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日本のEQデータからの考察 パンデミック後の変化

by : Six Seconds  | 

2024年12月23日 | 

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シックスセカンズ社は、1997年からEQに関する調査や研究を開始し、数年に1度シックスセカンズ社のEQデータをまとめたグローバルレポート「State of the Heart(略SOH)」を発表しています。

シックスセカンズジャパンにおいても、2011年よりシックスセカンズのEQ検査を用いた研修、コーチング、カウンセリング等の実施と、弊社認定パートナー(約150社)の検査利用のサポートを行っています。世界経済フォーラムが発表しているレポートなどから、組織開発、人材育成におけるEQスキルの必要性や重要性は世界的に高まっており、日本においても、書店に並ぶ書籍のタイトルにもEQを冠するもの、関連するワードが並んでおり、うねりはますます高まっています。
そこで、日本人のEQ検査データを研究調査する弊社データ分析センターフェロー(大原佳子氏・三森朋宏氏)と共に「日本人のEQデータから見えること」「EQ活用の価値」を定期的にお届けしてまいります。

私たちの今、そして未来を『自分らしい豊かな日常を切り開く糸口』をEQデータから見えることを一つの参考情報としていただけることを願っております。
 

シックスセカンズのEQデータから“何が見えるのか”

今回の調査に使用されたデータ:20、312件
データ収集期間:2018年4月~2023年3月
検査概要:自己申告型、設問数:77問、平均受検時間:約8分、受検形態:Web受検、対応言語:12言語(日本語含む)検査の詳細≫
 

EQは私たちのライフサクセスを予測する

「EQを開発することは重要だ」と言われます。EQは人の営みのどのような側面に影響を与えるのか。その理由をシックスセカンズはサクセスファクター(達成意欲・対人関係への意識・ウェルビーイング・クオリティ・オブ・ライフ)の4つの要因として説き、検証しています。

サクセスファクター
1.達成意欲 (結果を出すために物事をやり遂げようとする能力)
2.対人関係への意識(良好で強固な人間関係を構築する能力)
3.ウェルビーイング(エネルギーや機能を高いレベルに保つ能力)
4.クオリティ・オブ・ライフ(よりよく生きることで「真の幸福」を創造する能力) 

シックスセカンズは世界中のSEI受検者のデータより、EQとサクセスファクターの強い関係性を明らかにしました。
このことから、シックスセカンズは、「EQを伸ばすと、サクセスファクターが活用できるようになる。そして、サクセスファクターが機能することで、自分の人生の目的や目標にそった、健全で、建設的な毎日を送るようになれる」と結論付けました。

 

 

2018年4月~2023年3月の5年間のEQ総合値、サクセスファクターの変化

今回の調査で用いたデータは年度で区切っています。
2018:2018年4月~2019年3月
2019:2019年4月~2020年3月
2020:2020年4月~2021年3月
2021:2021年4月~2022年3月
2022:2022年4月~2023年3月

日本ではコロナ禍に突入する2019年から2020年にかけて各スコアが上昇しています。(グローバルでは、2019年をピークにすべてのスコアが減少していた)
パンデミックで仕事の環境が大きく変わり、グローバルでは燃え尽き症候群や過度の長期にわたるストレスによって感情的、肉体的、精神的な疲労が高まったとみることができますが、日本では極端に仕事中心になっていた生活から、パンデミックの自粛生活により家庭や自分の時間にも目を向ける生活となり、ワークライフバランスが整うことにより感情的、肉体的、精神的な状態が良くなったという仮説を立てることができます。
 

男女別サクセスファクターの変化

男女別に変化を見てみましょう。

男女共、共通して見えることは、日常生活において「対人関係への意識」「ウェルビーイング」をより良いものにしようと意識し、実践していることが伺えます。
また、「クオリティ・オブ・ライフ」は、コロナ発生時期の2019年から2020年に伸長しています。先行きが不安なコロナ禍で“自分にとって、真の幸福とは何か”を見つめた方や実感した方が多かったのでしょうか。

「達成意欲」は男女共に、コロナ後2022年は前年よりもグラフが落ち込んでいます。「達成意欲」の定義は「結果を出すために物事をやり遂げようとする能力」です。コロナ禍(2020年)真っ只中よりも達成意欲が落ちている(特に女性の方で顕著な低下)要因は何なのでしょうか。EQコンピテンシーの変化からそのヒントを探っていきましょう。

 

パンデミック前後のEQコンピテンシースコアの比較

私たちのサクセスファクターに影響を与えたEQコンピテンシーは何だったのでしょうか?
EQコンピテンシーの各定義は以下の通りです。

感情リテラシー:単純な感情状態から複雑なものまで、正確に認識し、解釈すること
自己パターンの認識:習慣的に繰り返す反応や行動を認識すること
結果を見すえた思考:自分がとろうとする選択肢のメリットとデメリットに関して、行動をとる前に考えることができること
感情のナビゲート:感情を戦略的なリソース(情報資源)として捉え、その感情を評価し、活かしたり、変化させたりすること
内発的なモチベーション:報酬や見返りなど外因性によるものではなく、個人の価値観や責任感など内から湧き上がるエネルギーを生み出すこと
楽観性の発揮:希望や可能性を信じ、自分から前向きな展望をもてること
共感力の活用:周囲の人の感情を理解し、適切に対応すること
ノーブルゴールの追求:日々の選択を、自己の強く大きな目的と結びつけること

グラフは、2018年度(薄い色)と2022年度(濃い色)の8つのEQコンピテンシーのスコアを比較しています。2018年度のスコアに比べ、2022年度はすべて上昇しています。(グローバルのSOHレポートではすべてのスコアが下がっていた)
特に上昇率が高かった上位3つのEQコンピテンシーは、「結果を見すえた思考」「感情のナビゲート」「楽観性の発揮」です。

2022年の結果をプロファイリングすると、以下のことが伺えます。
「結果を見すえた思考」は、コロナの感染拡大予防や今後の働き方や生活に対してリスクを検討し、慎重な動きを考えるような方向に働いたのかもしれません。一方で、「楽観性の発揮」は、困難な状況の中でも自分たちがコントロールできることや可能性にフォーカスして、少しでも前向きな展望を持とうとしていたのが読み取れます。しかし両者のスコアの差から、可能性の側面よりもリスク面への焦点が高かったことがうかがえます。
そのような状況下において自分の感情を上手くナビゲートすることで、困難な状況を乗り切る工夫をしていることが想像できます。
これらのEQコンピテンシー活用により、コロナ禍という変化した状況の中でも上手く乗り越える工夫を人々がしたことで、ウェルビーイングやQOLの向上に結び付いたと言えます。

スコアの低い(発揮度合いが低い)EQコンピテンシー「内発的なモチベーション」「楽観性の発揮」「ノーブルゴールの追求」から総じて見受けられるのは、人々は引き続きエンゲージメントやモチベーションといった自ら前向きなエネルギーを生み出すことに苦労しているということです。内側から湧き出るモチベーション、前向きな展望、自分らしさの探求がうまく発揮されない理由はなんでしょうか?

先に紹介したサクセスファクターにおける「達成意欲」の2022年の大きな低下も、これらのEQコンピテンシーがうまく活用できていないことが関係していると言えます。EQコンピテンシーがうまく活用できない場合、人々はより環境要因に影響を受けます。パンデミック収束によりふたたび生活や環境が変化していく中で、その影響を受けて意欲が下がっていると言えます。
仕事や日常でのチャレンジにおいて、皆さんの内から湧き出るエネルギー(喜び、ワクワク、使命感、成長感等)は何ですか?(内発的なモチベーション)
希望や可能性の側面に目を向けると、どのようなワクワクした選択肢が見えてきますか?(楽観性の発揮)
あなたが本当に望むものは何ですか?(ノーブルゴールの追求)
今後これらの問いかけを意識して、EQコンピテンシーの活用を高めていくことで、環境の変化に影響されず、自ら前向きなエネルギーを生み出していくことができるようになるでしょう。

特にノーブルゴールの追求は、人々のありたい姿に向かう姿勢や目的意識のことであり、パーパス経営や、自律的キャリア形成には欠かせない、重要なEQコンピテンシーです。今後変化が激しく、不確実な時代において環境に影響を受けずに仕事でパフォーマンスを発揮したり、自分らしい日常や充実した毎日を送るためには、一人一人のノーブルゴールの追求姿勢を高めていくことが特に重要といえます。

今回はサクセスファクターとEQのスコアについて、パンデミック前後の変化をみてきました。今後も様々な視点から、皆様に日本のEQデータについての考察をお届けしてまいります。

シックスセカンズジャパン
データ分析センター