成功までイメージする、メンタルプラクティスのパワー
by : Michael Miller, Six Seconds Global |
2020年4月16日 |
ソファーに座って、運動をしているイメージを思い描くだけでどれくらい強くなれるでしょう?米国クリーブランド・クリニックにて行われた調査によると、私たちが想像するよりはるかに効果があるとのこと。この調査で、参加者が動作を頭の中でイメージをするだけで本当に筋肉を鍛えることができるということが判明しました。
メンタルプラクティスは、ジムで体を動かすのをさぼる言い訳になる、以上のものです。たいていの人はメンタルプラクティスの持つ可能性や価値に気づいていませんが、あなたがこの記事を読んでいる今こそ、新たなスキルを身に着けることやリハビリから手術を成功させることまで、この能力をあらゆる場面で活用すべき時です。
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米国本部が2018年1月に発表した記事「Envisioning Your Way to Success: The Power of Mental Practice」の日本語翻訳です。画像をクリックすると米国本部の原文記事をお読みいただけます。
メンタルプラクティスとはいったい何なのか
新しいスキルを学ぶ時でも、パフォーマンスの準備をしている時でも、ケガを直す時でも、メンタルプラクティスは驚くほどの効果があります。
メンタルプラクティスは、体を動かさず、頭の中で動作について入念にリハーサルをする事です。日本語ではイメージトレーニング(イメトレ)と言うとわかりやすいでしょう。その動作を実際には行わずに、やっていることを頭の中で細部まで視覚化します。頭の中でしか行っていないにも関わらず、体力やパフォーマンス向上、新しいスキルや能力を身に着け、体を強化するのに非常に有効であるということが明らかにされています。
さて、メンタルプラクティスを使う3つの方法とそのリサーチを見て、私たちの生活にどのように活用できるかを見てみましょう。
お静かに!今、頭の中でゴルフ中です
メンタルプラクティスがもっとも使われている場面について、一番私たちがイメージしやすいのはスポーツ選手とミュージシャンでしょう。モハメド・アリ、マイケル・ジョーダンといった大スターたちがメンタルプラクティスの素晴らしさを唱えているだけではなく、メンタルプラクティスは実際の肉体的トレーニングと同じぐらいの効果があることを示す証拠も次々と明らかになっています。しかも、練習だけを行うよりも、メンタルプラクティスだけを行うよりも、両方を合わせて行う方がより一層効果があるのです。
実際に、一定のスキルレベルに到達するためのフィジカルトレーニングに比べて、フィジカルトレーニングとメンタルプラクティスを組み合わせる方が、フィジカルトレーニングの量は半分で済む、ということを研究者は発見しました。考えてみてください。すなわち、何か新しいスキルを習得するために、メンタルプラクティスを適切に使えば、実際の練習時間を半分に短縮できるのです!
そしてこれは、スキルを習得する時だけでなく、スキルをより効果的に発揮する、パフォーマンスを発揮するのにも同様です。
手術のイメトレを行う医師と、そうでない医師
「お医者さん、変な質問ですが…私の手術のイメトレしました? ほら、本番の前に頭の中でちゃんとイメージしました…?」
複数の調査研究にて、手術前にメンタルプラクティスを行う外科医は、技術的能力の向上とパフォーマンスの向上を示すことがわかっています。 アスリートやミュージシャンと同様に、経験や実際の練習とメンタルプラクティスの組み合わせが手術のスキルの習得と実行の両方に最も効果的なのです。
これだけの技術的なスキルとパフォーマンスの向上に繋がるのであれば、自分の外科医もこのようなメンタルプラクティスをやって欲しいと思いませんか?
準備の一環としてメンタルプラクティスを取り入れるべきなのは、外科医だけではありません。スピーチをしたり、重要な会議に参加したり、重要なことについて子どもと話したりするときの準備として、メンタルプラクティスを実際の練習と組み合わせることで、より良いパフォーマンスに繋がることがわかっています。メンタルプラクティスは不安を軽減し、自信を高めます。何か大切なことをしなければならない時には、事前にメンタルプラクティスを使ってみて下さい。その時は言葉だけではなく、話し方、自分の仕草、相手との接し方まで具体的に想像してみてください。何が見えるか、何が聞こえるか、どんな匂いがするかなど、五感を使ってそのイメージをできるだけ鮮明にしながら、具体的な行動を考えてみてください。また調査によると、メンタルプラクティスから実際に行うまでの時間が短い(本番の直前に集中して行う)ほど、効果的です。
そして、メンタルプラクティスについて最も驚くべきメリットは、体を強くし、更には体を治す力もあるということです。ですので、(うまくメンタルプラクティスをやってくれているはずの)外科医の手術が終わったら、自分自身も自分のためにメンタルプラクティスを行うのが良いでしょう。
そしてこれは、冒頭で触れたように、実際にソファに座って実際に行う動作を視覚化することが思っている以上に効果を発揮します。
メンタルプラクティスで小指を鍛えてみる
ある研究で、参加者はメンタルプラクティスを通じて小指を鍛えました。本当の話です。この研究では、参加者は4つのグループに分けられました。最初のグループは小指の筋肉の収縮をイメージしました。2番目のグループは、小指の代わりに肘の筋肉の収縮をイメージしました。3番目のグループは、ただただ小指を実際に動かして鍛えました。そして最後のグループはまったくトレーニングをしませんでした。
どのチームが勝ったと思いますか?当然のことながら、実際に筋トレで訓練したグループが最も改善して、筋力が53%アップしました。ですが、小指の筋肉の収縮をイメージだけ行っていたグループも、なんと筋力を35%も向上させました。 メンタルプラクティスだけで、です!
そして、この研究は他の場面や他の身体の部分でも再現されています。オハイオ州にあるクリーブランド・クリニック財団の運動心理学者であるGuang Yueさんは、ジムで運動をした人と完全にメンタルプラクティスでトレーニングを行った人の結果を比較する実験を行いました。 ジムに行った人は筋力を30%増加させましたが、ウェイトトレーニングのメンタルプラクティスを行った人は筋力を13.5%増加させました。
ジムに行くモチベーションが既に低い人にとってはさらにモチベーションを下げかねないので、少し焦点を運動から切り替えてみましょう。リハビリで行われた研究でも、同じように驚くべき結果が見られました。
ある研究によると、脳卒中の患者は、メンタルプラクティスを行うことで、コントロールできなくなったはずの手足の動きを取り戻す可能性が高くなったことがわかりました。また、別の研究では、メンタルプラクティスがケガなどによる短期的な筋肉の固定化による筋力低下を軽減するのに役立つことがわかりました。私たちの医療により包括的なアプローチをもたらすために、驚くほどの可能性があります。
さて、あなたがもし私と同じような視点の持ち主であれば、このように思うでしょう:
一体なぜこんなことが起こるのか?
脳の中を覗いてみる
私たちの脳は驚くべき想像力を持っています。 脳をスキャンするfMRIなどの技術の発展のおかげで、活動中に活性化されている脳の領域をリアルタイムで確認できるようになりました。 そして、研究家が発見したのは、何かを視覚化することと、それを実際にやることでは、脳の動きという点において非常によく似ているということです。
あるボディビルダーについての研究では、実際に数百ポンドを持ち上げるにしても、数百ポンドを持ち上げることを想像するにしても、脳内は同じパターンになることがわかりました。すなわち、メンタルプラクティスで小指の運動をイメージするのと、実際に小指を動かして運動しているのとでは、脳の同じ領域が活性化されます。これは、あらゆる場面の研究で同じ結果を出しています。ピアニストやバイオリニストの研究では、実際のパフォーマンスとメンタルプラクティスでのパフォーマンスので、同じ様な脳の動きを発見しました。 アスリートの研究ではこれらの結果をさらに確認できました。
結果ではっきりわかることは、メンタルプラクティスは実際に体を動かして行うのと同じ神経経路が活用される、ということです。 おそらく、実際の運動より低いレベルで活用しているため、比較的に効果が低いでしょうが、それにもかかわらずそれなりに神経経路を強化しています。思考は行動と同じ神経の動きを生み出すようです。 もちろん、全く一緒ではありませんが、脳内の活性化の面では、非常に似ています。
他に信じられないほど私たちの脳を活性化するものを知っていますか? 他の人がやること見ることです。 私たちの脳には、ミラーニューロンと呼ばれる細胞があり、自分の行動と他の人の行動の両方によって起動されます。 自分でリンゴを食べる時や恐怖を感じる時と、人がリンゴを食べている場面や恐怖を表している場面を見る時と、両方で活動電位を発生させます。
重要なニュアンス
メンタルプラクティスのメリットについては、初心者よりも経験者にとってはるかに効果的であることも、ある研究で判明しています。考えてみれば当然です。初心者は、正確な動作を視覚化できるほど、その動作に慣れていない場合があります。
したがって、メンタルプラクティスを試しても上記に表現されたような数値と比べてまったく効果がないようであれば、これが理由かもしれません。そのスキルに対し、メンタルプラクティスを有効的に使う前にもう少しフィジカルでの動作を伴った練習が必要かもしれません。
メンタルプラクティスを始める方法
メンタルプラクティスのメリットを得るためには、まず何を達成したいかを決める必要があります。新しいスキルを身に着けたいのか、あるスキルをマスターしたいのか。或いは最高レベルのパフォーマンスを発揮したいのか。もしくは、より速くより効果的に体の悪い部分を良くしたいのか。
ですが、例え目的を何とするか決めていたとしても、メンタルプラクティスの効果を高めるの共通する大切なテーマがあります。それは、具体性です。
具体的な目標を設定する必要があります。例えば、自分が打ちたい具体的な理想のゴルフショット、その会議で生み出したい具体的な成果、自分が行いたいスピーチの具体的な方法などです。そして次に、できるだけ多くの感覚を取り入れながら、メンタルプラクティスを行います。実際にそれを行う場所に身を置いて、人もそこにいて、実際に行う際に触ったり感じたり見たりする物も用意をして。どんな香りがしますか?あなたの体はどのように感じていますか?どんな姿勢をしていますか?あなたは誰と一緒ですか?顔に風が当たるのを感じますか?頬に汗はかいていますか?この視覚化をできる限り強力で鮮明に、正確に行うほど、メリットが得られます。
Senior Content Curator
Six Seconds米国本部のライター。ノーブルゴールは、命の奇跡への感謝を共有していくこと。より健康的でバランスの取れた達成感のある人生を生きるための、最新の脳科学に基づいた実践可能で適応可能なヒントを中心に記事にまとめています。
翻訳:EQチェンジエージェント|Stephen Outlaw-Spruell, TFA Global
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Six Secondsグループは、グローバルで、科学に基づき、実用性の高いEQを世界各国で伝えています。日本オフィスであるシックスセカンズジャパンでは、最先端のEQの情報を日本語で発信するほか、Six Seconds国際認定資格セミナーの国内開催を行い、資格を持ち日本各地で活躍するEQチェンジエージェントと共に日本全国へEQを届けております。
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