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EQと組織パフォーマンス:リーダーが知っておきたい人間心理と感情問題

by : 6SJ 組織活性化研究センター フェロー 山本 憲幸  | 

2017年12月15日 | 

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Six Seconds Japan 組織活性化研究センターのフェローを務めております株式会社ビヘイビアチェンジパートナーズ 代表取締役 山本憲幸です。

前回は、チームを活性化する際、リーダーに押さえておいて頂きたい視点として、集団活動の癖について紹介しました。
リーダーは集団全体が持つ特徴やチーム状況を素早く診断し、適切な手を打つ必要があります。チーム状況を診断するための視点を数多く持つことは変革仮説を立てる上で、非常に役立ちます。

突然ですが、皆様は、会議を見ただけで『好業績チーム』か『低業績チーム』なのか分かりますか。

心理学者のロサダ氏はビジネスチーム、医療チーム、スポーツチームなど膨大なチームを対象とした調査(2004年)を行いました。
会議で発する言葉が肯定的(いいですね。面白そうですね)なのか否定的(無理じゃないですか。上手く行かないよ)なのか。
発言が探求的(それどういう事ですか。具体的に教えて下さい)なのか主張的(〇〇はこういうことだ。〇〇すべきだ)。
話題が外向き(市場、顧客、競合のこと)なのか、内向き(所属する組織内部や職場のこと)なのかが、
チームの業績と相関関係があり、好業績チームと低業績チームに顕著な違いがあることをデータで示しました。

さて今回は、前回同様に、リーダーに押さえておいて頂きたい視点として『集団構成員の個々人の心理と感情問題』に焦点をあてて紹介していきます。皆様のチームにおける会議は、好業績チームに近いでしょうか、それとも低業績チームに近いでしょうか。
もし会議において、低業績チームに近い状態であるのなら、皆様が言動を意図的に変化させることで、チームを「好業績チームに近い状態に変化」させていく有効な手段の一つとなります。

全米心理学協会の会長も務めたシュッツ氏は、対人関係において誰もが抱く基本的な感情が3つあると提唱しました。それが、「重要感」「有能感」「好感」です。この3つの感情は誰しもが持っていますが、状況や活動、場面によって、高くなったり低くなったりします。

「重要感」とは、他者との関係の中で、重要で掛け替えのない存在とであるという実感です。
皆様は、メンバーの重要感を高める関わりができていますか。メンバーの重要感を高める関わり方は数多くあります。

例えば
「挨拶をする」
「一声かける」
「会議に参加するように誘う」
「会議に参加できなかった際に議事録を渡したり、内容を共有したりする」
「労う」
「感謝を示す」
などです。重要感を高めると、メンバーのチーム活動に対する参画度を上げることができます。

「有能感」とは、能力があり、問題を解決できたり困難を克服できたりする存在であるという実感です。重要感と同様に、周囲からの働きかけで高めることができます。

例えば
「意思決定を任す」
「メンバーに決めさせる」
「仕事を任す」
「会議で意見を促す」
「アイデアを取り入れる」
「貴方ならできると信頼を示す」
などです。有能感を高めると、メンバー一人ひとりのリーダーシップを発揮させ、主体的で挑戦的な取り組み姿勢を促進します。

「好感」とは、他者に受け入れられている存在であるという実感です。

「周囲が隠し事なく、本音で接している」
と感じた時に、メンバーの好感は高まっていきます。どのような発信をしても,メンバーは受け止めてくれると感じ、本音の発信行動が取りやすくなり、オープンなコミュニケーションを促進します。

皆様のチームメンバーの心理状態は以下のどれでしょうか。

1. 「自分はチームにとって、重要で大切な存在と扱われ、能力を信頼されていて、好かれている」
2. 「自分はチームにとって、居ても居なくてもよい存在と扱われ、能力を信頼されていなく、受け入れられていない
3. 「自分はチームで無視され、無能と決めつけられ、陰で馬鹿にされ、嫌われている」

生産性の高いチームは、どの心理状態のメンバーで構成されているかは一目瞭然ですよね。
私は以前、project adventureという体験型のトレーニングを受けた時に「Full Value Contract」という概念について触れ、非常に感銘を受けました。
自他含め、全てのチーム構成員の意見や思考、感情を大切にし、互いの存在価値を最大限に尊重する。そして、互いの存在価値を損ねないような言動を取ること全員が約束し、実践し続けるという考え方です。
もしこのような考え方がチーム全員と共有でき、実践できたとしたら、一体どのようなチームとなるのでしょうか。
皆様のチームはこのような考え方で運営されていますか。もし、皆様が、自チームで実現したいのであれば、まず、チームリーダーである皆様の言動を変えることから始めてみてはいかがでしょうか。

「チームの活性化」について第1回から番外編まで含め8回発信してきました。皆様のチーム活性化に役立って頂けていますでしょうか。

今回でチーム活性化について私からのコミュニティマガジンの連載は一旦終了致しますが、また、機会ございましたら、チーム活性化の視点から発信していければと思っております。

シックスセカンズジャパン
組織活性化研究センター フェロー
山本 憲幸