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エモーショナルシンキングというアプローチ

by : EQチェンジエージェント|ギビングツリーパートナーズ株式会社  | 

2020年9月10日 | 

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情報を集め、ロジカルに整理して因果関係を捉え、あるべき方向に間違いのない策を打ち出していく。とてもスマートに仕事が進んでいきそうなイメージが浮かんできます。でも、そんな話をしている相手が気に入らないからNOを出す。ありがちな話です。

理屈っぽく考えるとおざなりになってしまう感情とか心という部分は、人として避けては通れないところ。であれば、わたしたちはもっと「感情」があることに向き合い、エモーショナルシンキングでコミュニケーションや行動にうまく活かしていくべきだと思います。

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Six Seconds国際認定資格を取得し、EQチェンジエージェントとしてEQを活用し活躍されているギビングツリーパートナーズ株式会社 代表取締役 中川繁勝氏より、EQコラムをお届けいたします。


 

結局、人は感情で決めている

こんな時代だからこそ、ロジカル(論理的)に考えるだけではなく、エモーショナル(感情的)に考える必要が高まっているのではないでしょうか。

私は研修講師として多くの企業で「ロジカルシンキング」に類する研修を実施しています。基本的にビジネスの多くのシーンにおいて「ロジカルに考える」というスキルは必要不可欠であり、これを欠いていると適切な情報整理や意思決定に支障をきたします。ですから、多くの企業が新入社員研修においてロジカルシンキングを研修項目に加え、早いうちにこれを習得させようとしています。

ところが、ロジカルに考えることができたとしても優秀なビジネスパーソンにはなれません。これは多くのEQ学習者ならばわかっていることと思います。

多くの企業で研修をしながら私が訴えているのは、

「結局、人は感情で決めている」

ということ。

情報を集め、ロジカルに整理して因果関係を捉え、あるべき方向に間違いのない策を打ち出していく。とてもスマートに仕事が進んでいきそうなイメージが浮かんできます。でも、そんな話をしている相手が気に入らないからNOを出す。ありがちな話です。

 

気持ちを考慮した結果の行動がA氏の心にOKを出させた

過去にこんな話がありました。

ある会社で顧客向けのシステム更新プロジェクトが立ち上がりました。既存の古いシステムを、最新の技術を活用して将来の拡張性や発展も見越した新しいシステムにしようというのです。顧客の今後のビジネスの発展を考えれば、それは悪くない提案でした。

ところが顧客企業の重役のA氏が反旗を翻します。プロジェクトメンバーは必死に説得を続けました。成功事例や将来のシミュレーションを提示するなどして、その重役に首を縦に振ってもらおうと努力をしました。それでも重役の反応は冷たく「あなた方に何がわかる?」「そんな簡単なものじゃない!」と抵抗を続けるのです。

「なんて素直じゃないんだ。オレたちの何が悪いんだ。何が足りないんだ」

プロジェクトメンバーは悩みました。

そんなある日、顧客の担当者との雑談の中でこんな言葉が聞こえてきたのです。

「今のシステムは、Aさんがシステム部長だった頃に導入したんだけどね…」

その言葉でプロジェクトメンバーは気づいたのです。いま自分たちが提案している内容は、「A氏が旗を振って導入したシステム」を入れ替える提案だということに。そのシステム開発はA氏が熱意を持って取り組んだ仕事の一つだったのでしょう。それがその後の会社の発展を支えたのでしょう。そのシステムがここまで稼働できているというのは、開発からメンテナンスにかけても多くの苦労があったに違いありません。A氏はそのすべてを知っている人だったのです。苦労を共にした部下や同僚たちとの大事な仕事のひとつだったのかもしれません。

それを無き物にして新しいシステムに入れ替えよう、などとよそ者が言うのですから、心中穏やかでいられるはずがありません。A氏は頭ではわかっていたものの、すんなりと受け入れられなかったし、想いのこもったシステムにダメ出しをして新しいものに入れ替えようとするプロジェクトメンバーを良くは思わなかったのです。A氏の心が出していた答えは「NO」だったのです。

結局、システムは更新されることとなるのですが、開発期間中もA氏から応援されることはありませんでした。常にプロジェクトメンバーからの提案に難癖をつけてくる状況で、A氏はまさに敵対勢力のようでした。

それでもプロジェクトメンバーはくじけず、とにかく態度と結果で示そうとしました。言葉ではA氏は説得できない。ならば、自分たちもA氏と同じくらい業務とシステムに詳しくなり、A氏が難しいと言っていた部分を必ずやり遂げてみせる意気込みで望みました。果たして、システムは完成し、無事に稼働する運びとなりました。

最後の日、A氏はプロジェクトリーダーの手を両手でしっかりと握り、言ったのです。

「ありがとう。君たちにお願いしてよかった。正直なところ、難しくて途中で投げ出すんじゃないかと思っていた。本気でうまくいかないんじゃないかと思っていた。自分たちも相当苦労したんだ。君たちも大変だったろうが、やりきってくれた。うちの社員以上に取り組んでくれた。本当にありがとう。」

プロジェクトメンバーがA氏の気持ちを考慮した結果の行動がA氏の心にOKを出させたのです。そして、最後の日に、A氏が心を開いて話してくれたのです。

 

エモーショナルシンキングとは

この出来事に限らず、世の中の様々なところで正論を理解はできても、心が納得できないことは多くあります。なのに私達は正論を振りかざし、相手を論破しようとしてしまう。

でも人対人である以上、相手の気持ちを考慮に入れて考えを進めることが必要です。どんな時も、相手の立場に立って「考える」だけではなく「感じる」ことが必要なのだと思います。

そのように相手の気持ちを考慮して考えを進めていくことを、私は「エモーショナルシンキング」と称しました。

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去る8月29日、総理が辞任会見をしました。記者会見で質問をする記者たちは皆、総理のこれまでの労をねぎらう言葉もなく根掘り葉掘り聞き出す質問で本音を探ろうとしていました。果たしてそれで総理は本音を話すでしょうか。

本音の扉を開く鍵は明確で鋭い質問にあるのではなく、共感やねぎらいの言葉にあったのではないか、と私は見ていました。そういえば刑事ドラマの取り調べで刑事さんが容疑者にかける言葉は「故郷のおふくろさんは…」というような人の温かみや優しさに触れるようなアプローチですよね。

 
理屈っぽく考えるとおざなりになってしまう感情とか心という部分は、人として避けては通れないところ。であれば、わたしたちはもっと「感情」があることに向き合い、エモーショナルシンキングでコミュニケーションや行動にうまく活かしていくべきだと思います。

 

EQチェンジエージェント

ギビングツリーパートナーズ株式会社 代表取締役 中川繁勝