EQと組織パフォーマンス:チーム診断を用いた介入 3 ~フィードバック編~
by : 6SJ 組織活性化研究センター フェロー 山本 憲幸 |
2017年11月15日 |
Six Seconds Japan 組織活性化研究センターのフェローを務めております株式会社ビヘイビアチェンジパートナーズ 代表取締役 山本憲幸です。
第3回では「診断の効果性」、第4回のメルマガでは「効果的でないチーム診断の特徴及びTVS診断」について紹介してきました。皆様は、チーム診断を実施してみようと思いましたか。あるいは、診断を既に実施し始めていますか。
今回は、チーム診断実施後に、診断を有効活用し、活性化に結びつけるためのフィードバックについて記していきます。
効果的なチーム診断を実施したにも関わらず、活性化に全く結びついていないチームを散見します。
一体何故なのでしょうか。
私の経験から、診断結果を活性化に結びつけられないチームは、以下の4つのパターンのどれかに該当していました。
リーダーのみが診断結果を知り、メンバーにフィードバックせず、放置するパターンです。
特に診断結果が良くないチームのリーダーが自身のマネジメントを否定された気持ちとなり、情報を開示しないことがあります。
メンバーに対し「あの診断結果はどうなったのか」「あの人事異動は診断結果に基づいているのではないか」「本音を言うと危ない」などの疑心暗鬼を生じさせ、リーダーへの不信感を高め、不活性な状態を更に加速させます。
2. 【無視パターン】
改善の方向性も示さず、診断前と何も変わらないチーム運営を続けるパターンです。
診断結果はメンバーにフィードバックされますが、結果の解説や改善の方向を示すこともなく、酷い場合には、リーダーに都合の良い部分のみを切り出したデータのみを開示します。
このようなリーダーの態度は『診断結果とチームの生産性は全く関係ないから無視するように』とのメッセージをメンバーに送ることになります。診断実施によって高まったメンバーの変革に対する期待と意欲は低くなり、今までと同じ行動を取り続けることを強要させ、チーム問題は更に悪化していきます。
3. 【責任転嫁パターン】
診断結果はフィードバックしますが、メンバーにのみ改善策を考え提案するように指示するパターンです。
解決策のアイデア出しに参画させており、一見メンバーに信頼を示しているように見えますが、殆どの場合、メンバーからの提案に、リーダーの言動改善案は盛り込まれず(もし盛り込まれているなら、既に活性化しているチームのコミュニケーション基盤ができています)、メンバーのみができる表層的で小手先の改善策の提案と実施を行いがちです。リーダーの参画がないため、チーム風土の抜本的な改革は実現できません。
4. 【責任背負い込みパターン】
診断結果をフィードバックし、且つリーダーが自身の反省と行動改善だけを示すパターンです。
リーダーが当事者意識を持って、改善しようとする姿勢はメンバーに示すことはできますが、問題の所有権をリーダーだけが抱えることになります。診断結果は、リーダーに対する多面評価のような扱いとなり、チームの問題をメンバー全員の問題として捉える機会を奪います。メンバーがチーム変革に参画できないため、チーム変革に対する一体感や問題に対する当事者意識が醸成しきれません。
上述した4つの典型的なパターンに陥らず、チーム診断を活性化に結びつけるために、診断フィードバックの際、以下の点を踏まえて実施してみると良いでしょう。
診断結果は事実そのものではなく、チーム運営に対する認知事実です。診断結果によっては「私は、そのような行動はしていない」と反論したくなるかもしれませんが、『メンバーはそのように認知している』と考え、短絡的に良し悪しの価値判断をせず、一旦、結果を受け止めることが活性化の第一歩となります。このような診断結果を受容する態度は、リーダーだけでなく、メンバー全員にも必要です。
診断結果が想定以上に望ましくない場合、『ショックを受け、他責をし、言い訳をし、合理化し、受容する』過程を経ますので、心理的葛藤を解消する時間も必要となります。診断結果のショック度に応じ、フィードバック後、直ぐに改善策を考えるのではなく、時間をおく意味で、日を改めることも場合により必要となります。
2. 【メンバーを巻き込みチームの変革目標を設定する】
変革をリーダーだけの課題にせず、リーダー含め、チーム全員の課題として設定する過程が必要です。メンバーの変革に対するモチベーションを高めるためにも、メンバーも意味や意義を感じることができるチームの変革目標を設定しましょう。
また、チームの変革目標を達成するためのメンバー個々の目標も明確にした方が変革を促進させやすくなります。
3. 【変革目標達成のための具体的な取り決めを行う】
集団活動において明確な役割や責任が伴わない場合「誰かがやるだろう」と他者に依存してしまう社会的手抜きが発生してしまうため、目標やスローガンの設定だけでは、具体的な行動改善にはつながらず、誰も本気で取り組みません。目標達成のためのチーム内での約束事、取り組み課題、各人の取り組み、スモールゴールまでの期間について話し合いを通じ、具体的に決めましょう。
チーム診断は、あくまで活性化のための手段です。手段が目的化してしまい、診断を実施するだけで変革が終わったかのごとく、安心して何も取り組まない組織が意外に多くあります。診断は変革において、あくまでも出発点に過ぎないことを念頭に、活性化のための活動を継続的に行いましょう。
変革のスタートが切れたとしても、実感できる成果がすぐに出る訳ではありません。
そのため、変革に取り組み始めてしばらくすると、
「こんなやり方で成果が出るのか」
「違うことに取り組むべきではないか」
「前の方が良かったのではないか」
などと、変革に対する抵抗を示し始めます。
変革の方向性が間違っていないということを示すためにも、早い段階で成果や活動過程におけるメンバーのトピックとなる言動などをフィードバックし、目標に向かって確実に前進していることをメンバー全員に知らせましょう。
組織行動科学者で、組織学習の大家であるクリス・アージリス氏は、「問題が解決していないとしたならば、貴方自身が問題かも知れない」と述べています。チーム全員が、このようなマインドになるように、診断を活用し、チーム変革に取り組み始めてはいかがでしょうか。
次回は、チーム変革を推進していく中で、リーダーが知っておいたら良い、集団が活動する際に発生する様々な「集団の癖」について紹介していきます。
Six Seconds Japan 組織活性化研究センター フェロー
山本 憲幸