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EQ実践者の声「挑戦を、理論や理屈で判断する人はいない」

by : 上級EQファシリテーター・キャリアコンサルタント 根岸充  | 

2015年7月15日 | 

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仕事を選ぶとき、理論や理屈で判断する人は少ない。
仕事の選択は、理論や推論の帰結ではなく、挑戦だからだ。
自分自身の「価値観」や「感情」に基づく意思決定が将来に影響する。


東京しごとセンター 就職支援アドバイザー / 1級キャリア・コンサルティング技能士
GCDF-Japanキャリアカウンセラー
EQPCプラクティショナー / EQACアセッサー

根岸 充 様


大手人材開発企業で、情報処理から事業運営まであらゆるHR(human resource)事業に携わってきた根岸さんは、リーマンショック以降の求職者の状況を見て、キャリアカウンセラーとして独立しました。

「日本を元気にする」ために、さまざまな「企業」の採用活動をお手伝いしてきた経験を、今度は「ひとりひとり」の側で活かしたいと考えたからです。その過程で宿命的に出会ったSix SecondsのEQ理論のなかに、さまざまな課題解決の道筋を見出しました。

キャリア・コンサルティングとEQとの高い親和性をバランスよく活かしながら、就職支援、カウンセリング、コーチングと、多彩な活動を展開しています。

 

1冊の本『EQ こころの知能指数』(ダニエル・ゴールマン著)との出会い

若い会社員時代に、会社の近くの書店でたまたま目にしたダニエル・ゴールマンの『EQ こころの知能指数』が、EQに関心を持つきっかけでした。
当時はまだバブルの余韻のある時代で、あらゆることが混とんとしており、ひとりひとりに膨大な業務量が与えられていました。役に立っているという「達成感」と、これで良いのかという「虚しさ」が寄せては返すなかで仕事をしていました。

仕事にやりがいは実感していたものの、どれだけ働き、どれだけ成果をあげたかが評価軸でしたので、社内にはいつも、軋轢(あつれき)やコンフリクトがありました。誰もが消耗、誰もが疲弊しているように見えました。「この国はどこに向かっているのだろう?」という疑問や焦燥感を持っていましたが、「こころ」を再評価する試みとして、EQは何かを変えてくれるように思えました。

その後、個人のキャリア形成や就職支援を志し、独立を決意。GCDF-Japanの講習会で、シックスセカンズの田辺代表と出会い、あらためてEQへの関心が高まりました。キャリア理論やカウンセリングの実践方法を学びながら、ほぼ並行してEQを学べたことが大きな意味を持ちました。EQのエキスパートで碩学(せきがく)の田辺さんや、Six SecondsのCEOジョシュア・フリードマン氏から直接指導を受けられたのは、幸運といってよいでしょう。

 

EQを学び資格を取得することで、キャリアカウンセリングの幅が広がった

現在、都の就職支援機関で、主として20代中心とする若年者の相談に応じています。よく聞かれるのが、「自分にはどんな適性があるのかしり知りたい」「自分に向いていることがわからない」という言葉です。多くの人が、「適性」に合った職に就くことが最良の幸福だと考えているようです。

それをすべて否定するわけではありませんが、いわゆる「適性検査」のようなもので導き出される「適性」が、仕事を選んだり、長く勤めたり、困難を乗り越えたりする際の決め手とはなりにくい、という事実にも目を向けなければなりません。意思決定の要因は「適性」より「適応力」。つまり、変化にも向き合っていこうという主体的な「感情」です。「適性」だけで考えてうまくいくはずがない。

実際に多くの方々とのカウンセリングを通して感じるのは、「その仕事でやっていこう」と意思決意し、行動する鍵となるのは、その仕事に対する本人の価値観や、その仕事が好きだというその方ご自身の「感情」だということです。

アントニオ・ダマシオという脳神経学者は、脳の外科手術によって感情中枢を切除すると、意思決定に大きな支障をきたすと説いていますね。意思決定という行動は、「理屈」以上に「感情」との関係が深い、ということです。

本人の「価値観」や「感情」に基づく意思決定は、就職後の適応力にも大きな影響を及ぼします。自らが「好き」「やり遂げたい」「あきらめない」と思う感情が、環境変化に応じる適応力や対応力となっていくのです。

 

カウンセリングとEQの高い親和性

キャリア・コンサルティングの指針のなかにEQの活用が明記されているわけではありませんが、EQとの親和性はきわめて高いと断言できます。意思決定についてはもちろん、直近の経験からダメージを受けて苦しんでいる相談者や、悩みをどう表現していいのかわからない相談者に対し、感情を整理し、受容、共感し、その先へと導く道筋をEQモデルは提示してくれます。キャリア理論やカウンセリング理論が、具体的にはあまり扱っていない分野ともいえます。自らの感情を理解して 人の感情にアプローチする実践法を、EQが教えてくれたといって過言ではありません。

カウンセラーの能力を向上させ、キャリアカウンセリングの質を高めていく点においても、EQの考え方と実践方法は極めて役立つものです。「感情」をとらえる視点を持つことで、相談者の苦悩や戸惑いなど、心の奥深い部分への問いかけを行うことができるようになるからです。

カウンセラー自身も自らの感情を理解しコントロールできるので、冷静且つ安心してご相談頂ける対応を習得できます。相談者の思いを最良のかたちでかなえるだけでなく、その方が、これから出会うであろう様々な難題を乗り越えていただくために、EQはこれからも大いに活用できると考えています。

 

EQの学びと活用が、キャリアカウンセラーの社会的な信頼を高める

キャリアカウンセラーの資格を持つ方は、今後もどんどん増えていくでしょう。しかしながら個々のカウンセラーが、それぞれの技術や経験を実際の現場でどう活かしていけるかは未知数です。だからこそ、キャリアカウンセラーという肩書をもつ人たちは、日々研鑽し、能力を高めなければなりません。

EQを学び、理解し、活用することで、キャリアカウンセラーへの社会的な信頼を高めることができると考えています。そして私たちへの信頼が高まることで、さらに大きなお返しが社会にできるのではないでしょうか。このような視点からEQを紹介し、キャリアカウンセラーの皆様をアシストしていくことも、私の役割だと認識しています。