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AI時代のEI活用~シリーズ1「だまされたフリ」

by : 6SJ代表 田辺 康広  | 

2018年2月1日 | 

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AI時代に突入すると現在の仕事の半分がAIにとって替えられる、という。
生き残る仕事は社会的知能(Social Intelligence; SI; ソーシャル・インテリジェンス)や創造性を発揮する仕事だという。

Six Seconds社が思索、探索を重ねているのはこの社会的知能の中の「感情と思考を適切にブレンドする感情知能」である。
このシリーズではEI(エモーショナル・インテリジェンス; EQ) の文脈からすこし話を進めてみたい。

今回は、ソニー社が新型ロボットAIBOを発売した1月11日に見た夢からだ。

 

そこはとある老人ホーム。昼時だった。
昼食をとっているのはコウイチさん(男性:84歳)、
食事介助をしているのは最新AIを搭載した人型ロボットのサクラだ。

サクラの仕事はアイカメラから入るコウイチさんの動きや表情を解析しながら、
食事のペースを勘案しながら完食させることだ。

少し認知症が入ったコウイチさんは、昨日からコウイチさんにアサインされたサクラを気に入っている。
好みのルックスだけではなく、自分のペースに合わせて食事を口に運んでくれるからだ。

オッと、コウイチとサクラの会話が始まった。
「今日もいい天気だね。」
 「ハイ、今日は晴天です。」
「今週はこんな日が続くのかね」
 「ハイ、今週の天気をインターネットで検索してみました。どの情報も今週は晴天が続くとのことです。」
「ところで、最近〇〇さんの顔を見なくなったのだが、どうしたかな」
 「ハイ、〇〇さんの件については守秘義務がありますので答えられません。」
「・・・」

「ところで、サクラちゃんには好きな男性タイプなんているの」
 「ハイ、男性の分類手法は知っています。」
「そうじゃなくて、サクラちゃんの好きなタイプだよ」
 「言っていることがよくわかりません」
「・・・」

「オッ、テレビで陸上競技をやっているね。」

「ハイ、高校総体です。~時までの放送です。放送内容は100M競争、砲丸投げ、棒高跳びと続きます。」
「・・・」
「・・・」

「俺ね、むかし陸上の選手だったんだ。」
 「ソウデスカ」
「うちのあたりでは結構脚が早くて、俺は”韋駄天のコウイチ”なんて言われてたんだよ。」
 「ソウデスカ」
「そういえば、高校総体にも出たな」

サクラはインターネットを検索し始めた。そして答えた。
 「高校総体は昭和38年から始まりましたから、コウイチさんは出ているはずがありません。」

「アッ、違った。高校選手権だったかな・・・」
 「過去の陸上競技全国大会の参加者を100年分調べましたが、コウイチさんの名前はどこにも見つかりませんでした。」
「アッ、県大会だったのかな。とにかく俺は入賞したんだ。」
 「記録が見つかりません」
「とにかく俺は脚が速かったんだ!”韋駄天のコウイチ”って呼ばれてたんだ!」
 「ソレガドウカシタンデスカ」
「・・・・・・」

この会話以来コウイチさんはすっかり、サクラが嫌いになってしまった。
「できたら俺の話を黙って聞いてくれる相手にしてくれないか」と心の中でつぶやいている。

『だまされたフリ』
『聞こえなかったフリ』
『知らなかったフリ』

これらは人間関係を豊かにし、味わいのあるものにするスキル。
私たちに備わっている素晴らしい知性であり知能であるEI(エモーショナル・インテリジェンス; EQ) 

「AI普及の時代に生きるからこそEIを多いに大いに活用していきたいな」
「皆様にもEIの有益性を伝えていきたいな」

と思って目が覚めた。

ラジオからはプラターズの「グレートプリテンダー」が流れていた。

シックスセカンズジャパン代表取締役
田辺 康広