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スポーツ選手のEQとライフサクセス

by : 6SJ 須澤 知史  | 

2018年3月1日 | 

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先日盛大に幕を閉じた平昌オリンピック。
私も多くの選手の活躍を連日テレビで観戦していました。
メダルを取れた選手も取れなかった選手も、コーチやサポートスタッフも
皆が一丸となって全力を尽くした本当に素晴らしい姿を見せてくれましたね。

特に私の地元でもある長野県出身のスピードスケート小平奈緒選手が出場した各種目では
ついついいつもより応援に熱が入ってしまいました。
小平選手はスケートのタイムももちろん素晴らしいものでしたが
レース以外の場所での振る舞いにおいても感動を与えてくれましたね。

そして500mで優勝を決めたレースから一夜明けての会見で
「早く金メダルに触れたいですか?」という記者からの問いに対して
「金メダルは私が戦ってきた証であり、皆さんに支えていただいた証でもある」
と念願の金メダルについての想いを語りながらも

「メダルという物よりも、2つのメダルを通してどんな人生を生きていくかが大事だと思う」

というコメントを返したことがとても印象に残りました。
スポーツ選手であればだれもが描くのと同じように
小平選手にとって「金メダル」というのは夢でもあり今大会の目標でもあったのですが
「人生」という長いスパンでみれば一つの通過点であり
その後の「生き方」にこの経験を活かしたり還元していくことこそが
小平選手にとっての究極の目標であるということが会見から感じ取れました。

シックスセカンズが掲げる8つのEQコンピテンシーには

ノーブルゴールの追求: 日々の選択を、自己の強く大きな目的と結びつけること

というものがあります。

小平選手が伝えようとしていた「究極の目標」はまさにこのノーブルゴールにあたります。
今回の小平選手のエピソードは
自分の「生き方」までも見据えそれを追求していくことが感情のエネルギーを生み出し
パフォーマンスの面も、人間性の面もその人を成長させてくれるということを
改めて感じさせてくれる出来事でした。

私も長年スポーツに携わり、選手としても指導者としても多くの経験をさせてもらいました。
私が専門的に行ってきたサッカーの世界では
「サッカーは少年を大人にし、大人を紳士にする」
という「日本サッカーの父」と言われるデッドマール・クラマー氏の有名な言葉があります。
私も子供のころからよくコーチに聞かされていた言葉でした。

スポーツで鍛錬を重ねることは人間性を育むことにつながるということです。
しかし、様々な現場で私自身が目にしたことや、聞き取りをしてみると
スポーツで華やかな結果を残した選手と、日常や社会の中でも健全な生活を送る選手は
必ずしも一致しないというものでした。
では、キーとなるものは何でしょうか。
「スポーツ」を日常にも活かすことができる「生き方」を育む場
とするためにはどんな要素が必要なのでしょうか。

シックスセカンズ米国本部が実施したEQ(またはEI)とスポーツ選手の研究では
EQが引退後の社会生活(ライフサクセススコア)に影響を与えることが明らかになりました。

(EMOTIONAL INTELLIGENCE FOR ATHLETES’ LIFE SUCCESS
2008. Joshua Freedman, Marvin Smith)

 

また、「暴力」「アルコール」「ドラッグ」などの反社会的な行動についてや
「良好な人間関係の構築」や「QOL」についてもEQスコアから予測できることが示されました。

スポーツを通じて競技に必要な技術や体力に加えEQも育んでいくことが
日常生活やその後の人生においても自分らしく生きていくことの手助けとなることが
この調査からもわかるのではないでしょうか。

弊社代表田辺が以前「名監督に見るEQ育成術」にも書いたように、
スポーツの名監督、名コーチと言われる方々は、
「気持ちの整え方や自分らしく生きる、自分らしさを活かす」ことも
スポーツを通じて教えています。まさにEQ育成のプロと言えます。
このEQ育成のプロがスポーツの世界にもっともっと増えていくことを願っています。

国際オリンピック委員会(IOC)は「オリンピックレガシー」というものを掲げています。
その中には新たな施設や仕組みといった物理的なものに加えて
オリンピックを通して育まれた人間性や社会性も
遺産として残していくことを目指しています。
我々も、2020年の東京オリンピックに向けて、
スポーツの世界にも更にEQを広めていくことで
より多くの人々に人間性や社会性の遺産を残していくことができると信じています。

シックスセカンズジャパン
須澤 知史