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前例のない快挙

by : 6SJ 勝又 美江  | 

2014年4月3日 | 

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南から桜の便りが春の訪れを知らせるこの季節は、人生の節目を迎える季節でもある。
卒業、入学、就職、転勤、異動etc.

新しい環境でスタートをする人が多い季節。

日本生産性本部が実施している「新入社員の特徴とタイプ」が今年も発表された。

平成26年度 新入社員のタイプは「自動ブレーキ型」とのこと。
(特徴を以下に発表内容を引用)

「知識豊富で敏感。就職活動も手堅く進め、そこそこの内定を得ると、壁にぶつかる前に活動を終了。何事も安全運転の傾向がある。人を傷つけない安心感はあるが、どこか馬力不足との声も。どんな環境でも自在に運転できるようになるには、高感度センサーを活用した開発(指導、育成)が必要。」
(日本生産性本部HPより)

仕事でも、プライベートでも「壁」と感じることは、山ほどある。
「壁」にぶつかる前に活動を止めてしまうことで得られることは何か。

「無難にこなせる」ようにはなるだろう。
しかし、「難しい」と感じたら立ちすくむか、回れ右をしてしまうことを
これからの人生で選んでしまうのだろうか。

私たちは、人生の先輩として何を教えてあげればいいのだろうか。

ちなみに、昨年の新入社員のタイプは「ロボット掃除機型」と命名された。

「一見どれも均一的で区別がつきにくいが、部屋の隅々まで効率的に動き回り家事など時間の短縮に役立つ(就職活動期間が2か月短縮されたなかで、効率よく会社訪問をすることが求められた)。しかし段差(プレッシャー)に弱く、たまに行方不明になったり、裏返しになってもがき続けたりすることもある。能力を発揮させるには環境整備(職場のフォローや丁寧な育成)が必要。」
(日本生産性本部HPより)

■「ロボット掃除機型」と命名されてしまった新入社員を17名採用したIT企業が
先月快挙を成し遂げた。

快挙というのは昨年の第3回「EQカンファレンス」で事例発表をしてくださった四元千佐子氏(新入社員育成とEQ導入)のケースだ。
四元氏の会社は、今年4月が創業15年目を迎える。15年目のチャレンジは新入社員の中途退職者を出さなかったことだ。

ちなみに弊社は、毎年1回(11月最終土曜日)「EQカンファレンス」と称して、シックスセカンズ国際認定資格者による事例発表の機会を設けている。資格認定者は、キャリア・コンサルタント、研修講師、コーチ、カウンセラー、経営コンサルタント、企業の社内講師やHR担当者とさまざまだが、誰もが人材育成のキーファクターに「EQ発揮の必要性」を感じている方々ばかりだ。四元氏もその一人だ。

では、どんな取り組みをしたのだろうか。
一般的に「ロボット掃除機型」への処方とされている「能力を発揮させるには環境整備(職場のフォロー態勢や丁寧な育成意識の醸成)」の実施に加え、「感情をエネルギーに変える取り組み」をしたのだ。

新入社員研修では、例年の内容(ビジネス・マナーやITスキル研修)にEQストレングスレポートを活用したパートを加えた。自分の「強み」を発見・再認識させるパートだ。
そして入社3ヶ月後には、個別面談を実施。面談には社外人材(弊社資格認定者)を起用した。四元氏の言を借りれば「入社3ヶ月目が毎年一つの山場だった」だそうだ。

「自分で選んだ就職先とはいえ、やること、なすこと、覚えること、初めてのことが多い。彼らの気持ちは徐々に『自分は、この先もこの仕事ができるのだろうか』と不安を覚え始める。これまで早い人では3ヶ月の試用期間で去っていってしまった。去っていく彼らの姿に、これからじゃないかと思うと悔しさと無力感を感じる時もあった」と添える。

不安感、プレッシャー、疲労感は、入社時にあった自己効力感を徐々に失わせる。
成長スピードは人それぞれであるのに、無意識に同期との比較し、「自分はこれでいいんだ」という自己肯定感も薄めてしまう。

「自分はできる」「今の自分を受けとめて、前に進めばいいんだ」という感覚が育たないために「自分を信じて行動する」感覚が生まれにくくなる。

新しい研修のパートでは、彼らの小さな成功体験を生むことを目標に、自分のできないところに目をむけるのではなく、まず自分の「強み」を信ずることで前向きな気持ちを創出できる、前向きな気持ちが生まれれば自ずと行動に向かう、という実践サイクルを説いた。

新入社員の入社半年を過ぎた10月に、もう1つの環境整備をした。それは新入社員のメンター役を請け負うサブリーダー研修である。彼らには、リーダーシップレポートをベースとした「キャリアの棚卸し」研修をデザインした。ここでも“感情をエネルギーに変える取り組み”がメインテーマだ。

研修ではまず、ライフラインを描き、自分の辿った体験をまざまざと思い起こさせる。

「この時、先輩にこんな風に言ってもらったんだよな」
「一緒に頑張ろうぜって言ってくれたあの一言で、盛り返せたんだよね」

サブリーダーとして、新入社員とどう向き合うか。
担当する新人のセルフ・リーダーシップを支援するには、「何」を「どのように」していくのか。
支援するとき、指示するとき、サブリーダーとして一人の先輩として「本当に、新入社員に望むものは何か」

『新入社員の感情に寄り添って、支援する』

サブリーダーたちはワークを通じて自分のリーダーシップのスタイルを再構築した。

そして、結果は出た。

目標だった 2014年3月31日 「新入社員中途退職者0(ゼロ)」
見事に達成した!

「新入社員を一人も途中で辞めさせない!」

この取り組みは、新入社員だけでなく、若手リーダーの成長にも寄与した。

それだけじゃない。
若手リーダーの行動が、管理職の行動に変化をもたらすという「おまけ」までついてきた。

四元氏は言う。
「私もこの取り組みで、手ごたえを感じたのは事実です。
なにより、サブリーダから、その周りのリ-ダ、同僚と…『こんな壁で辞めさせては
いけない』といった空気が職場全体に広がり、新人たちを応援するムードが出てきました。
入社3年目の社員からは、「最近、上司がよく話を聞いてくれるようになった」という声も
出てきました。まだまだこれからですが本当にうれしいです」

前例のない、胸のすくようなすばらしい出来事であった。

「感情に寄り添って、支援すること=EQ実践」が
新入社員にも、若手リーダーにも、管理職の行動までにも、ポジティブチェンジを生み出した

シックスセカンズ社のグローバル調査では
達成意欲(結果を出すために物事をやり遂げようとする力)において
EQは50.11%の予測率を示す。
達成するための意欲はEQの発揮が5割は必要であるということだ。

平成26年 今年の「自動ブレーキ型」の新入社員の新たなステージが始まった。

どんな環境でも自在に運転できるようになるには
EQ(感情知能)という高感度センサーの装着(指導、育成)は必須である。

シックスセカンズジャパン株式会社
勝又 美江