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講師の想いを届ける 第3弾:UEQ講師 齋藤千鶴さん

by : 株式会社せかいのはじまり|齋藤 千鶴  | 

2026年4月2日 | 

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講師の想いを届ける企画、第3弾の記事は基礎講座Unlocking EQ(UEQ)講師・齋藤千鶴さんが、自身の体験からEQとの関わりを振り返ったストーリーです。

コーチングにEQが加わって起きた変化

「殴った右手が痛いんです」

かつてのクライアントが、ぽつりと漏らした言葉です。実際に手を上げたわけではない。でも、つい強い言葉で部下に当たってしまう。そのたびに後悔と自己嫌悪に襲われ、「もうやめたいのに、また同じことを繰り返す」と悩んでいました。仕事ができて、周囲から期待されていたその人は、ずっと一人で抱えていたのだと思います。私はその一言を聞いて、言葉にならない苦しさを感じました。そして今でも、その感覚を昨日のことのように覚えています。

当時の私は、学んだコーチングのスキルを使い、クライアントと向き合っていました。セッションの中では確かな変化も起こりました。けれど終了後、私の中に小さく残り続けたものがありました。「もっとできたことがあったのではないか」という、言葉になりきらない重たさです。

感情はどこから来るのか。なぜ人は、自分が望まない言動を選んでしまうのか。どうすれば、責めることなく、抑えることなく、感情と向き合えるのか。答えの見えない問いが、そのときからずっと心に残りました。

転機は、友人のEQ勉強会に参加したことでした。そこで出会ったSix Secondsの考え方は、私にとって新しい世界でした。感情を「厄介なもの」でも「弱さ」でもなく、“メッセージ”として読み解く。感情には理由があり、意味があり、そして選び直す余地がある。そう捉えられた瞬間、あのクライアントの苦しさが、別の角度から見え始めたのです。私はSix Secondsの基礎コースにあたるUEQ(Unlocking EQ)に申し込みました。直感的に「きっとクライアントの役に立つ」と感じたからです。

そこからは「もっと知りたい」という好奇心に背中を押され、認定コースのEQPCEQACCEQFへと進みました。当時の心境を言葉にするなら、「面白くてたまらない!」。EQの学びの中に、コーチングの理解を深め、関わりをより繊細にするヒントが詰まっているように感じたからです。そして学びを重ねるほど、「きっと役に立つ」は少しずつ確信に変わっていきました。

EQを学んで、私のコーチングで変わった点を二つお話しします。

一つ目は、「感情の扱い方」です。
クライアントが怒りを語るとき、私たちはつい「怒り」という“目立つ感情”に意識を奪われがちです。
クライアントが「行動を変えたい」とテーマを語る場面でも、コーチは「どうすれば怒らなくなるか」「どう行動を変えるか」といった方向に意識が向きやすく、怒りを悪いものとして捉え、その対策に焦点を当てがちです。コーチとして役に立ちたいという思いが強いほど、その傾向は強まります。

しかし、EQの視点に立つと、私たちが扱うべきものは怒りそのものではありません。
感情が内側から伝えている“メッセージ”です。

私は、怒りをすぐに「問題」として処理するのではなく、いったん立ち止まり、その奥にある感情の声に耳を澄ませるようになりました。

いま、この感情は何を知らせているのか。
何を守ろうとしているのか。
何が大切にされていないと感じているのか。

メッセージを丁寧にたどると、感情はひとつではなく、幾重にも重なり合っていることが見えてきます。例えば、納期に間に合うか不安で仕方がないときに、同僚のミスで「このままだと間に合わないかもしれない」という状況が起きると、その不安が“怒り”として表に出ることがあります。見えているのは怒りでも、奥には「間に合わせたい」「失敗したくない」という切実な不安がある。さらに本人が自覚していなくても、達成したいという期待、仲間への信頼、ミスへの嫌悪、責任の重さ、焦りなどが同時に重なっています。どれも、その人が大事にしているものとつながっています。

それぞれの感情は、「何を大切にしたいのか」「何を守りたいのか」を教えてくれます。
だからこそ、
「この感情はどんなメッセージを伝えているのか」
「なぜ今、この感情が起きているのか」
を丁寧にたどっていくと、クライアントのテーマが少しずつ輪郭を持って見えてきます。

クライアントが感じている感情は、複雑に重なり合っています。怒りの裏に、悲しみ、怖さ、失望、疲れ、孤独などの感情があったり、「本当は分かってほしい」という期待の感情が隠れていることもあります。そこを深く探り、拾い上げ、言葉にしていくと、クライアントの表情がふっと変わる瞬間があります。ときどきクライアントは笑うのです。自分でも気づいていなかった感情や癖に触れたとき、張りつめていたものが少し和らぐ——私はその変化に立ち会うたびに、この仕事が好きだなと思うのです。

二つ目は、「感情と、クライアントの目指す姿を結び直すこと」です。

コーチングでは「本当はどうしたい?」という問いをよく使いますが、Six Secondsでは“ノーブルゴール(Noble Goal)”という言葉で、本人が心から目指したい姿を扱います。目指す姿と、今抱いている感情を並べて眺め、「この感情のメッセージは目指す姿につながっているだろうか」「活かせるだろうか」と一緒に確かめます。この確認を挟むだけで、クライアントの中にある「本当は大事にしたいもの」が輪郭を取り戻し、「どの感情を活かせるだろう?」と選択の意思が現れてきます。同時に、これまで無自覚に感情に流され、目指す方向に逆行する行動をとっていたことに気づきが生まれることもよくあります。

感情・思考・行動は複雑に絡み合っています。だからこそ、感情のメッセージを読み取り、望む方向に沿って感情を選び直せるようになると、その人らしい行動が自然と生まれてきます。この瞬間、クライアントの目がキラキラと輝く。それがなんとも嬉しいのです。

私がEQに出会っていちばんよかったのは、「感情は味方になり得る」と確信できたことでした。

あのときのクライアントに、今なら、感情のメッセージに一緒に耳を傾け、味方にして、遊び心も少し持ちながら、その人らしい行動を共に探れそうだと思えます。そう思える自分になれたのは、EQを学んだからです。

もし今、感情をもう少し丁寧に扱ってみたいと思ったら、UEQという入り口から触れてみてください。EQを学ぶコーチ仲間が増えることを心から楽しみにしています。

株式会社せかいのはじまり
齋藤千鶴

 

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