田辺康広のKnowledge Magazine

リーダーシップと財務的な側面

Vol.007 2012年2月6日発行

■リーダーシップと感情知能
世界クラスのリーダーは多数の分野で卓越した存在でなくてはなりません。
それには、どの組織、業種、業態に所属したとしても抜きんでるほどの、
特別な能力の組み合わせを持つ必要がありますし、
実際に特別な能力を持っています。

また偉大なリーダーは群を抜いて有能でなくてはなりません。

ビジネス・スクールでは、市場や財務諸表の理解のための取り組みは
しっかりとやっていることが分かります。
しかし、企業のリーダーたちは、
 「最大の課題は従業員の扱い方にある」といいます。
単純には捉えることのできない従業員の複雑さにいかに適切に対応でき、
彼らのエネルギーをどのように支えていくかが、重要だといいます。

個人の生産性の約3分の1は、4つの「人間的」要素に起因すると考えられます。

シックスセカンズがリーダーを対象に行った国際調査では、生産性の28%は
有用なフィードバックの存在、仕事の選択、仕事の価値の把握、
ポジティブな雰囲気によって予測されることがわかりました。

感情知能の高いリーダーはどうやらこうした人間的なニーズに、
より効果的に対応しているのです。

個人の感情知能やリーダーシップを、仕事を達成する能力に
関連づけている研究がいくつかあります。

たとえば、ある主要な販売調査によると、高業績の販売員の
生産性は下位業績者の12倍高く、平均的業績の人よりも85%高い。
この違いの約3分の1は技術的スキルと認知能力に起因し、
3分の2は感情コンピテンシーに起因するというものです。

生産性の阻害要因の一つは常習的な怠慢、欠勤です。
ストレスマネジメントに関連づけた感情コンピテンシーは、
この人にかかわる財務コストを削減する上でとても重要です。
業務上のプレッシャーを強く感じ、タイムマネジメントのスキルが
弱い従業員は、仕事上のミスを犯す可能性が2倍になります。
セルフマネジメントのスキルが高い従業員は、
より上手に仕事上のプレッシャーにも対処できてます。

さらに、複数の要因が考えられます。
個人の感情コンピテンシー、組織の感情(トーン、雰囲気)は
リーダーシップによって生み出されるのです。

個人とって、プレッシャーにさらされながらも冷静さを保てることは
大きな業績を生む要因となります。
おそらくそれが、モトローラの生産工場がストレスとEQのプログラムを導入して、
生産性を93%向上させた一つの理由でしょう。

製造工場の監督者が感情知能の研修を受けたケースでは、
損失時間を伴う事故が50%減少、
公式な苦情件数も年平均15件から3件に減少し、
その工場の生産性目標も2,000万円(25万ドル)を
超える成績を上げることができたのです。

一方で、イライラや不信感に満ちた雰囲気が生まれると、
いとも簡単に生産性は損なわれます。
デミングセンターの調査で発見されたように
 「仕事上の無駄な時間の50%が信頼不足に起因する」、
言い換えると、感情的要因が人々の仕事の取り組み方を
推進していることが理解できます。

依然解決されていない疑問もあります。
リーダーがこうした問題に対処する際に、
感情知能は本当に役立つのだろうかという疑問です。

これについては、感情知能がどのように業績を予測するかについて、
説得力のある研究結果があります。

デビット・ロゼットはオーストラリア税務局で一連のアセスメントツール、
業績指標、従業員による順位付けを使って、リーダーの評価を行いました。
彼の関心は、何が高業績者の違いを生み出しているのかを理解することでした。

それは個性か?、IQかなのか?

結果、IQは業績変数の2%以下しか予測せず、
個性のテストでは何も予測できないことが明らかになりました。
その一方で業績変数の25%は感情知能で説明されたのです。

おそらくハーバード・ビジネス・レビュー誌が、
リーダーたちに優秀さとは自分の内的資源に始まり終ることを思い出させた理由も、
ここにあるのでしょう。

  「自己認識を開発しそこなった経営幹部は、
   気持ちが萎えていくようなルーティンに陥り、
   本当の自分自身を脅かしてしまう危険がある。
   実際に、内部の心象風景の探索を避けることにより、
   自分への動機づけが弱まるだけでなく、
   周囲を鼓舞する能力も蝕まれる可能性がある。」

■リーダーの財務的貢献
感情知能に秀でたリーダーは多くの分野でより力を発揮しているように見えます。
彼らは自分自身のエネルギーを常に認識し、
より健全な職場につながるようなやり方を選択し、それを実行します。
それにはどのような価値があるのでしょうか。

イギリス最大のレストラン・グループの一つで行われた研究では、
感情知能に秀でたリーダーは成功しやすいという明確なケースが示されました。

その画期的な研究では、EQスコアに基づいてレストランのマネージャーの
比較を行っています。EQの高いマネージャーのレストランでは顧客満足が向上し、
離職率が低く、年間の利益成長も34%高く、ほかのレストランよりも
確実に高い業績をあげていることが分かりました。

EQは現状の成績において重要なだけではなく、
現在進行中の成長も促進していることがわかります。

EQとリーダーシップの関係も、ペプシコ社の事例で明らかになっています。
パイロット・プロジェクトを行ったところ、
EQコンピテンシーを選考要素に加え、選ばれた経営幹部は次のような点で、
同僚もはるかに優れていました。

 ・生産性が10%向上
 ・経営幹部の離職率が87%減少(3億2,000万円(400万ドル)の節減)
 ・3億円(375万ドル)の経済的価値が付加
 ・ROI(投資収益率)が1,000%以上

ジョンソン・アンド・ジョンソンの358人のリーダーに関する研究では、
優れた業績を示すリーダーと感情知能コンピテンシーの間に
強い関係が認められました。論文の結論は
 「感情知能コンピテンシーが成功するリーダーになるかどうかの差となる」
という説得力のあるものです。

組織ではリーダーシップは最も目立ち、リーダーの情(感情的な態度)は
組織の運営に大きな役割を果たします。

上司の「機嫌が悪い日」には、上司を刺激しないように
「つま先歩き」している光景を見れば、こうした傾向が理解できるでしょう。

感情は人から人へと広がる伝染性があります。
だからこそ、アメリカ海軍における優秀なリーダーたちは
EQ的態度を意識的にとっているという研究結果があるのでしょう。
これらのリーダーはより温かく、より社交的で、感情を積極的に表に出し、
印象的で、愛想がよいものです。

「エンゲージメント(組織との感情的つながるという感覚)」に
関するギャラップの調査では、組織のEQ向上がもたらす
財務的な恩恵について明らかにしています。
より高いエンゲージメント、思いやりのあるチームは、
以下の特徴を示すという結果です。

 ・離職の可能性が50%低い
 ・顧客ロイヤリティが平均以上になる可能性が56%高い
 ・生産性が平均以上になる可能性が38%高い
 ・より高い収益性が報告される可能性が27%高い

こうした事例を裏付ける調査だけではなく、実社会でも根拠が示されています。
多くの組織でこのような事例を目にしてきましたが、
自己認識を持ち、自分を管理し、他者とつながりの持てるリーダーは、
そこで働く人々が最高の気持になるような職場の雰囲気を
醸成することができています。

その結果、人々は質と量の双方においてより良い仕事をするようになり、
チーム、組織の財務的な側面に影響を与えてゆくのです。

※1USD=80JPYで換算

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