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セルフ・サイエンスとは?学校におけるEQについて

by : Six Seconds本部President Anabel Jensen  | 

2019年4月17日 | 

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Six Secondsの前身であり、米国教育省が優秀な学校に授与するブルー・リボン賞を2回受賞、現在も”EQといえば”でおなじみのベストセラー・ダニエル・ゴールマン著「EQ~こころの知能指数~」でも情動教育の随一の先進校として紹介されているヌエバ・スクール。同校のExecutive Directorであり、EQ教育の世界屈指のパイオニアである、Six Seconds President(理事長)Anabel Jensenによる記事をお届けします。2014年に書かれた記事ですが、現在の日本の教育へ思いを馳せますと、非常に読み応えのある記事となっています。

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米国本部公式ウェブサイト2014年5月24日「What is Self-Science? Emotional Intelligence in the Classroom」の日本語翻訳です。
画像をクリックすると原文記事をお読みいただけます

セルフ・サイエンス

私が初めて「セルフ・サイエンス」という言葉を聞いたのは、34年前。まさかその新しい言葉が、私の人生にこんなに大きな影響を与えるなんて、思いもしませんでした。

1979年のこと。こんなことが起こっていた頃でした。

  • ・イギリスで初の女性大統領マーガレット・サッチャーが誕生しました
  • ・ソニーがウォークマンを1台200ドルで発売しました
  • ・アメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所で原子力事故が発生しました
  • ・サハラ砂漠に30分間、雪が降りました!
  • ・中国で、人口爆発をコントロールするための一人っ子政策が施行されました

もともと”セルフ・サイエンス”というのを私は、科学、テクノロジー、健康概念、能力、姿勢などの重要性について言及しているものだと思っていました。こういったことが子供たちに、人生で非常に重要な教えをもたらしてくれるかもしれないと、学校では熱心に、献身的に、子供たちに教えられる必要がありました。

ですが、セルフ・サイエンスというのは、なんと、恐竜や遺伝やDNAや更に哲学や、そういった科学のカリキュラムにあるような勉強のことを言っているのではなかったのです。セルフ・サイエンスとは私たちが人生の中で経験する一瞬一瞬の中にある、私たちの内なる世界のことでした。「セルフ・サイエンサー(セルフ・サイエンスを実践する人)」であるには、私たちが誰で、何者で、そして、何をしようとしているのか、を知ることが非常に重要です。

ベイ・エリアにある私立校(ヌエバスクール)の新しい心理学者として、私はセルフ・サイエンスのクラスを訪れ、先生のクラスの見学に招待されました。Karen-Stone McCown(以下、カレン)。私は今でも彼女の最初のクラスをよく覚えてます。「帽子の中の恐れ」という授業でした。

カレンはまず恐れの定義からはじめ、彼女が「私は暗闇が怖いのよ」と話すと、6年生たちが「暗闇が怖いなんて言うにはもう十分大人でしょ!」と笑い出しました。

カレンは生徒たちに、「誰かにとって怖いかもしれないもの」をいくつか出してもらうよう促しました。私は蛇と言ってみましたが、何人かの女の子はクスクス笑いつつ賛同してくれて、男の子たちは「いやー怖くないよ」と言いました。

すると1人の女の子が、「新しい奥さんができた父親と暮らすのが怖いんだ」と話したのです。それはたしかに怖いですよね。

カレンはそのあとカードを配り、生徒たちに自分たちの持つ恐れについて、絵か名前を書いてみて、と言いました。でも彼らは取り組みました。約3分間、ほとんど沈黙の中、ペンを持つ手だけが忙しく動いていました。

そして生徒たちに、恐れが書かれたカードを、マジシャンの帽子のような、大きな黒い帽子の中に入れてみて、とお願いしました。「この帽子には特殊なすごい力があってね(子供たちはまた変なことを言っているよという表情をして)、”恐れ”を小さくしてくれるのよ!」と言いました。ここでカレンが、”恐れがなくなる”とは言わなかったのはポイントです。

生徒たちは、たくさんのカードが入った帽子の中から1枚のカードを引いて、いよいよ面白おかしく参加を始めました。恐れをそれぞれに解釈して、みんなでその恐れを小さくしたり、コントロールしたり、恐れに打ち勝つ方法をブレインストーミングをして話しました。

 

感情を反芻(はんすう)する

生徒たちははじめ、”誰かにとっての恐れ”を帽子から取り出したわけですが、6年生の彼らにとってはその方が恥ずかしさもなく参加しやすく、その問題に対して少なくとも1つの対処法を思いつけたわけです。

たとえば、アーサーが「木に囲まれた家に住んでいるのに、夜に見知らぬ車が家の前の道路を走ってきて、家に入ってきたらすごく怖い」と書かれたカードを読むと、他の生徒たちが同じストーリーに相槌を打ち、それに対してどうしたらいいかアイディアを提案します。ある子は音楽を流していればそういった家の変な音は聞こえなくなるんじゃない?と提案しました。カレンが最初にした「暗闇が怖い」という話を生徒たちはバカにしていましたが、このときにはもう思慮深く、慈悲深く、そんな恐れにも向き合っていました。

他の生徒は「小さな灯りをつけたままにしておけば、目が覚めてもちゃんと見えて何が起こっているかわかるんじゃない?」と薦め、また別の生徒は犬を飼ってみたらどう?と言いました。彼女は飼っている犬がすごく献身的で、何も起こらないように守ってくれるので、毎日ぐっすり眠れていると話しました。

授業が進むにつれて、最初の寒々しい雰囲気から、クスクス笑う空気に変わっていったのが興味深かったです。誰かは、夜中に自分に向けてジョークでも言ったら少しは気分が良くなるんじゃない?とも提案しました。

ある女の子が、「前は自分が恐れを感じることについて、いつもお姉ちゃんが”成長しなさい”と言うので、ひとりぼっちに感じていました。でも今は、それは違うとわかったので、出てきたいくつかの対処法を試してみたいと思います!」と話しました。

とりわけ洞察力の高いある生徒は、「自分たちの恐れに名前を付けていったら、恐れが小さくなっていくんじゃないかな?」と言いました。その後何年も経った後、脳科学が、感情に名前を付けることによって偏桃体(情動を司る脳の部位)を落ち着けることができる、ということを明らかにしました。すごい、興味深いと思いません?

カレンは最後に、恐れについてまとめたあと、次の週までに、具体的な恐れに対して何ができるか、アクションを明言してそれをレポートしてくれる生徒を2~3人募りました。次の週の授業も参加して、どんな変化があったか見学したかったほどです。

 

生徒たちはSELのクラスを心待ちにしています

SELとは、Social Emotional Learning;社会的・情動的学習のことです。セルフ・サイエンスの授業は大人気です。ヌエバ・スクールで長きにわたる生徒たちへの好きな授業についてのアンケートデータによると、80%の卒業生がセルフ・サイエンスの授業が好きだと答えたそうです。更に、シナプス・スクールのセルフ・サイエンスのスペシャリスト、Marsha Rideoutも繰り返し、それはシナプス・スクールでも同じだと言います。

ここに、セルフ・サイエンスを学ぶ目的をいくつか挙げてみましょう。

  • ・強みと弱みの両方を見出し、受け入れるため
  • ・具体的なニーズや欲求について言葉にしていくため
  • ・グループ活動でのスキルを学び実践するため
  • ・選択とは連続しているものだということを認識するため
  • ・日々の生活における逆境に対して楽観性を実践するため
  • ・目標を定め、夢を叶えるため

生徒たちは姿勢に加え、素晴らしい脳科的なデータももたらしてくれました。例えば、

  • ・笑いはストレスホルモンのレベルを下げ、免疫システムを強化する
  • ・感情は、一般的な風邪と同じように伝染する
  • ・平均的な大人は1日に10~15分間笑っていて、平均的な子供は300回以上笑っている
  • ・好きなことをするときにお金を支払われると、クリエイティブ度が落ちてしまう

 

感情的に賢い世界とは?

この最初の授業を見た日からこれまでの間、これほどにまで物事が変化してきたことに、本当に感動しています。カレンと私はいくつかの施設の立ち上げに加わって、その一つがSix Secondsという、世界の感情知能EQを高めていくために寄与する組織でした。直近のゴールは、私の100歳の誕生日(2039年)までに、世界で10億人の人がEQを活用している状態です。きっと達成できると思っています。

私たちはシナプス・スクールという、チェンジメーカーを育成するというミッションを掲げた学校も設立しました。2008年に裏庭の塔の中で5人の子供達からスタートして、翌年には生徒が170人にまで増えました。私たちの目的は、素晴らしい多様な学びの場所で、ブロック全体を受け継ごうというものでした。早期学習センター、高校、教師のための継続学習センター、事務局、親、など…そしていつの日か、シナプス・スクールを世界中で始めることです。

 

変化は私たちひとりひとりの内側から始まる

ですが、私にとって、すべてのことが34年前のあの日に学んだ恐れと比べたら、なんてことないのです。

✔ 恐れは、クリエイティビティに蓋をして、自分の能力に対して信用できなくさせることさえあると学びました。
✔ また、恐れはエアロビクスや瞑想で和らげることができるとわかって、私はエクササイズ好きになりました。
✔ 楽観性がイノベーションや生産性を高めると知って、私は自分のことを回復中の悲観主義者と説明するようになりました。
✔ 脳神経細胞が歳をとっても成長すると聞いて、毎日何か新しいことを学ぼうと努力しています。
✔ 共感には、クリエイティビティ、営業、教育、より良い世界を作る力があるということがわかりました。
✔ 私は毎日意識的に”優しい行動”を心掛けています。
✔ 本質的に、私は恐れのいくつかを克服しました。

もっと重要なのが、自己に関する研究への科学的なアプローチを取ったセルフ・サイエンスそのものに感謝をし始めています。意思決定や問題解決や、自分の人生を生きるためのプロセスとして、セルフ・サイエンスを毎日活用しているからです。

例えば、どんな状況でもまず、私は今何を感じているのか、わかっていることは何か、を考えます。その後、どんな選択ができそうか思い浮かべ、そして最後に、自分のノーブルゴール(a more ethical world/より倫理的な世界)に私を向かわせてくれるような、win-winとなる状況をもたらすような選択をしています。セルフ・サイエンスは評価に始まり、選択肢を広げ、自己実現のための言動を取ります。世界がポジティブに変化していくのを想像してみてください。もし全員が感情を分析して、選択して、行動するその基本さえ実践したら、世界はどうなるでしょう?

Six Seconds本部President Anabel Jensen
訳者:COLORES 廻田彩夏

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