EnglishとEQ
by : 6SJ代表 田辺 康広 |
2014年7月29日 |
EQコミュニティマガジン, ビジネス, 教育, 活用事例
先日、老舗英語学習教育会社の営業社員様向け講座で
「グローバル人材とEQ」というテーマで話をさせていただく機会を得ました。
冒頭は著名な作家の有名な随筆の書き出しをお見せしました。
Approach everything rationally, and you become harsh.
Pole along in the stream of emotions, and you will be swept away by the
current.
Give free rein to your desires, and you become uncomfortably confined.
It is not a very agreeable place to live, this world of ours
本のタイトルは
The Three-Cornered World
です。
さて何かお分かりですか。
そう、夏目漱石「草枕」(1906年)の書き出しですね。
「智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角にこの世は住みにくい」
と始まる、あの著名な随筆です。
100年前の漱石は、私たちの毎日を住みやすい毎日とするためには
「智に働きすぎず、情に流されすぎず、意地を張りすぎない」
「でも、それが難しい。」
と教えてくれたのです。
「100年前の人たちと現代の私たちを比較すると
IQは20点くらい上がったが、EQは20点ぐらい下がった。」
ジョシュア・フリードマン(シックスセカンズ社CEO)は
キーノート・スピーチでよくこのように語りかけます。
文明が発達した現代に生きる私たちが、100年前の人たちより
「思考と感情を良い按配にして、適切な行動を促す能力=EQ」が下がったというこ
とに何か大事なものを見過ごしがちになる現代人の心の有体を垣間見る思いがする
のは私だけでしょうか。
ますます変動的で、不確実、複雑で曖昧が現代社会のキーワードとされる中、海外、
国内、はたまたネット空間と多岐にわたってボーダーレスにビジネスを展開しなけ
ればならない時代にさらされています。
文化や言語というボーダーを超えてチームワーク(協業)を推進していかなければ
なりません。
グローバル人材の育成が叫ばれるこのような時代こそ
漱石が訴えた「知と情の按配を図る能力=EQ」が重要なサクセスファクターとなる
のではないでしょうか。
ここで英語習得の必要性を訴えてきた皆様に1つ質問を。
「英語習得の必要性」と「EQ」を融合させるとどのようなグローバル人材が生まれ
るでしょうか。
私は次のように考えます。
English + EQ =
「自分の意志や意図を自らの言葉で周囲に丁寧に発信し、他者との間に共鳴を起こ
せる人材」
「異文化の中でも自分(の特性=持ち味、取り柄)を信じ、自分を活かせるという
感情(自己効力感)を絶やさない人材」
“2つのE”を駆使することで、世界でリスペクトされる真のグローバル人材の姿が
見えてきます。
私自身、米国での駐在員時代、その後の起業体験を振り返ると、グローバルで協業
を進める私たちが常に知りたかったことは
一緒に働く相手の「気持ち=思考x感情」でした。
“何を考えているのか”
“どのように感じているのか”
“どうしたいのか”
その人の奥にある意思や意図です。
ところが、たとえば6月に開催したEQプラクティショナー認定セミナーでも、こん
な一コマがありました。
講師のジョシュア・フリードマンが “How did you feel about this exercise.”と
問いかけたところ
受講者からは”It was a good exercise.” “We have to xxx in next time.”とい
う答えが返ってきました。
この答えは、「何を考えたか」「次はどうしたいか」という内容です。
ジョシュアが知りたかった「どう感じたか」の答えにはなっていなかったのです。
ジョシュアは、“I was excited.” とか “I love this kind of exercise.” と
か、受講者の心のつぶやきをききたかったのです。
私たち日本人は「何を考えているか」「どうしたいか」についての英語表現はたく
さん練習をしてきましたが、あいにく、「どのように感じているか」「どのように
感じたか」といったコミュニケーションをする中で一番知りたい“感情”についての
表現力をほとんど練習して来なかった気がします。
(これは英語だけの問題でなく、日本語においても練習して来なかったかもしれま
せんね)
この“感情表現”が英語でできないことは、実はグローバルプロジェクトを進めるう
えでボトルネックとなるのです。
プロジェクトの進み具合を報告する際、「すべてプラン通りに進んでいます。今の
ところ問題はありません。」で報告を止めてしまうケースがよくあります。
何が起こっていたのかを無表情に伝えるだけで、伝えている本人が進捗状況をどの
ように感じているか、現場の人たちがどのような感情を持っていたかについて報告
しようという視点が欠けているのです。
例えば上記の報告に感情の視点を添えるとこうなります。
「プラン通りにすべては進んでいます。しかし、皆さん若干疲れ気味な様子がみて
とれました。私としてもこのままでは進めてはどこかで事故が起こりそうで不安な気
持ちになりました。ここは少しリフレッシュできるような機会を設けるべきだと思っ
て帰ってきました。」
ここまで伝えていただければ報告を受けたほうはいろいろな対策が浮かんできます。
“不安”という感情を添えただけで、現場の様子がありありと浮かび臨場感が増す報
告となりました。そして受け手に、状況把握だけでなく、次なる行動や戦略を思索
するための洞察につながりました。
さて、皆さんにお伺いします。
この違いを生んでいるのは英語教育だけの問題でしょうか。
いいえ、感情を見つめる練習が足りないことから起こる問題なのです。
「自分や相手の感情を認識し、表現する英語能力」
「感情がもたらすメッセージを解読して行動や戦略に落とし込む能力」
「自分のアイデアの実現に周囲を巻き込む能力」
“2つのE=English+EQ”を駆使することで
世界でリスペクトされる真のグローバル人材としての必要条件が揃うのではないで
しょうか。
ではここで感情を主役にした英語レッスンを1つやってみましょう。
「xxxな気持ちとなりたい時には、つい○○な行動をとってします。」
という英作文を3つ作ります。
例えば、こんな感じです。
“When I want to feel happy, I’m trying to recall last year’s vacation
with my family.”
英語による感情表現を少し磨くだけで、グローバルにあなたの意思が届くようにな
り、リスペクトにつながるパーソナルなパワーをもたらしてくれるはずです。
シックスセカンズジャパン株式会社
代表 田辺 康広