デジタル世界を生きる子ども達~親として知っておきたい5つの実践的なヒント
by : Six Seconds米国本部 Michael Miller |
2020年5月7日 |
デジタルテクノロジーが
私たちの生活のあらゆる面にますます溶け込んでいく中で
大人になっていく子どもたちが健康的な習慣を育くんでいくために
保護者たちにはどんなことができるでしょう?
米国本部が2020年2月24日に発表した記事「Kids Navigating the Digital World:
5 Practical Tips for Parents」の日本語翻訳です。画像をクリックすると米国本部の原文記事をお読みいただけます。
トルコ・イスタンブールに住むアズラは、小学6年生の最初の登校日の日、家に帰宅するやいなや
「スマートフォンを持っていないのは私だけだった」
と父親のムラトに話しました。ムラトは「まあ、個性があるのは良いことじゃないか」と考えました。「ですが本当に嫌な気分のようだったし、みんなと馴染んでいるかどうかという感覚に繊細な年頃でもあるし、調べてみようと思いました」
アズラの友人の親御さんたちにも電話をして話してみましたが、驚くことに、アズラのクラスメートのほとんどが本当にスマートフォンを持っていることがわかりました。実際、クラスには専用のWhatsApp(LINEのようなチャットアプリ)のグループも既にあり、スマートフォンがないためにアズラだけがそのグループには入れていませんでした。
ムラトは妻と話し合おうとテーブルに着きました。もともと15歳になるまでは娘にスマートフォンを持たせない、と夫婦で決めていました。でもそれまでまだ数年あります。「デジタルテクノロジーを依存的に使用することによる若者の心身の健康問題について心配していました。スマートフォンを使うよりは、読書をしたり子どもらしく遊んだりしてほしいと望んでたのです」
しかし今回アズラの悲痛なお願いに、改めて親として考えてみることにしました。「アズラは明らかにクラスのコミュニケーションの中から外れていました。妻と私はその晩、スマートフォンを持つ/持たないことについての良い面と悪い面を話し合いました。私たちの出した結論は、スマートフォンを持たないことによって、娘はまた別の意味で傷つくことになる、ということでした。話し合いはそう込み入らず、私たちは翌日、iPhoneを購入することにしました」
1週間後、アズラは再び泣きながら帰ってきました。今度はスマートフォンがないから、ではなく、スマートフォンがあるがためにできるようになったことのせい、でした。アズラはクラスの男の子とWhatsAppの中でのやりとりに巻き込まれ、学校の校長に言いつけてやる!と脅されたのだそう。
Six SecondsのEQを学び、EQを活用したコンサルティングなどを行うPreferred Partner*であるムラトにとって、この出来事はまるで始まりの鐘のように大きく頭に響きました。
「私たちがアズラに渡すべきだったのはスマートフォンそのものよりも、デジタル世界を生きていくために必要な知識、スキル、態度だったのだと気付いたのです」
データによれば、それは彼女のケースに限ったことではありません。このパワフルな新しいテクノロジーの取り扱いに対して完全に準備ができている若者の方が少ないのです。
*Preferred Partnerとは、Six SecondsのツールやEQモデルについて深い見識を持つ企業のことです。Six Seconds EQモデルを熟知し、長期的な価値を創出する組織変革をもたらします。エビデンスに基づいた実践的な方法を用いコンサルティングとトレーニングを提供し、お客様に並外れた価値を提供するSix Seconds米国本部のパートナー企業です
スクリーンタイムと心の健康には相関関係がある
現在調査が進んでいる研究では、スマートフォンの過剰な使用が様々な問題を来たす可能性があることを示唆しており、特に10代の心の健康に悲惨な結果をもたらしています。ソーシャルメディア(SNS)の過剰な使用は、不安・うつ・社会的孤立の増加と相関しています。米国の予防医学の月刊誌 The American Journal of Preventive Medicineに掲載された研究によると、SNS使用量の多い上位25%の人は、社会的に孤立していると自己申告する傾向がそれ以外の人と比べ3倍以上でした。皮肉ではありますが、SNSで手軽に人と繋がり合えることが、社会的な孤立と相関しているわけです。また別の研究では、思春期の不安やうつ症状の重症度と、スクリーンタイム(スマートフォンの使用時間)の間にも相関があることを発見しました。そして興味深いことに、スマートフォンを使用している若者たち自身も、何が起こっているのかを知らないわけではないのです。 彼らは使いながら、テクノロジーを使用し過ぎることに問題があることを自覚しているのです。
問題は認識しているけれど、状況を変えるのは不安
米国ワシントンD.C.に拠点を置くシンクタンクであるヒュー・リサーチセンターの調査では、10代の若者の実に90%が、自分と同じ年代の若者がオンラインで過ごしている時間の長さについて「問題である」と認識しており、そのうち60%はそれを「とても問題である」と回答しました。また、54%はスマートフォンに時間を使い過ぎていると認識しており、そのうち41%は特にSNSに時間をかけすぎていると認識しています。
にもかかわらず、彼らの多くは、スマホなどのデジタルテクノロジーの使用時間を減らすのは難しいと感じています。ただそれに反して、彼らを守る防御策は行き詰っています。10代の脳の神経生物学的・ホルモン的な傾向として、人に合わせたい、好かれたい、尊敬されたいという欲求が強まります。特にSNSは、「いいねが欲しい/シェアされたい」といった脳の社会的報酬中枢、すなわち、社会的な注目を集めたいという欲求を活性化させるように設計されています。ユーザーの習慣化を狙ったテクノロジー企業の戦略は、10代の若者たちが持つ脳科学的な弱みと完全に一致しているのです。
だからこそ保護者は、このデジタルテクノロジーで飽和した世界で生きていくために必要なスキルと姿勢を、子どもたちに伝える必要があります。その方法について、心理療法士であり、子育てコーチであり、親子のためのデジタルウェルネスの専門家でもあるテオドラ・パブコビッチ氏にお話を伺いました。
彼女が示した5つのヒントをご紹介しましょう。
デジタル世界を生きる子どもを持つ親のための、5つのヒント
[ 1 ]
テクノロジーに対する健康的な習慣を作りましょう
「テクノロジーを使う時間は食べ物のようなものです」とパブコビッチ氏は言います。「全ての食べ物が公平に作られているわけではありません。タンパク質や砂糖だけに偏った食生活では、子どもたちが健康的に成長できないことと同じです。意図的に使い方を加減することが重要なのです」と彼女は言います。
また、量だけではありません。子どもたちが幼いうちにテクノロジーをどのように使うかを考えることも重要だと言います。おやつやご褒美の様に使っても良い時間を与えたり、使い過ぎたときに罰を与えたりしていませんか?子どもの脳は非常に素早く繋がりを形成し、早い時期に設定したルールが定着してしまい、それを変えることが難しくなってしまいます。「結局のところ、テクノロジーは道具なのですから、その有用性と潜在的な欠点を教えてあげたいものです。」
[ 2 ]
自分の価値観に基づいて使用範囲を設定しましょう
スクリーンタイムやテクノロジータイムはどのくらい許されるべきなのでしょう?パブコビッチ氏によると、すべての保護者が、安全で許容できる使用のルールを決め、それに基づいて時間や場面、使うアプリなど、使用範囲を設定する必要があります。
「重要なのは、親が自分で情報を得ていること、そしてそのルールを決めた理由をきちんと子どもに伝えることです」
これまで様々な親子を見てきた中でわかったのは、自信を持って自分の意見や価値観について子どもたちと会話をし、子どもたちと一緒にテクノロジーの使用について考え話をしている保護者ほど、子どもたちが使用制限のルールに直面し時折表現する怒りや抗議に対して、寛大に許容し、対応できているということです。
彼女はまた、皮肉にも、シリコンバレー在住でシリコンバレーで働く両親の方が、テクノロジーに対して非常に厳しい制限を設けているということにも言及しました。おそらく彼らは誰よりもテクノロジーを内側から理解し、誰よりもその影響や潜在的なリスクをより深く認識しているからでしょう。
繰り返しますが、大切なのは、親が情報を得て、自分の価値観に基づいてルールを決め、その理由を子どもたちへ伝えることです。
[ 3 ]
コンテンツの裏側にあるお金の仕組みについて伝えましょう
デジタルコンテンツを使用するのに大切な心得の半分は、この仕組みを知ることでしょう。子どもたちに、自分がコンテンツを見ている時間やコンテンツへ向けている意識、デバイスの中に入っている個人情報へのアクセスが収益化されている、という仕組みをきちんと教えます。心得のもう半分は、どんなコンテンツを選ぶのかは、子どもたち自身が決められるのだ、ということです。
「子どもたちは生まれながらにして善と悪の非常に公正な感覚を持っていて、騙されるのが本当に嫌いです。そして特に中学生ともなると、良質なコンテンツか、ユーザーを騙しているコンテンツなのかを嗅ぎ分けるのが信じられないほど上手なのです!」
そこで彼女が提案するのは、まずデジタルコンテンツのデザインや販売方法について子どもたちに疑問を投げかけてみること。「これはどうしてこういったデザインなんだろう?」「これはどうやって収益化しているのだろう?」と一緒に考えてみます。そして、冷静になって、どんな選択が本来自分が求めている結果に沿うのか、子どもたちに聞いてみることです。
例えばYouTubeは、たくさんの人に動画を見て時間を消費してもらい、できるだけ多くの時間をYouTubeというプラットフォーム上で過ごしてもらうことを必要としています。そのため、その視聴者が見たくなりそうな動画をアルゴリズムに予測させ次々と表示させて誘導しています。
定額動画サイトのNetflixも同様の方法で運営されていますね。同社のCEOであるリード・ヘイスティングス氏は、「どうしても見たい番組や映画があると、つい夜遅くまで見てしまうので、実際には弊社は睡眠と競合しています」と述べています。
デジタルの世界には膨大な数のアプリやプラットフォームが存在し、そのすべてが、私たちが利用しそのコンテンツを消費することを望んでいる、ということを決して忘れてはいけません。
「デジタル経済の基本的な枠組みを子供たちに理解させるのに、早すぎるということは決してありません」
[ 4 ]
子どもに付き添ってあげましょう
空港やショッピングモールなど見知らぬ人に囲まれた場所で子どもを一人にしないのと同じように、デジタルの中でも一人にさせない方が好ましいです。デジタルの世界を旅する時においても、私たち親は子どもたちにとって安心できる存在である必要があります。
しかし、それだけでは十分ではありません。「監視・監督するためだけに付き添っているというのではなく、必要に応じて危険から守ってあげるためにそこにいるのだ、ということを子どもが知る必要があります」。
単に子どものネット上での行動を監視するだけなら簡単です。ですが必要なのは、子どもたちがテクノロジーを使う習慣や、テクノロジーを使うことで生まれる思考や感情の全体像を、自分自身で理解できるようにすることをサポートすることです。
子どもたちがデジタルの世界を探求するときには、子どもたちをしっかり導いてあげましょう。子どもたちが自分から積極的に話したがらない、ということもあるでしょう。(特に10代になってくるとよくあります・・)子どもたちが自分から話したがらなければ、まず私たちが十分に情報を得る。そのアプリを使ってみるのも良いでしょう。
例えば、Instagramを使っていると、絵に描いたような理想的な美しい人や可愛い子犬、美味しそうな食べ物が無限に流れてくるのを見て、気分も思考も様々な影響を受けます。自分が感じたことを子どもたちと共有することは非常に貴重なことです。
[ 5 ]
自分が一番のお手本になりましょう
子どもたちのために、自分の価値に合った使い方のルールに則ったお手本を見せましょう。私たちは大人になるまでの間に、車を運転したり、安全に道を渡ったり、正しい食事をしたり、個人的な健康・衛生状態を維持したり、家族の価値観に沿った政治的・宗教的な見解を持ったりと、デジタル以外の面でたくさんの経験・知見を既に持っています。私たちがテクノロジーをどのように使うのか、そして私たちの生活の中でどのくらいテクノロジーを活用する時間やスペースを確保するのかは、私たちの多くが子どもの頃にはなかったものですが、もはや、私たちが最も子どもたちに教えなければならないことの1つです。
「保護者には、子どもたちが真似したいと思うようなデジタル市民となる大きな責任があります。昔から言われているように、コミュニティには学校、企業、教会など様々な集まる場所が必要で、みんなで協力して相互に貢献する必要がありますが、子どもにとって、最初に出会う社会との接点は、保護者としてのあなた自身なのです。」
Six Secondsは、EQが心のインフラになり得ると考えています。
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イスタンブールを拠点に活動するコンサルタント。
Six Seconds米国本部 Preferred Partner。
Senior Content Curator
Six Seconds米国本部のライター。ノーブルゴールは、命の奇跡への感謝を共有していくこと。より健康的でバランスの取れた達成感のある人生を生きるための、最新の脳科学に基づいた実践可能で適応可能なヒントを中心に記事にまとめています。
訳者コメント|子どもたちの休校が始まり、どうしても子どもたちの
iPadなどの使用時間が増えています。EQを活用する親として
最適な心構えのヒントが見つけられると思い、翻訳しました。
EQチェンジエージェント|COLORES 廻田彩夏
EQを学びたい方へ
Six Secondsグループは、グローバルで、科学に基づき、実用性の高いEQを世界各国で伝えています。日本オフィスであるシックスセカンズジャパンでは、最先端のEQの情報を日本語で発信するほか、Six Seconds国際認定資格セミナーの国内開催を行い、資格を持ち日本各地で活躍するEQチェンジエージェントと共に日本全国へEQを届けております。