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EQデータ分析から見えてきた日本の課題(2)

by : 6SJ データ分析センターフェロー 三森 朋宏  | 

2018年4月15日 | 

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シックスセカンズジャパン データ分析センターフェローの三森です。

前回より、Six SecondsのグローバルEQ検査「SEI」のデータ集計、分析した結果をもとに、「EQ(SEI)データ分析から見えてきた日本の課題」についてポイントを少し整理してお届けしております。

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データ分析の結果において特に着目したのは次の3点です。

1. EQ総合値に見る日本人の全体傾向について
2. BBPデータ分析に見る「人材の多様性」について(本記事)
3. SEIによる年代、役職別のEQ総合スコアについて

以上に総括を加えた4記事をお届けしてまいります。

今回は2つ目の「ブレイン・ブリーフ・プロファイル(BBP)」データ分析に見る「人材の多様性」について考えていきたいと思います。(今回ご紹介するデータは、2015年10月〜2017年9月までにSEIを受検くださった日本人6,750件が対象です。)

 

[1] ブレイン・ブリーフ・プロファイル(BBP)について

まずは、ブレイン・ブリーフ・プロファイル(BBP)検査について少し説明いたします。BBPは、普段我々がなかなか気づくことのない「脳の嗜好性(ものごとの捉え方のクセ)」を、

フォーカス:理性的な情報と感情的な情報のどちらをキャッチしようとしているか
デシジョン:意思決定の際、保守的な選択と革新的な選択のどちらを好むか
ドライブ:現実的なタスクと理想的なビジョンのどちらに動機づけられるか

の三つのスケール(軸)で可視化し、それらの組み合わせを基に8つのブレイン・スタイルで表したものです。

 

※ブレイン・スタイルは「性格」ではなく、環境や状況によってつくられ、変化するものです。

 

[2] ブレイン・スタイルによる多様性があまりない?

次のグラフの通り、性別とブレイン・スタイルの分布について、

(1) 男女間において、各ブレイン・スタイルの人数比率におおきな差はみられません
(2) 男女共通してガーディアン脳とセージ脳が全体の60%と半数以上を占めていることがわかります
(3) 脳の嗜好性という観点から見ると、多様性に欠けていることがわかります

つまり、今回の日本人受検者データを全体でみたときに、情報収集、意思決定、動機づけの嗜好スタイルが偏っている事を示しています。

次の分布図では、ブレイン・スタイルと役職の関連を示しています。まず、ガーディアン脳とEmployee(従業員)の関連が高いことがわかります。言い換えると、従業員にはガーディアン脳を使う人が多いということです。「ガーディアン脳は相手に対して擁護的であり、 慎重で現実的(ブレイン・ブリーフ読み方ガイドより)」であるため、擁護的な関りやリスク回避に対して非常に強みを発揮します。
一方で、「変化を望まないことがあります。極端に働く場合、ガーディアン脳はリスクに対する障害となります。 (ブレイン・ブリーフ読み方ガイドより)」

つまり変化が求められる時には、変化に必要なアクションや創造性を生みにくいという特徴もあります。

会社に入ってから似たようなブレイン・スタイルがつくられるのか、採用時に似たような人を採用しているのかは今回のデータからは読み取ることができませんが、ブレイン・スタイルの観点から今回のBBPデータを見てみると、スタイルに偏りがあり、 特に従業員(Employee)にはガーディアン脳が多いことをデータから読み取ることができます。「人材の多様性」という観点からは少し遠いように思われます。

多様化している現代社会のニーズに対応したり、イノベーションを必要としている会社にとっては、もしかしたらこのブレイン・スタイルの偏りが変化対応やチームワークを発揮する際のブレーキとなってしまっているかもしれません。

成長を続ける会社や組織となるにはどのような人材育成の機能が必要だと思われますか?

前回のSEIのデータからは「自己認識力を高めることの必要性」が確認でき、自己認識力を高めるためにEQ能力の開発の必要性・重要性をお伝えしました。

今回のBBPデータによる日本人受検者のスタイルの傾向からは組織活性化への要点が、役職との関連からは「脳の嗜好性」について多様性を生まない「組織」と言う環境要因を探る考察ポイントが見つかりつつある予感がしています。

次回は再びEQ(SEI)の総合スコアに話を戻して、年代、役職別に詳しく見ていきたいと思います。

 

シックスセカンズジャパン データ分析センターフェロー
三森 朋宏
(編集:シックスセカンズジャパン勝又・須澤)