EQとリーダーシップ:業績を出す風土 その1
by : Six Seconds |
2012年4月16日 |
リーダーシップに影響を及ぼすもう1つの指標
前回までは主に感情知能がリーダーや個人の業績や行動に
どう関係するのかを見てきました。
個人レベルでEQを理解することは、重要な第一歩です。
しかし、さらにEQを観察していくと、チームや組織にも感情があり、
EQが作用していることに気づかされます。
感情知能を用いたリーダーシップに熟達していくためには
感情を3つのレベルで把握し管理する必要があります。
2:関係レベルの感情(日常的に顔を合わせる人々)
3:組織レベルの感情(より大きなシステム)
それぞれのレベルの感情は相互関係にあり、影響しあいます。
あるレベルでの意思決定、出来事、やり取りはすべて他のレベルに影響を与えます。
例えば、ある一人が仕事に遅刻をしてしまいました。
同じチームメンバーたちは、ある一人の遅刻に不満を感じます。
そして、チームメンバーたちは、不満を抱えたまま
外部の何百人もの人々と交わります。
一つの行為が引き起こした
個人レベルの感情=不満が波紋のように周囲に広がっていくのです。
同様のことが別の形でも起こります。
あるチームは新しい戦略によってそれまでの決定を
すべて変更せざるを得なくなってしまいました。
チームメンバーの一人はその決定に納得できずに、
このことが原因で生産性を極端に落としていってしまいます。
やがてその影響は周囲に広がり、チームや組織レベルでの
生産性が低下していってしまうというものです。
リーダーは3つのレベルの感情にすべての責任を持つ必要があります。
関係レベルの感情、組織レベルの感情を理解し管理するために、
あらゆる状況をまず個人レベルの感情(自分自身)に転換させることが重要です。
自分自身の個人レベルの感情に落とし込むためには、
EQコンピテンシーの発揮が重要となります。
(つまりEQコンピテンシーを使って自分自身の感情を適切に保つことで、
関係レベル、組織レベルでの感情がよく理解できるようになり、
またその感情を上手に管理できることになるのです。)
激動する現在のビジネス環境では、ほとんどのチームがより少ない人員体制で
より多くの仕事をこなさなくてはなりません。
組織に残った人々は適応しようと四苦八苦し、
頻繁に「旅立ちの時=離職のタイミング」を探しています。
そのような人々を巻き込み、彼らを次の四半期は
よりよい状況を実現しようというポジティブな気持ちにさせるには、
どのようなリーダーシップの魔法を使えばよいでしょうか。
それは、個人の感情が本人の業績に影響するのと同じように、
組織風土や組織の感情が業績に結びつく集団行動に影響を与えることに、
気づかせることが重要です。
組織風土と業績
Six Secondsは、個人のEQが測定できるだけではなく、
個人のコンピテンシーがどのように一連の感情や反応と組み合わさって
組織風土を形成しているのかも測定することができます。
「風土」という言葉を使うとき、天気予報をイメージしてみてください。
「文化」とは、人々にどう振る舞うべきかを教える一連のルールですが
「風土」とは、人々がそれについてどう感じるかで形成されます。
私たちが実施した組織風土のリサーチでは、
「感情と業績の間には強い相関」が見られました。
顧客サービス、生産性、離職と組織風土の関係を調査した最新の研究で、
高業績と低業績の差異の57.7%は5つの風土要因と信頼感情(風土の一つの側面で、
5つの要因が基になっている)で予測されます。
言い換えると、風土は財務戦略を成功に導く先行指標となりうるということです。
この研究は395人の反応を調査が行われました。
対象者は20~60代、新入社員からCEOまで含まれ、
業種は教育、産業、政府、サービスといったものです。
半数以上がアメリカ人で、残りはヨーロッパ、カナダ、アジア、
南米、アフリカの人々でした。
人々が組織風土や仕事の業績にどのような影響を及ぼすかを調査するために、
デモグラフィック(属性)を徹底的に精査したところ、
デモグラフィック(属性)による非対称性はわずかだとわかりました。
風土はこうした境界線をすべて超越していたのです。
調査では職場の風土だけでなく、
三つの重要なビジネス要因についても質問を加えました。
・顧客サービス - 顧客が非常に大切にされている認識
・生産性 - 適切な仕事が効率的に行われている認識
・離職 - 少なくとも18ヶ月間、その組織に留まり仕事を続けようとする意思
シックスセカンズ・コンサルティング・グループのシニア研究員の
カリーナ・フィデルディー・バンダイク博士は、「重回帰分析」を用いて、
風土のどの要素が各領域の業績を予測するかを調べました。
たとえば、顧客サービスでは、高スコアと低スコアの差異の47%が
アカウンタビリティ、コラボレーション、連帯感という風土要因で予測されました。
そして領域ごとに異なる要因が作用していました。
たとえば離職の43.4%はリーダーシップ、連帯感、
コラボレーションによって予測されました。
結論として、従業員は良い気持ちで職場に来たほうが仕事ぶりは良くなります。
反対に、上の空だったり、不満や失望を抱えたり、
不機嫌のまま職場にやってきたとすると、職務遂行のエネルギーが低下し、
品質が落ち、コミュニケーション不全に陥り、
そしてまず優秀な人材たちから離職を考え始めるようになるというものです。
こうしたやる気の喪失は、直接的で財務的な損失ばかりでなく、
長期的な観点からブランドの低下という点で
企業にとっては高くつくことになってしまいます。
また、品質低下を招き、顧客との関係も損なわれる、ということもわかりました。
しかし幸いなことに、この重要である組織の生存能力を
改善し維持するための方法が、創造的でしかも低コストで
存在していることもわかったのです。
この発見を説明するために、架空の二人の従業員が仕事に向かうシーンから見てい
くことにしましょう。
次回…「業績を出す風土 その2」
“At the Heart of Leadership”
Joshua Freedman forward by Peter Slovey より
訳者:田辺 康広