいのでしょう」という相談があったりします。

私は、カール・ロジャースの説を借りて、
心には「現実にさらされた自分を映し出す網膜」と、
「自分がイメージしている自分像を映し出す網膜」があるのではないかと考えています。

むしろ、心の両眼に映し出される網膜にズレがあるから人生が立体的に見え、
今何をしたらいいのか、何ができるのか、何をしたいのか、がわかるのではないか、と考えています。

上記のケースでは
「英語が昔から好きで、得意と思っている(自己イメージ)」学生さんが
「TOEICもあまり高い点数が取れず、英語を使う仕事にもなかなか内定が取れない(現実)」と
このズレに悩んで相談に来られるのだと理解します。
そして「私はズレなど持ちたくない!」という心情も理解します。

しかし私の心の中には学生さんに向かって

「ズレを楽しみませんか?」
「このズレがあるから今取り組むべきこと、取り組めること、取り組みたいことがわかるのではないですしょうか?」
「単に途方に暮れ、悩みに揺さぶられてただ単に時間を浪費するのではなく、自分探索の大事な情報と機会をもらえたと考えてみるのはいかがでしょうか?」

と言ってしまいたくなる自分がいます。

 

■日常の目、科学の目

上述の吉田先生は、ありのままの状況や現実を受け入れる「科学の目」が大切と説きます。
科学者は、受け入れにくい結果も受け入れて次のために活かす必要があるというのです。

シックスセカンズ社を著名にした子供向けの情緒教育プログラムに「セルフサイエンス」があります。

ありのままの自分を固定観念や先入観を外して観察する目こそ、
より豊かな人生を築き、送るために必要なことだと考え1967年から実施しているプログラムです。
(EQこころの知能指数・ダニエル・ゴールマン著・講談社刊 第15章「情動教育のかたち」にはセルフサイエンスの授業風景が書かれています)

● 「友達と喧嘩をしてしまった自分」
● 「その場を取り繕うために嘘をついてしまった自分」
● 「友達からの誘惑に負けて一緒にルールを破ってしまった自分」

という状況が生まれたら、

● 「喧嘩などする自分ではない、喧嘩してしまったのは相手が悪いからだ」
● 「嘘などつく自分ではない、つかざるを得ない状況があったからだ」
● 「誘惑をするあいつが悪いからだ」

と考えるのではなく、

● 喧嘩をした事実とその事実を作った自分を受け止め、分析する
● 嘘をついた事実とその事実を作った自分を受け止め、分析する
● 誘惑に乗り、ルールを破った事実とその事実を作った自分を受け止め、分析する

このように自分をとらえる「科学の目」が大事だと子供たちに理解させる授業です。
ですので、「セルフ・サイエンス(自分を科学する)」と命名しているのです。

 

■科学の目を濁らせるのは感情

「希望」「展望」「絶望」などで使われる「望」は心の網膜に映る景色ではないでしょうか。

その景色に霞をかけるのは
虚栄心であったり、驚きであったり、時には誇り(プライド)であったりするのではないでしょうか。

では、霞を取り除き「科学の目」を働かせるにはどうすればよいのでしょう。
解は明快で、「霞をかけている感情を特定し、マネジメントしていくこと」になります。

そのために、感情に関する情報収集ができ、解析し、推論を立てさせるEQ(感情知能)の活用ではないでしょう。

「今自分はどんな感情で状況や結果をとらえているのだろうか」
「この状況や結果が自分にどのような感情を生ましめているのだろうか」

このような自己会話を増やして、感情を微細にキャッチする
「感情リテラシー能力」を磨いていくことが「科学の目」を磨く第一歩だと思います。

それが「現実の自分」を受容し理解す目を鍛え、「イメージする自分」との差異分析を可能にします。
そしてこの差異分析こそが、自分の生き方に指針を示してくれる大事なデータとなるのだと思います。

 

■結び

取り留めもなく書き殴りましたが、あらためて

人生の悩みや迷いを乗り越え、
自分らしい人生を構築するためにも、

一人ひとりが、感情を「科学の目」で捉え、
生きるための自分情報に仕立て上げる

「感情知能=EQ」

の装填と活用が求めらるのだと考えた第2章でした。

シックスセカンズジャパン株式会社 代表
田辺 康広