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EQとリーダーシップ:業績を出す風土 その2 -前編-

by : Six Seconds  | 

2012年6月22日 | 

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前回「業績を出す風土 その1」では、

感情の発生は、個人レベルだけでなく
対人における「関係性のレベル」や「組織レベル」でも発生していること
なかでも、組織感情は組織風土の形成に深くかかわっていて、
組織風土が業績と深く結びついていることを
リサーチから発見したことをお伝えしました。

「 組織感情 → 組織風土 → 業績 」

このベクトルの始まりとなる組織感情を形成するのは
職場に向かう従業員の気持ちであり
従業員の感情がポジティブか、ネガティブかによって
顧客満足度、生産性、離職などが決定づけられてしまうことをお伝えしました。

今回の「 業績を出す風土 その2 」では

二人の従業員、カールとジョアンの感情からストーリーを始めるとしましょう。

カールはいつも最高の仕事をしようと思っています。
彼は毎日ワクワクしながら仕事に取り組んでいます。
彼がいつも前向きでいられる理由のひとつには、
彼自身が「ポジティブな人物」であることもいえますが
違う理由もありました。

それは、彼がいつも、“自分の所属するチームは素晴らしいチームである”という
感覚を常日頃から持っているということでした。

彼の上司は、メンバーの話によく耳を傾けてくれているし、
メンバーのやっている仕事は重要であると感じていました。
そしてチームには協調的なムードがあふれていました。

一方、別の組織に属するジョアンは、経験豊富で有能な人物ですが、
身を粉にして働くことを恐れていました。
それは、彼女が所属するチームに対して“何か不正なことを平然とやる雰囲気”を
感じていて心が落ちつかない状態にあったからです。

彼女は上司に対して、自分に配慮などまったく無いと感じていました。
また、チームメンバーに対してもどこか連帯感を感じられませんでした。

あなたから見て、二人の働きぶりはどう感じましすか。
彼らはどんな風に他の人と協働しようとしていたでしょうか。
カールとジョアンが、上司やチームに対して生産的で
一生懸命であろうとするためには何が必要だと思いますか。

ネガティブでワンパターンの態度を取り続けるジョアンに対して
「大事なことをしっかりやるか、さもなければ職場を去るかを決める時だ」と
厳しいメッセージを持って迫るというのも一つの手かもしれません。
(伝統的な手法ですが)しかし、これではジョアンのコミットメントを
得られないことは、みなさんもおわかりでしょう。

アラン・デュッチマンは著書『Change or Die』の中で、
強制、事実、恐怖が行動変容をもたらすことは決してないと主張しています。
むしろ、行動変容は人間関係とともに始まるというのです。

シックスセカンズは多数の国の何百もの組織を対象にある調査を行いました。
調査から、ジョアンのような仕事ぶりの人に大きな変化や改善をもたらす
ある特定のドライバーがあることを発見しました。

また、カールのような高いエネルギーレベルやコミットメントを
維持する人にみられるドライバーも発見できたのです。(注3)

ここで、先にポジティブな行動変容をもたらすドライバーを
効果的に推進するヒントをお伝えしておきましょう。

これは、すべからくリーダーに求められます。

それは、『戦略的に健全でポジティブな風土づくり』をすることを
最優先課題であると理解し、その実現をコミットすることです。
ビジネスが好調なときは、「ヒューマンサイド」は注目される分野ではありません。
優れたリーダーたちは、風土など最優先課題などではないと考えるかもしれません。
しかし、リーダーが課題とすべきものの一つであることは間違いないはずです。

偉大なリーダーは、非常に優れた業績を生み出す「箱・コンテナ」を
自らの手で作れるのです。

 

■「リーダーは、なぜ状況をつかめないのか」

リーダーは多くの場合チームから孤立しがちです。

彼らはもはや二、三階層下の人々とは緊密な関係を築けない状態となります。
二つの多国籍企業を対象とした研究調査では、
経営幹部とそれ以外の人々の組織に対する想いには著しいギャップがありました。
このギャップこそが、不信感や組織の機能不全を生んでしまうのです。

そしてより素晴らしいサービスを提供できるはずの組織能力に
影響を及ぼしてしまうのです。
問題そのものが何であれ、こうしたギャップは組織の警告サインなのです。

先の研究調査の際、従業員からは自分たちのトップについては
何も知らないと語られることが多くありました。
一報、リーダーたちからは第一線(現場)から
切り離されている感じがすると語られました。
こうした孤立した距離感が生じるところには常に信頼や業績の低下が
つきまといます。

このような組織の場合、トップに立つ経営幹部が、
誰よりもリアルな現場の話を聴きたいときに、
「フィルターにかけられた」情報しか得られないことが
頻繁に起こってしまうのです。

リーダーたちは、マネジメントの各層でフィルターに
かけられ偏った見解や情報ではなく「人々の生の声」を聞く必要があります。

それも、日常的に聴く必要があるのです。
メーカーが品質について市場に確認をする行為は一年に一度だけでしょうか。
販売会社が顧客が使う商品を確認するのは二年に一度だけでしょうか。
そうではないはずです。

私たちは顧客や市場の生の声やデータを用いて戦略を練り、組織を動かしています。
顧客や市場の動向を参考とするように、組織内のメンバーの行動や
思考習慣をあらわす組織風土を、
組織の健康を評価する一つのメーターとすべきなのです。

次号に続く

“At the Heart of Leadership”
Joshua Freedman forward by Peter Slovey より
訳者:田辺 康広