EQ とドラマエデュケーションの未来
by : EQチェンジエージェント|Art-Loving(EQ向上委員会プロジェクト 生きる力を育てる演劇教育) 小山裕嗣 |
2018年9月7日 |
今回の EQ プラクティショナー研修は、実に深い学びの場となった。何故なら、長年探し求め続けてきたドラマエデュケーション(演劇教育)のエビデンスとなり得るのが、まさに EQ理論であると強く感じられたからだ。
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EQプラクティショナー資格認定セミナーを受講し、認定を受けて活動するEQチェンジエージェントより、EQ活動レポートの一部をご紹介します。
豊かな感情表現を身に付けるために、どのように感情を喚起させるのか
私が長年取り組んでいるドラマエデュケーション(演劇教育)の核であり、近代演劇における演技システムのワールドスタンダードとなっている、
「スタニスラフスキ―システム」
による言及が、EQ 理論の提唱者であるピーター・サロベイ博士の著書
「EQ マネージャー/リーダーに必要な 4 つの感情能力」
に記述されていた。以下、著書からの抜粋となる。
気分はどうやったら引き起こせるのだろうか。俳優はこのような事が出来るよう十分に訓練されている。ただし俳優なら誰でもというわけでなく、自分の感情や経験を生かして、演じる役柄になりきろうとする演技手法である「メソッド・アクティング」を体得した俳優の事である。
メソッドアクティングとは、ロシア人演出家であるコンスタンチン・スタニスラフスキーによって開発された演技手法である。(中略)
スタニスラフスキーの理論を簡単に示そう。①リラックスして注意を集中させる
②想像力を高める
③過去に経験した感情の記憶を思い出す
④過去の感情にかかわる記憶とその感情に伴う味やにおいや手触りなどの特定の感覚に関する詳細を結びつける
⑤役柄の必要に応じて感情の再現方法を学ぶ
⑥舞台が現実であるという考えを身に付け、役作りでイメージしたこともまた現実であると信じる『EQ マネージャー/リーダーに必要な 4つの感情能力』
デイビッド・R・カルーソ+ピーター・サロベイ, 2004 年 12 月 30 日発行
以上のようなメソッド・アクティングを私自身、スタニスラフスキー直系の孫弟子から 5年間体系的に学んできた背景がある。
俳優にとっては、豊かな感情表現を身に付けるべく、どのように感情を喚起させるか、五感だけでなく第六感をも含めた演技訓練の基礎的学習が第一学年で行われる。この過程は、俳優を養成される為だけにあるのではなく、欧米欧州各国では、学校における Drama の授業として公的に導入されているのだ。
ドラマエデュケーションのプロセスと、EQコンピテンシーの合致
欧米欧州各国においてドラマエデュケーションは、別の記事で述べた「非認知能力(生きる力)」や「自己肯定感」を育むべく、主体性や協調性をもって共有、共感する力等を習得する為に行われている。また感情を細分化して、状況に応じた人物の行動の目的を思考的に分析、解釈していくプロセスは、EQ8つのコンピテンシーと合致するのだ。
シックスセカンズ流 8 つのコンピテンシーを学習可能にするためには、このメソッド・アクティングが有効なツールとなり得るのではいか、と考えている。また知的プロセスの情報収集、解析、推論、実践、記憶の流れは、スタニスラフスキーシステムにおける本読み、解釈、仮説、実践、記憶の流れとも合致しているのだ。
私が、現在実践しているドラマエデュケーションを学校教育の中で有効活用するべく、私立小学校教員研修会や教員による演劇教育ファシリテーター養成講座等で研究、実践し続けているのだが、現場教員たちがドラマエデュケーションを活用する為に上司を説得するエビデンスがこれまで存在せず、皆一様に四苦八苦していた。しかし今は、EQ 理論を基にした SEIプロファイルや Brain Brief Profile の活用をもって、ドラマエデュケーションによる効果や成長を可視化出来るのではないか、と思っている。また同時に EQ そのものを学校教育の現場へ導入する事も十二分に可能ではないか、と強く感じている次第である。