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多様な部下をマネジメントする時代、管理職に必須なEQスキル

2025年5月16日 | 

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※この記事は、シックスセカンズ認定資格者として活躍するパートナーの皆様による、実践事例やEQ活用のヒントを紹介する記事です。

はじめに

私の主な仕事はダイバーシティやワークライフバランスを企業や自治体、労働組合に浸透させることを目的としています。前職、大手化粧品会社の人事部でこの領域に取り組んでから、20年が経過しました。前職は女性比率が高く、仕事と子育ての両立支援や女性の健康課題など身近に見て来ました。私自身、多様な部下を沢山見て来ました。人事部門に在籍していた時は、制度設計に携わりましたが、管理職として赴任した営業現場では、年齢の幅も広く、美容職、店頭コーディネーター、スタッフ部門と多岐にわたる職種の女性部下を抱え、日々彼女たちの感情に寄り添いながらマネジメントしてきました。そんな中、シックスセカンズジャパン社のEQに出会い、SEIEQアセッサー資格を取得しました。今の会社では、EQをベースにした新任管理職研修や1対1でのEQコーチングを管理職に対して、展開しています。そんな私の活動をこのコラムを通じてご案内させて頂きます。

管理職になぜEQが必要なのか?

ソニーの元CEOの平井一夫さんがEQの重要性を色んな場面で言及されています。日経新聞の人気連載シリーズ『私の履歴書』の2025年4月に掲載されており、毎日楽しみに読んでいます。EQに関する重要性に言及されているシーンが数多くあります。私は研修の中で、よく平井さんの言葉を引用させて頂くのですが、とりわけ好きな言葉が「お願いですから肩書で仕事をしないでください。管理職の皆さんは人間性で部下をリードしてください」というセリフです。管理統制型のリーダーは短期的には成果を上げるかもしれませんが、中長期的には部下を支えるサーバントリーダーシップ型が部下の能力を引き出すのではないかと感じています。

最近では、若手を中心に「管理職になりたくない!」と考えている人が少なくありません。トップと部下に挟まれ、日々ストレスを抱えている様子を見て、そう思うのかもしれません。また新任管理職の中には、プレイヤー的な仕事を持ちつつ、マネジメントをしている人が多いです。そうした場合、多くは、プレイヤー業務が優先され、部下の人材育成は二の次になっています。
そんな現場の状況を数多く見て来ましたので、私がある企業で担当している新任管理職研修では以下の3点を強調しています。

企業での新任管理職研修の展開

私が長年お付き合いしているある企業での研修内容をお伝えします。シックスセカンズのEQモデルである「知る」「選ぶ」「活かす」の自己探求領域を重視しながら、進めています。

【1】自己の客観的理解を深める:こちらはSEIリーダーシップレポートブレイン・ブリーフ・プロファイル(BBP)のEQ検査を活用し、自分の検査結果について客観的に見て頂きます。3つの領域では「知る」にあたるところです。
【2】次に、どうしたら部下が活き活きと仕事をしてくれるのか、人を動かす方法を伝授します。こちらは、「選ぶ」にあたる領域です。様々なリーダーシップスタイルを紹介しながら、自分にマッチしたリーダー像を思い描いてもらいます。
【3】3点目は、これからどういうキャリアを描いていけば良いか、5年後、10年後の目標などを想像してもらいます。これは「活かす」領域です。特に大企業にいる方は、8つのEQコンピテンシーの中の「ノーブルゴールの追求」が低い傾向にありますので、管理職に昇格した時期に、自身のノーブルゴールの追求姿勢(日々の選択を、自己の強く大きな目的と結びつけること)を強く意識してもらいます。

 

多様な価値観に触れることを重視したBBP

部下育成の中で、私が重視しているのが、研修参加者の部下の多様性をどう理解するか、という点です。それには、BBPがとても役に立ちます。自分自身の脳スタイルを自覚したうえで、優位な点、改善が必要な点を理解してもらいます。

研修参加者同士で、それぞれの脳スタイルを紹介しあうと、多くの方が『今の脳スタイル傾向が部下との関係づくりや仕事への向き合い方、生活面で重視していることなどの傾向をよく表している』と言う声を多く聞きます。論理的な人、感情的な人、二人として同じ人間はいませんので、「個人」に向き合うことの重要性を説いています。

また過去の成功体験の押し付けは最もしてはいけないことです。その人にどんな言葉を掛けたらやる気を起こすのか、研修の中で伝えています。また多様な部下の価値観をどのように理解するか、では皆さんご存じの米国イエール大学の感情知能センターという研究機関が開発した「ムードメーター」を紹介し、部下の感情を上手に理解することの重要性を伝えています。

最近、「ヤバい」という言葉を若手が使う傾向がありますが、これには複数の意味があります。「焦る」という意味から「凄い」、「恥ずかしい」など多岐にわたります。
管理職は語彙力が重要であると研修で伝えていることもあり、「ムードメーター」を使って今の気持ちはどの状態が一番当てはまっているか、感情表現を意見交換してもらうワークも入れてます。

ムードメーターは、イェール大学の感情知性センターが開発
画像の日本語訳は株式会社アイズプラスが作成

1対1のEQコーチング内容

これまで説明したのが集合研修の様子ですが、私は自社内で展開している、次世代経営者育成塾という異業種交流を絡めた連続講座にもEQコーチングを導入しています。
主な流れは以下の通りです。

約半年間、月に2回程度、様々なテーマで受講者は講義を受けるのですが、自分自身がこの研修を通じてどう成長したかを図るツールとして、SEIリーダーシップレポートBBPを活用しています。
昨年参加した方々の研修に入る前と研修が終了した段階での比較は以下の通りです。

1回目のEQ検査を受検後、1時間程度オンラインコーチングを実施します。ここでは検査結果とEQの概念を最初に説明したうえで、今後どんなリーダーになりたいか、また部下にどうなってもらいたいか、など具体的なアクション・プランを策定してもらいます。

その目標が定まったら、あとは実行あるのみです。私はコーチ役として、日々その目標に向き合っているか、ガイドするのが主な役割です。そのアクション・プランを意識して頂きながら、半年間活動して頂いた変化が2回目の結果として表れています。

私が着目しているのは、8つのコンピテンシーの中では『楽観性の発揮』『内発的なモチベーション』『ノーブルゴールの追求』です。以下、この3つの領域が大幅に上がった2名の管理職のケースをお伝えします。

ある管理職の悩み①

部下に仕事を任せられず、一番売り上げの大きい顧客を持ったまま管理職についている人です。
顧客とは付き合いが長く、人間関係も良好です。私から部下に変わったら、売上が低下してしまうのではないか、との懸念もあり、プレイングマネジャーを継続しています。周囲もその管理職が担当していることに甘んじている様子です。

<アドバイス> 以下の質問を投げかけ、1か月後に行動に移してもらう
・なぜ、その顧客を担当し続けているのか、現在の気持ちを聞き出す
・誰に任せるか、人選を考えてもらう
・決まったら、どのようにその顧客と良好な引き継ぎを行い、今まで通りの売上を維持できるか考える

その管理職自身で1か月間悩み、行動に移した結果、無事に引き継ぎが完了し、マネジメントに専念できるようになった。感情を上手に使い、部下の気持ちに寄り添った。

ある管理職の悩み②

異動してきた部下が全くの期待外れ。自分は出来る能力があるといっておきながら、結局は出来ないことになることが多いという悩み。また単独で仕事を進めてしまう。どう育成していけば良いか?

<アドバイス> 自分の価値観で部下が仕事をすると思わないこと
・今までの上司や周囲との関係について考えてもらう
・その結果大変恵まれていたことを再認識
・その部下は自分の実力を過信する傾向があることを伝え、中堅社員をフォローにつけ、
一人で仕事をさせないことを徹底。
・自分が管理職として部下の成長をじっくり待つという試金石と思うように変えた。
・その結果、自分が焦る気持ちが落ち着いた。

 

今後も管理職をメインにEQの伝道師として活動

管理職はプレイングマネジャーではなく、部下に権限を委譲する必要があります。またその仕事も丸投げはいけません。いかに気持ちよく部下に働いてもらうか、永遠のテーマだと思います。
かつてのように金銭、報酬などの「外発的動機」は長続きしません。やりがいや成長実感など「内発的動機」をいかに触発させるか、が鍵になると思います。

また最近では心理的安全性の領域にも随分とEQに関する記述も増えており、ダニエル・ゴールマン氏の『EQ心の知能指数』からの引用もいたるところに見受けられます。最近、実践版の『ゾーンに入る』を読了し、20年の時が経過しても、EQの重要性が色褪せることがないな、と実感しています。

私はキャリア・コンサルタント資格を20年前に取得し、2級のキャリア・コンサルティング技能士も持っていますが、その時から、『キャリアの自律』が叫ばれていました。今でこそ、リスキリングなどが流行していますが、自分のキャリアは自分で描く、という方針は既に20年以上前から言われていましたが、なぜ今でも言われ続けているのでしょう。それくらい、特に大企業で働いている人はキャリア自律を考えている人が少ないと実感しています。

またEQコーチングでは家庭生活などのプライベート面も積極的に話してもらいます。これは会社ではなかなかないと思います。受講者からは、EQコーチングは自分の気持ちを吐露できる安全地帯である、とも言われ、気持ちよく仕事が出来るとの意見を頂いてます。

私は今年60歳になりますが、今後も企業の管理職を中心にEQを浸透させ、企業もそこに働く従業員とその家族が幸せを実感できるよう、EQ活用の伝道師として活動してまいりたいと思います!

 

株式会社東レ経営研究所
DE&I共創部 部長
宮原 淳二

 

EQを学びたい方へ

Six Secondsグループは、グローバルで、科学に基づき、実用性の高いEQを世界各国で伝えています。日本オフィスであるシックスセカンズジャパンでは、最先端のEQの情報を日本語で発信するほか、Six Seconds国際認定資格セミナーの国内開催を行い、資格を持ち日本各地で活躍するEQチェンジエージェントと共に日本全国へEQを届けております。