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採用と離職防止

by : Six Seconds  | 

2012年1月16日 | 

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採用と離職防止|感情知能EQのシックスセカンズジャパン
(2018年4月追記)本記事は、Six Seconds米国本部が取り組んでいた調査研究の日本語翻訳です。後にSix Seconds米国本部が発表したBusiness Case 2016においてまとめられています。

従業員とEQ

感情知能は、さまざまな分野で従業員の成果に影響を及ぼしています。
従業員のEQレベルや従業員間の相互関係、上司との人間関係などがすべて合わさり、
独特の感情的なトーン、つまり職場の雰囲気が作られます。

人間関係から生ずる感情的なトーンは、個々人の仕事に対する感じ方と、
生産性に非常に大きな影響を与えることになります。

フィリピンにあるアテネオ・デ・マニラ大学のジョセフ・ヒーウー・ジェーは、
主要なアジアの銀行の第一線で働く卒業生100人を診断し、
学業スコアとの関連を調査しました。

するとIQはほとんど予測値になっていませんでしたが
(業績との相関は0.07、0.5%以下だった)、
EQスコアは業績の27%を予測していました。

 

貴重な人材を維持するには

離職率は、従業員が組織をどう捉えているかがわかる一つのものさしです。
言うまでもなく、離職は個人、会社の双方に苦痛を与え、
大きな財務的コストを発生させます。

それでは、個人の感情知能は企業の求める「人材の維持」に
どのような影響を与えるでしょうか。

従業員が離職する主な理由は人間関係にあります。
とくに重要な決定要素の一つは、上司との人間関係といわれています。
リーダーシップ研究の第一人者であるリチャード・ライダーは
「人々は会社を去るのではなく、リーダーのもとを去る」と述べています。

業績の良い看護師が病院を去る理由について、
私たちSix Secondsは調査を行ってきました。

私たちが使っている「OVS」という組織風土測定プログラムの
標準質問に設定されています。私たちは去っていく理由をたくさん見てきました。

人材の流出防止につながる人間関係には、
いったいどのようなヒントが隠されているのでしょうか。

アメリカの調査会社、ギャラップの事例からは
「感情がすべてだ」という説得力のある根拠が示されました。

ギャラップのチームは200万人以上のアメリカの労働者を対象に
画期的な調査を行いました。
解析の結果、従業員の「エンゲージメント(積極的な関与)」について
三つの重要な要因を特定しました。

また、高いエンゲージメントレベルを示す従業員は、
職場にとどまる可能性が50%以上であり、
並はずれたモチベーションや生産性を引きだしていたのです。

以下が三つの要因です。

1:上司から大切にされていると感じている。
2:一週間内に、リーダーの地位にいる人から認められたり、ほめられたりした。
3:会社は自分たち従業員の成長に関心があると、感じている。

このことからわかることは、組織風土の強化には
こうした人間関係の要因に注目することが重要だということでしょう。
つまり、従業員がよりポジティブな気持ちで職場に来ることができれば、
彼らはそれだけでより積極的に仕事に取り組み、より力を発揮するということです。

この議論を確認するために、私たちは先ほど述べた
OVS=組織風土測定プログラムを用いてグローバルに調査を実施しました。
職場や組織に対して抱いている感情と業績評価の関係を調べたのです。
この調査は、新入社員から最高経営責任者まで男女の区別なく、
12ヶ国を対象として実施しました。

そこで明らかになったのは、組織風土が業績の57.7%を予測するということでした。
言い換えると、職場に来る時や仕事に向かう時の気持ちが
生産性や顧客サービスなどに多大な影響力を及ぼしている、ということです。

 

EQと離職防止、利益の関係

懸命に働こうとしない従業員は、企業にとって高くつきます。
ときには離職時に現金支出を伴うケースすらあります。

EQ、人材の離職防止、最終利益の確保の関係を示す重要な例として、
ここで医療福祉業界のデータをご紹介します。

おそらく、多くの分野でも同じ問題が起こっているはずです。

みなさんは人材の採用や育成に、企業がどのくらいの費用をかけているか、
知っていますか。また、職場の問題児が他の職員に与える長期の不満が
職場の生産性にどのくらい影響を及ぼしているか、想像できるでしょうか。

アメリカの医療福祉業界では現在、全国の病院で126,000人の
看護師の補充が必要で、全病院の看護師の補充率は
ちょうど75%だと報告されています。
今後の予測はさらに劇的で、看護師を目指す人が減り、
熟練看護師の退職が迫り、2020年までに20%の看護師不足が予想されています。
つまり、何としてでも40万人の看護師が必要になる計算です。
加えて、看護師の離職率は全国平均で20%にものぼります。

看護師の求人告知、選考、採用、オリエンテーションから教育研修に
3万~4.5万ドル(240万~360万円)かかるとすると
(これは非常に低く見積もった数字で、専門性によって幅があります)、
100人の看護師を雇用している病院は、新規採用の看護師に対して
少なくとも年間60万ドル(4,800万円)の費用がかかることになります。

ポジションが埋まらない間は、時間外労働や非正規スタッフで
穴埋めしなくてはなりません、場合によっては派遣スタッフの依頼や
外注依頼する必要もあるでしょう。

そうなると、求人広告の出稿や採用スタッフの確保など
財務的な影響も大きくなります。

さらに、人員不足は病院の受け入れ患者数の減少を生み、
最終的には、減収につながっていくことになるのです。

離職率28%を示していたある病院は、職場風土改善のための
「感情コンピテンシー向上プログラム」や「ストレス軽減プログラム」を
採用することで離職率を半減させることに成功しました。
特に特別な研修やコーチングを受けさせた中核メンバーの離職率は2%以下となり、
一年足らずで80万ドル(6,400万円)のコストセーブにつなげることができたのです。

職場風土における人間関係と、
職場にとどまりたいという欲求の関係について述べた研究がいくつかあります。

■化粧品大手のロレアル
一年間でEQ研修を受けている販売員の離職率は63%低下した。

■コンピューター会社の販売部門
感情コンピテンシーに基づいて採用した人々は、他の基準に基づいて
雇用した人よりも研修を修了できる見込みが90%高い。

■米国国内の家具販売業者
感情コンピテンシーに基づいて採用した職員の初年度の離職率が半減した。

このようなデータが増えてくると、恩恵にあやかろうと、
多くの組織が採用プロセスに感情知能テストの導入を進めました。

■アメリカ空軍
毎年、採用に何百万ドルも費やしています。
筋金入りの採用官でも月に平均一人程度の採用しかできていません。
あらゆる手段を使って採用するため、採用コストがかさみます。
しかも、訓練途中でやめていくものも多いのです。

そこで、彼らは1万ドル(80万円)の予算で兵士にEQテスト実施し、
高業績者とEQの相関を解析しました。
そして、その結果を採用プロセスに用いたのです。
結果、一年で270万ドル(2億1,600万円)の採用コスト削減を実現しました。
そして、会計検査院は国防長官に、米国軍の全支部に対し、
採用や選定の際にこのやり方を導入することを勧めることとなりました。

要するに、従業員に最高の仕事してもらいたい、
ずっと組織に留まってほしいと思うなら、
彼らの感情面のニーズを真剣に考えるべきだ、ということです。

何十年も「従業員が我が社の最大の資源」だと言ってきた企業はたくさんあります。
しかし、多くの場面でこの言葉と反する行動がとられてきました。

リーダーの感情知能は、職場のメンバーを理解し、
彼らの価値を認めながら適切な対応をする時に役立つ知能です。
言い換えるなら、彼らのこころを響かせる知能、
こころに訴える知能といってもよいでしょう。

従業員は、自分たちが公正に評価され、連帯感を感じ、
そして自分の仕事には価値があると感じた時、より懸命に職務に取り組み、
在職期間も長くなります。結果、会社の財務体質も向上するのです。

※1USD=80JPYで換算