EQ articles

変化の時代を生き抜くために:ポジティブチェンジの礎

by : Six Seconds米国本部  | 

2021年11月24日 | 

, , , , , , , , ,

語り継がれる、ヌエバ・スクールとシックスセカンズの創設者であるカレン・マッカーン氏のスピーチ。EQ理論が提唱されてから30年。前例のない時代を生きる現代の人々に、EQがあらためて注目される理由がこのスピーチからわかります。

・・・

米国本部が2011年に発表した記事「Emotional Intelligence: A Key to Positive Change」の日本語翻訳です。画像をクリックすると米国本部の原文記事をお読みいただけます。


このスピーチでは、シックスセカンズの会長であるカレン・マッカーン氏が、感情知能(EQ:エモーショナルインテリジェンス)を教えることの定義、プロセス、目的について話しています。


カレンは、才能ある子供たちのために、学力と感情的な発達を統合するためのラボスクールとして、1967年に後にEQの学校とも言われる「ヌエバ・スクール」を設立しました(このスクールは、優秀な教育機関へ送られる「ブルーリボン賞」を2度受賞したことでも有名です)。その成功を受けて、1978年には先駆的なEQを育むためのカリキュラム「セルフサイエンス」を出版しました。そして1995年に出版されたダニエル・ゴールマンの本(EQこころの知能指数)の第15章で、先進的な情動教育の展開する学校として紹介されています。カレンは1997年にシックスセカンズの創設委員長に就任し、2009年には、EQスキルを世界中に広めるためのコミットメントの一環として、シックスセカンズのラボスクールである「シナプス・スクール」の立ち上げを支援しています。

EQが、私たちの生活の中で果たす重要な役割や、学校での役割の拡大についてお話しする機会を得られたことを嬉しく思います。今回のお話の目的は三つあります。

① EQを育むことは、基本的な教育課程であるという私の信念を皆さまにお伝えする。
② EQを教えることを定義し、そのためのプログラムを説明する。
③ 皆さまが触媒となり、提唱者となり、変革の担い手となり、推進力となり、EQを教えるためのリソースになるように励ます。

なぜ今、教育現場でEQの必要性が叫ばれているのか

エンゲージメント、いじめ、暴力、ドラッグ、自殺など、子供達や家庭、教育現場にまつわる統計を見るたびに、私たちは変化を生み出さねばならないこと、そのための行動を起こさねばならないこと、そして生徒、その家族、先生たちの生活、さらに潜在的には私たちの社会をも劇的に変えるような体系的な解決策が必要であることを思い出させてくれます。

私は、このような統計データに立ち向かうためには、現在「感情知能(EQ:エモーショナルインテリジェンス)」と呼ばれているものが不可欠であると常に信じてきました(当時はEQという概念では捉えられていませんでしたが)。EQを身につけることは、これらのリスクを軽減するのに役立ちます。そして、生徒たちが人生の中でポジティブで生産的な結果が得られる選択をするためのツールやスキルを身につけることができるようになります。
生徒たちが逆境に見舞われた時、EQスキルは、彼らに逆境から立ち上がるための力を与えてくれます。そしてトラブルの渦の中から彼らを救い出してくれるのです。

生徒や教師が健全な人生を歩むには、EQが不可欠です。

私の使命、情熱、コミットメント、そしてノーブルゴール(自分の道しるべとなる目標)は、すべての人が健全な人生を送れるように、自分自身と人々が “人間 “になるためのサポートをすることです。

30年以上前、この衝動に駆られて、私は新しいタイプの学校を作りました。直感的に、「教育」という概念を、社会性と感情の領域まで含めて再定義することが可能であることがわかったのです。

60年代には、「ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメント」が注目されていました。私たちは、自分自身と他者を理解する方法を模索していました。私たちは理想主義に触発されていました。より思いやりのある、愛に満ちた、包括的な世界、そして人々が健全に生きていくための力を与えられた世界を願っていました。

そのような状況の中で、私は教育の概念を再定義し、知性の領域だけでなく、社会的・感情的な領域も含めることが重要だと信じていました。

当時は「感情知能(EQ)」なんて誰も話題にしていませんでした。EQをベースにした学校のイメージもありませんでした。そのような学校がどのように機能するのか、もです。

そのビジョンを探り、生徒たちの生活と地域社会の未来に変化をもたらす教育環境を構想するために、私たちのビジョンに興味を持っている地域のリーダーたち数名を集めました。私たちは、新しいタイプの学校を定義するために、2年の歳月をかけて会合を開きました。

その中で、ノーベル賞受賞者たちとの諮問委員会の一日が特に印象的でした。委員会メンバーの役割は、自分たちにとって理想的な学校環境とは何かを思い描くことでした。学校環境がどのようなものだったのか、それがどのように見えたか、どのように異なっていたか、彼らがどのように時間を費やしたか、そして彼らが何を学んだかについて話し合いました。

 

ノーベル賞受賞者たちが考える理想の学校

それは素晴らしい出会いでした。メンバーたちは学校での経験がしばしば困難なものであったという共通の思いを持っていました。彼らは孤独感を感じ、他者との「違い」が彼らの友人関係や、社会的なスキル、感情的なスキルの発達に影響を与えていたのです。彼らが受けた教育には何かが欠けていたのです。彼らは、「社会的・情動的学習(SEL:Social and Emotional Learning)」にもっと時間をかけていれば、成長していく中での経験をより豊かにすることができただろうし、知的な領域への探求から遠ざかることもなかっただろうと考えていました。

彼らは、それらのスキルを持つこと、つまり高いレベルのEQを持つことは、彼らの生活、家族、地域社会を豊かにするだろうと信じていました。

感情リテラシー」は人が生きていくうえでの「基本」であり、もしかしたら「教育の基本」であるかもしれません。これは、「本質に立ち返る」際の重要なポイントです 。この分野に時間とエネルギーをかけても、学業成績が低下することはないということです。

EQは学業成績を向上させます。昨年、多くの本が出版され、新聞や雑誌にも記事が掲載され、職場でのEQをサポートするための新しい産業まで生まれました。これらのスキルが必要不可欠であることは、広く合意されているようです。もし教育界が同じレベルのコミットメントを持つ日が訪れたなら、それは素晴らしい日になるでしょう。

私が考える最も学術的に「成功した」人々であるノーベル賞受賞者たちは、一様に、「社会的・情動的学習(SEL)」と認知的学習がお互いを補完し合うことに同意してくれました。

これらの話し合いを経て、1967年にヌエバ・スクールを立ち上げました。生徒たちはもちろん、家庭や地域社会を含めた情緒的な発達を知的発達と同じくらい重要なものとして捉えたらどうなるかという実験だったのです。

 

学業の卓越性とEQは共に機能し合う

私たちが意図したのは、学業の卓越性を約束し、最新の教育研究と教育現場のベストプラクティスを統合し、感情的、社会的な知性が学業の追求と同じくらい中心となるようなモデルを作ることでした。そこでは、人間の発達のあらゆる側面を含む達成度を再定義しました。

そして、それは成功しました。

この概念は、私たちの学校で機能しただけでなく、社会にも浸透し始めました。社会全体に浸透するこの動きは、多くの自己啓発本が書かれたり、大人のためのワークショップやプログラムが増えたり、あらゆる形でセラピーが復活したりしたことで明らかになりました。しかし、焦点はまだ主に大人に当てられ、教育ではなく大人への介入に焦点が当てられていました。

つまり、このような成長を求める多くの大人がいる一方で、他方では、幼少期にこのようなスキルを学ぶ機会が少ないまま成長していく子供たちを抱えるという新世代が到来していたのです。特に、核家族のような、かつてこのようなスキルを教えていた環境が崩壊してしまった状況を考えればなおさらです。

この必要性を認識した私は、「セルフサイエンス」と呼ぶEQに焦点を当てたカリキュラムを作成しました。セルフサイエンスは、生徒たちのEQを高めるためのカリキュラムです。

カリキュラムの基本は、下記の4つです。

⑴ 私たちの思考、感情、行動の間の関係を見るための自己探索、内省
⑵ 私たちの反応のパターンを特定し、認識する
⑶ 私たちのすべてのパターン、すべての選択には、自分自身や他者にとってのコストとベネフィットがあることを認識する
⑷ 自分のパターンに囚われず、選択可能な選択肢を常に模索する

プログラムを開発していくうちに、学校のコミュニティや生徒の変化を目の当たりにすることができ、とても刺激的でした。保護者の方たちも自分たちのためのセルフサイエンスのクラスを求めるようになりました。

 

ダニエル・ゴールマンが伝えた感情知能(EQ)の教育モデル

プログラムを見に来た方たちから、まさにグローバルな現代を生きるためのエモーショナルスキルやコンピテンシーを育んでいるという感想をいただきました。大人になった私たちが「学校にいた時に身につけていたらよかった」と思うようなスキルです。

毎週の見学会で最も多かったコメントは、「こんな学校に通えたらいいのになぁ、自分の町にもこんな学校があったらいいのになぁ」というものでした。ある時は、毎年2000人以上の見学者が訪れていました。数年前、ベストセラー『EQこころの知能指数』の著者であるダニエル・ゴールマン氏もその一人で、彼の訪問の結果、当校のセルフサイエンス・プログラムは世界的に知られるようになりました。ゴールマン氏はこのプログラムを「感情知能(EQ)の教育モデル」と呼び、彼の本を読まれた方はご存知でしょうが、彼はこの分野に1章を割いています。(第15章:情動教育のかたち)

この本の人気の高さには感激しましたが、TIME誌の一面に「EQ」が掲載されているのを見たときは、さらに勇気づけられました。ヒューマニズムの復活を感じ、感情を備えた自己の重要性を理解したことは、「自分自身や人々が”人間”になるための手助けをする」という私のノーブルゴール(自分の道しるべとなる目標)に向かって一歩前進したことになりました。

短期的な介入で苦労するのではなく、教育を通じて熟達したEQが今日の多くの問題の予防的解決策として不可欠であることがわかってきました。

 

今こそ子供たちの状況を変えるとき

私たちは、先ほどお見せした壊滅的な統計に影響を与えることができる段階に来ています(いじめ、自殺、ドラッグ、退学などのデータ)。私たちは今、「感情リテラシー」が解決策の重要な第一歩であり、教え、育むことのできるスキルであるとわかっているのです。

・昨今の子供を取り巻く不幸な統計データを変えるためには、何が必要でしょうか?
・私たちの学校でそれを教えるためには何が必要でしょうか?
・すべての人が “人間 “になるのを支援するためには私たちはどうすればいいのでしょうか?
・教育の定義を「感情リテラシー」を含むまで拡大するためには何が必要でしょうか?

イメージは、コミットメントを高めることに役立ちます。そこで、私がこの活動へのコミットメントを高く維持しておくために使っているイメージを紹介したいと思います。

私は氷山の比喩が好きです。氷山の約15%は目に見えていて、85%は目に見えません。見えない、未知、未確認な世界です。

“私は氷山を自分自身だと考えています。私が誰であるかの15%は目に見えています – 私にも他の人にも。そして85%は、私が知ろうと意図しない限り、謎のままです。

私たちは15%の中で人生の大半を生きています。15%には、私たちが何を持っているか、どこに住んでいるか、何をしているか、誰を知っているか、人からどう思われているか、何のために努力しているか、何を蓄積しているか、誰に感動を与えようとしているか、などが含まれています。心理学的な議論は今日はしませんが、私はその15%を “自我 “と呼んでいます。それは、ほとんどの時間、ほとんどの人が生きている場所です。それは水面上にある私についてです。

残りの85%にあたる生態システム(エコシステム)は、私たちの「全体性」にあたります。それは他の人とのかかわり方、全体のありかた、人間の中心に位置づけられるものなどです。それは包括的に存在します。それは私たちの本質、「人間(ヒューマンビーイング)」になることに関わっています。そして、この85%では、愛を基盤とするパワー、関係、情熱、充実感が存在します。そして、一方で「自立」は不可欠なことであり、他方で「相互依存」はより良い世界となるための基盤となります。あなたという氷山は、他のすべての氷山が共有している海に浮かんでいることを忘れないでください。

私たちは皆、私たちがどのように成長してきたか、世界とどのように関わるかという自己の根本を作るエゴシステムの中で生きています。しかし、自分自身と他者についてより深い理解を持つようになると、そして感情について深く探索するようになると、エゴシステムから生態システム(エコシステム)へと移行できるようになります。それには生涯を通じた学習がカギとなります。私たちは毎日意図的に85%の生態システムに意識を向けることでこの移行を実現することができると考えています。

 

大人も子供も「自分」を見つけるための学び

お手元の一枚の紙にまず2つの列を作ってもらいたいと思います。そして、左側には「エゴシステム」または「私」、右側には「エコシステム」または「私たち」とタイトルを付けてください。

これらの概念を説明する形容詞を2つの列に書きましょう。

そして、あなたのリストをお隣の人と共有してください。そして自由に感じ、あなたのリストを広げ、アイディアを共有してください。

私が皆さんに理解してほしいのは、感情リテラシー」を身につけることで、氷山の全体を知ることができるということです。エゴシステムの罠から逃れ、全体性に向かって移動できるということです。

私たちは誰しも、信念体系や思考パターン、感情や行動を変えようとするとき、自分自身に対してコミットメントすることが必要であることを知っています。実際、この変容には、かなりのエネルギーを必要とします。

私自身、自分の人生の85%を知り、理解し、生きることにコミットしています。それは生涯の課題でもあります。そのため、毎日、このコミットメントから逃げ出さず、思い出さなければなりません。そして毎日、それに取り組まなければなりません – 何かをしなければならないのです。

皆さんも、私のスピーチの間、少しでよいので、自分のコミットメントについて考えてみてください。特に、生涯にわたる学習者としての自分、生徒たち、そしてEQを教育システムへの基礎とすることへのコミットメントについて考えてみてください。皆さんのコミットメントは後に続く社会にとってどのような遺産となるのでしょうか?またそれは氷山の全体につながるのでしょうか?

 

感情知能(EQ:エモーショナル・インテリジェンス)とは?

感情知能(EQ)とは、私たちがどのように考え、感じ、行動するかを理解し、形成する方法です。ゴールマン氏はその本の中で説明したように、研究では、EQは、家庭で、仕事で、(趣味や余暇においても!)成功を形作ることを示唆しています。

シックスセカンズでは、EQを3つの基本的な領域(探求領域)に分けています。そして、EQのすべての基本能力は、この構造に適合しています。EQには多くのモデルがありますので、ここでの目的は、これが唯一無二のモデルであると言うことではありません – しかし、私たちはEQについて皆さんがこの複雑な概念を分かりやすく捉え、議論するためのフレームワークを与えているのです。

Know Yourself:知る
・感情をラベリングし、伝えるための言葉を育む – これは「感情リテラシー」の大きな部分です。
・自己認識の構築-これは、自分自身の中で働いている感情を捉えることを含みます。
自己の思考、感情、行動のパターンを認識し、それらのパターンが他の人のみならず自分自身にどのような影響を及ぼすかを認識します。

Choose Yourself:選ぶ
・自己管理/セルフコントロール – 感情のナビゲート、向社会的な行動、責任、信頼性を持って行動することを含みます。
結果を見すえた思考の適用 – 言い換えれば、私たちの選択やパターンのポジティブな影響とネガティブな影響を見て、必要に応じてそれらを選択し直すことです。
内発的なモチベーションを高める。
楽観性を発揮する。

Give Yourself :活かす
共感力の活用 – これは、他の人と交流するときに、それらのすべての優れた “Know yourself:知る “スキルを適用する必要があります。共感は、他の人を理解し、サポートし、育むことを可能にします – 他の人が何を感じているかを感じることによって相互依存を構築します。そして最後に
ノーブルゴール(自分の道しるべとなる目標)にコミットする – 自分を超えて手を伸ばし、より大きな世界に貢献し、奉仕を通じて積極的に貢献する目標です。


シックスセカンズEQモデル

ビジョンの創造

想像してみてください。皆さんは10年後の世界にいます。新聞を手に取ると、心がほっこりするような見出しが出てきました。それは、社会が純粋に「氷山」を探求しようという動きが確認できる見出しです。その「見出し」は何と言っているのでしょうか?

少し時間をおいて、皆さんの「見出し」を隣の方と共有してみてください。

さて、もしその見出しを現実のものとするとしたら、明日、あるいは今すぐにでも、その方向に進むために私たちは何をする必要があるでしょうか?

私の見出しは「子供たちは学校が大好き」です。だから今日は、子供たちが人間としての全体性を感じられる学校を共創するために何ができるかを皆さまにお話ししました。そして明日、私はさらに一歩を踏み出すことを約束します。これらのステップは、私のノーブルゴール(自分の道しるべとなる目標)の一部でもあります。なぜなら、EQを高め、子供たちが学校を好きになるように支援することは、自分自身や他の人が「人間」になるためのサポートの一部だからです。

さて、皆さんは何をしますか?

 

セルフサイエンス‐EQを育む教育

次の問いは、「ではどうすればそれらのスキルを学校で育むことができるのか?」です。
セルフサイエンスは感情面と認知面の両方に焦点を合わせる学習です。これらは非常にシンプルな仮説に基づいています。

・感情のない思考は存在しない – 思考のない感情は存在しない。
・皆さんが経験することをより意識すればするほど、より多くの学習が可能になります。
・自己認識が深まれば深まるほど、自分自身にも他人にもポジティブに対応できる可能性が高くなります。

セルフサイエンスは、経験、議論、内省を通して、尊敬、責任、レジリエンスに基づいた学習コミュニティの構築を支援します。問題がエスカレートする前に対処することができるコミュニティです。このカリキュラムは、予防に焦点を当て、生徒が毎日使うツールやスキルを教えることに焦点を当てています。

セルフサイエンスの中心は、思考、感情、行動が相互に関連していることを学ぶことです。最終的にそれらを切り離すことができません。

私たちがセルフサイエンスを開発したとき、私たちは特定のカリキュラムや学校全体の文化についても触れることを求めました。私たちは、セルフサイエンスの規範、スキル、ツールを学校コミュニティ全体に浸透させました。例えば、生徒間や生徒と教師間における「お互いの話し方」についてもどのようにあるべきか、お互いが合意するようカリキュラム開発において留意しました。

言葉はとても重要な分野です。私たちはセルフサイエンス・プログラムの中で多くのルールを作らないようにしましたが、言葉はとても強力なので、 “相手を傷つけるような発言は禁止 “というルールだけは作りました。

人を傷つけるような発言(キラー・ステートメント)を発しない」というのは、相手の本質的な存在を否定しないことを意味します。相手がきまり悪くなるような言葉、恥辱ととらえる言葉、見下す言葉、「バカ」「オタク」のような言葉、さらには「黙れ」のような言葉まで–それらの言葉は相手を傷つけてしまうからです。

また、声のトーンや表情にもキラー性がありますね。そして、私たちは悲しいかな、この件に関しては優秀で、 “キラー・ステートメント”のレパートリーが実に豊富です。

子供の頃に覚えているキラー・ステートメントをノートに書き留めてみてください。
また、大人になってから大切な人からのキラー・ステートメントについても思い出してみてください。
そして皆さまが実際に発したことのあるキラー・ステートメントについても。

 

学校を舞台とした社会的・情動的学習(SEL:Social and Emotional Learning)

ヌエバでは、生徒たちの毎日の生活の中に「セルフサイエンス」が取り入れられました。教師たちは、生徒たちの感情を引き出す質問ができるよう自らも励みました。また、生徒たちが結果を見すえて思考することができ、より大きなコミュニティにおける対人関係の中で自分自身を認識できるようカリキュラムが組まれました。学校全体でこのような授業が行われたことで、セルフサイエンスの「コース」の部分がさらに強力になったのでした。

セルフサイエンスのための生徒への関わり方は、様々な手法がとれます。大事なポイントは、生徒が学校で体験していることすべてが、セルフサイエンスの対象となるということです。

どのような授業にもセルフサイエンスが織り込まれているという例を挙げてみましょう。

【ペン字の練習】
ある先生は手書きを教えることを求められていました。そこで彼女は EQにまつわる名言を用いました。 例えば “見よ 亀を見よ 首を突き出してこそ進歩する” (勇気をもって一歩前に進め、を意味する言葉)などです。

【社会科の授業】
皆が興味を向ける話、怒り、コミュニティ、孤独、恐怖、被害者、ヒーロー、勇気、共有などにかかわるものです。これらの日々起こる出来事に対して、私たちは何ができるのかを考えます。

【学校の規律・規則】
自分たちは何を感じ、また、どのように感じたいかについて考えます。そして理想の教室/生徒/教師となるために何を付け加えたいかについて議論します。

【文学】
感情、動機、ロールモデルなどについての質問を投げかけます。

【数学】
黄金比のあるいは任意の図形をメタファーとして、間違うということとはどういうことか、数学的な意味とは何かについて考えます。

【日常会話の中の質問】
研究によると、今日の教室や教科書で出題される質問の75%は、低次の暗記についてのものであり、もし教師がより広範な問題について質問をするならば、生徒は答えるためにより多くの知識や経験を用いることができます。

この「織り(weaving)」の他にも、それぞれの時間と空間の中で教えるのに最適な技術があります。それは、クラスの集合時間であってもいいですし、自習室の中の特定の時間でもいいでしょう。このクラスでは、生徒たちは安全な環境の中でEQスキルを身につけ、それを実践します。

セルフサイエンスの授業には2つの形式があります。1つは、生徒たちが現在抱える、自分自身に対する悩みや人間関係の悩みを持ち出し、グループ内でアイディアや解決策を生み出すプロセス「オープン・アジェンダ・セッション」です。

もう一つのセルフサイエンスの授業は、ゲームや活動のような共有体験を行い、その後に報告会を行います。「デブリーフィング(振り返り)」は、一つの経験をより大きな学びへと移すのに役立つので、とても重要です。デブリーフィングは、自由形式の質問の討論、日記の書き方、アートプロジェクト、寸劇、(今日皆さまにやってもらったような)考えのペアシェアリングなどがあります。重要なのは、認知的な質問と感情的な質問の両方を投げかけることです。”それはどのように感じましたか?”のように “何をしたか?”だけでなく、”その経験について何を考え、その経験から何を自分に伝えましたか?”と問いかけることです。

目標は、生徒たちが日常生活で使える、考えるためのツールを生み出すことです。

セルフサイエンスの最初の課題の一つは、生徒たちに自分の感情やアイディアについて話すための「ことば」を与えることです。感情に関するリテラシーは社会では取りざたされません。しかし、生徒たちはこのツールを必要としています。そして、彼らが正確にかつ慎重に自分の思考、感情、行動について話すことができるようになると、自分のパターンやそのパターンがもたらす正と負の両面についての影響を探索できるようになります。そして、生徒たちはより良い、より思慮深い選択を行うことができるようになります。これはあらゆる学びに通ずる重要なポイントであると心から思います。目標は、どのような状況においても、自らの力で良い選択ができることです。

 

EQを育む方法

これでお約束の3つのポイントのうち2つをお話ししました。そしてもうすぐ時間切れとなってしまいます。しかし、この最後の部分はとても重要です。繰り返しになりますが、今日の私の最後の目標は、皆さんがEQ普及の触媒となり、提唱者となり、変化をもたらし、推進力となり、EQを教えるためのリソースとなることを奨励することです。

皆さまはすでにこの役割を果たすための道を歩んでいることを私は知っています。皆さんは、変化を生み出し、教師や生徒、そしてお互いのためのサポートネットワークを提供するための素敵な機会を、すでに多くの人達より得ています。

今日お話した活動を始めるためのツールとなる、いくつかの重要なポイントをお話しします。

・EQは重要であり、教える(学ぶ)ことができます。
・EQは成功の中心を支えています。
・人間の潜在能力に到達するためには、私たちは生態系(エコシステム)-氷山の水面下にある85%-へアクセスする必要があります。
・教育者たちはEQが未開発な社会状況に毎日直面しています – カウンセラーや教師は毎日私たちの社会におけるEQの欠如がもたらす様々な問題に直面しています。しかしそれらに介入することでそれらの問題は解消に向かうでしょう。
・私たちがシステムを変えようとしているのであれば、予防意識は不可欠なものとなります。
・皆さんは、基本的な「感情的リテラシー」を育む予防プログラムを開始し、定着させる人となってください。
・カウンセリングは、感情的なスキルとツールがすべての人の通常の教育の一部になったときに、より効果的に機能します。

皆さまの教育機関で「社会的・情動的学習(SEL:Social and Emotional Learning)」レベルを高めるための行動を取ることについて、皆さま一人ひとりがコミットしていただくことを願います。

より良い未来を創るためのお仕事をしてくださっていることに改めて感謝し、私もチームも皆さんを応援しています。

 

EQは、前例のない時代を生きる子供たちの、すべての学びの基礎能力です。

「感情知能(EQ):それはポジティブチェンジの礎石です。生徒たちが逆境に見舞われた時、EQスキルは、彼らに逆境から立ち上がるための力を与えてくれます。そしてトラブルの渦の中から彼らを救い出してくれるのです。生徒や教師が健全な人生を歩むには、EQが不可欠です。」(カレン)

EQを学びたい方へ

Six Secondsグループは、グローバルで、科学に基づき、実用性の高いEQを世界各国で伝えています。日本オフィスであるシックスセカンズジャパンでは、最先端のEQの情報を日本語で発信するほか、Six Seconds国際認定資格セミナーの国内開催を行い、資格を持ち日本各地で活躍するEQチェンジエージェントと共に日本全国へEQを届けております。

▼世界のEQのトレンドがわかる米国本部の翻訳記事は、6SJメールレターのご登録でタイムリーにお読み頂けます。メールアドレスをご記入ください。