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なぜ、EQを伝え続けるのか 15歳からもらった問い

by : Six Seconds Japan  | 

2026年9月24日 | 

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6月の終わり。まだ夏の暑さが本番を迎える前、シックスセカンズジャパンに一通のメールが届きました。送り主は、品川女子学院高等部1年の生徒さんでした。
学校のCBL(問題解決型学習)で、「感情とコミュニケーションの円滑化」をテーマに研究していること。私たちのWebサイトを通じて、子どもたちへのEQ教育やSELの導入支援に関心を持ったこと。そして、研究の参考にするため、話を聞かせてほしいということが、丁寧な言葉で綴られていました。
CBLは、生徒自身が社会や身近な暮らしの中にある課題を見つけ、仲間と考え、解決に向けて行動する学びです。誰かから与えられた正解を覚えるのではなく、自分たちの問いから一歩を踏み出していく。その探究の過程で、彼女たちは私たちを見つけ、連絡をくれたのでした。
子どもたちのEQを育むSELプログラム「セルフサイエンス」は、シックスセカンズの原点ともいえるものです。そのもととなった教育実践は、ダニエル・ゴールマン著『EQ こころの知能指数』でも紹介されています。だからこそ、高校生が「感情とコミュニケーション」を自分たちの問いとして探究していると知り、私たちも直接その声を聞き、ともに考えたいと思いました。
後日届いた質問資料には、シックスセカンズのEQモデルの成り立ちや、シナプススクールでの実践、年齢による感情の育ちの違いなど、よく調べられた問いが並んでいました。単に「EQとは何ですか」と尋ねるのではなく、学んだことを自分たちの研究にどうつなげるかまで考えていることが伝わってきました。メールの向こうに、6 人で資料を囲み、問いを練ってきた時間が見えるようでした。

青空の下で始まった対話

訪問当日は、青空が気持ちよく広がる、日差しの強い一日でした。校内に案内され、少し待っていると、6人の生徒さんが緊張した面持ちで部屋に入ってきました。迎える私たちにも、実は同じような緊張がありました。
この日、シックスセカンズジャパン代表取締役の勝又が心に決めていたことがあります。それは、「子ども扱いをしない」ことでした。15歳には、15年間生きてきた体験があります。友人との間で言葉に迷ったこと、伝えたかったのに伝わらなかったこと、誰かの一言に救われたこと。そこから感じ、考え、身につけてきた知恵があります。だから、一方的にEQを教えるのではなく、一人の人として向き合い、その人の中にある叡智を信じて対話する。シックスセカンズが大切にする姿勢を、自分自身が体現する時間にしようと考えていました。
とはいえ心の片隅には、「今どきの高校生に『よく分からない』と言われたらどうしよう」という小さな不安もあったそうです。けれど、対話が始まると、その心配はすぐにほどけていきました。

「シナプススクールでは、実際にどのような取り組みをしているのですか」
「どういうことをしたら、コミュニケーションが良くなったという実践例はありますか」

用意された質問は、表面的な情報を確認するものではありませんでした。彼女たちは答えを聞きながら、手元の資料に目を落とし、うなずき、さらに問いを重ねています。私たちも、質問に答えるだけではなく、「なぜ、このテーマに興味を持ったの?」「得たことを高校生活の中でどう活かせそう?」と問い返しました。最初は質問する側と答える側に分かれていたはずの場に、少しずつ別の空気が生まれていきます。インタビューはいつの間にか、互いの経験と考えを持ち寄り、まだ見えてい
ない答えを一緒に探す“探究の時間”へと変わっていました。

感情を整える前に 感情を知る

対話の中で繰り返し語られたのは、EQは感情を抑えたり、いつも前向きでいようとしたりするためのものではない、ということでした。怒りや不安、悲しみも含め、感情は今の自分に何が起きているのかを知らせる大切な情報です。
たとえば、シナプススクールで子ども同士のけんかに出会ったとき、先生はすぐに「けんかはだめ」と止めるのではなく、「どうしたの?」「今、どんな気持ちなの?」と尋ねます。気持ちが少し落ち着いたら、「これからどうしたい?」と問い、子ども自身が次の行動を選べるように寄り添います。
先生が答えを与えるのではなく、子どもの中にある答えが言葉になるのを待つのです。

シックスセカンズのEQモデルは、次の三つの柱で構成されています。

知る(Know yourself):自己認識
選ぶ(Choose yourself):自己管理
活かす(Give Yourself):自己方向づけ

感情に気づくことはゴールではありません。その感情が伝えていることを受け取り、いくつかの選択肢を考え、自分が本当に望む方向へ進む。EQは、日々の小さな場面でそのプロセスを重ねていく力です。
話題は、感情を表す言葉にも広がりました。「やばい」という一語には、うれしい、驚いた、怖い、焦った、感動したなど、いくつもの感情が含まれます。それ自体を否定するのではなく、「その“やばい”は、どんな“やばい”なのだろう」と立ち止まってみる。感情の語彙が増えると、自分の内側をより細やかに捉えられ、自分らしく相手に伝えるための選択肢も増えていきます。
続いて、ある保育園で行われていた実践を紹介しました。職員が出勤したとき、その日の自分に近い表情や感情を示す場所に、自分の名前を置いていく取り組みです。たとえば、いつもより疲れた表情の場所に名前があれば、「今日は少し大変そうだな」と周囲が気づけます。朝は晴れやかな表情の場所にあった名前が、午後には悲しそうな表情の場所へ移っていたら、「何かあった?」と声をかけるきっかけにもなります。
忙しい日々の中では、自分の状態を相手に伝えることは後回しになりがちです。また、今の感情を細やかに言葉で伝えることが難しいときもあります。だからこそ、感情を見える形にし、それをきっかけにお互いの状態を確かめ合う。感情を共有することは、お互いを知り、その時々に合った関わり方を選ぶための入口になるのです。

教える人と教わる人を越えて


気づけば、対話は2時間近くに及んでいました。用意した質問から離れ、「自分たちなら何ができるだろう」とアイデアを出し合う場面も増えていきました。大切な思いを手紙にして届けること、学校の中で感情を共有できる仕掛けをつくること、まずは6人で試してみること。誰かの案に別の誰かの言葉が重なり、ひとつの発想が次の発想を連れてくる。まだ完成形ではないからこそ、いくつもの可能性が見えました。
終わりに感想を尋ねると、ある生徒さんは、「堅すぎない雰囲気だったので、話が頭に入ってきました。自分がそれについてどう思ったかを考えられる余裕があって、よかったです」と話してくれました。別の生徒さんは、「興味深い話をたくさん聞けて楽しかったのと、私たちがこれからやっていきたいことも、少しずつ決まっていった感じがしました」と振り返りました。
そして、一人の生徒さんが勝又に問いかけました。
「EQ が大事なことは分かるんですけど、世の中には大事なことがたくさんあるじゃないですか。なぜ、そんなに長くEQに携わっているんですか」
その問いに、勝又は、芸能マネージャーとして人の才能を支える中で、感情を表現する力や、仲間とともに場をつくる力の大切さに気づき、人の成長や可能性を支える感情知能という考え方に出会ったことを語りました。
シックスセカンズには、“Emotions drive people. People drive performance.”――感情が人を動かし、人が成果を生み出す、という言葉があります。
「私自身、困難な場面や大切なことを決めるとき、何度も感情に背中を押されてきました。だからこそ、一人ひとりが持っている才能や自分らしさを活かすために、EQを使ってほしいと思っています」
高校生にEQを伝えに行ったはずの私たちが、最後には彼女たちから「なぜEQを届けるのか」という根源的な問いを受け取りました。教える人と教わる人が固定されないこと。互いに感じ、考え、問いを持ち帰ること。そこに、私たちが大切にしたい学びの姿があります。

まだ誰も知らない景色へ― AI時代を生きる彼女たちと、EQの可能性

彼女たちが目指しているのは、「感情とコミュニケーションの円滑化」というテーマで探究を深め、校内の代表として大阪で発表することです。私たちとの対話は、その道の途中にある一つの通過点。
ここで交わした言葉も、これからの調査や実践と重なりながら、彼女たちの探究へとつながっていきます。
その先に待つのは、AIがますます身近になり、膨大な情報と多様な価値観の中から、自分で考え、選ぶことが求められる時代です。だからこそ、自分が何を感じているかに気づき、その感情に耳を傾け、自分と相手の双方を大切にする選択を考える力が、これまで以上に必要になるのではないでしょうか。
EQ を届けるとは、知識や正解を手渡すことだけではありません。その人が自分自身と向き合い、自分なりの答えを見つけていくための問いと機会を届けることです。感情を語っても大丈夫だと思える場をつくり、立ち止まって考える時間をともにし、次の一歩を自分で選ぶ力を信じることです。それは学校教育だけでなく、家庭でも、職場でも、人が共に生きるあらゆる場所で変わりません。
この日の対話で交わした言葉が、彼女たちの中でどのような問いへと育ち、その先にどんな景色をひらいていくのでしょう。大阪で自分たちの発見を伝えるその日まで、私たちは彼女たちの歩みにエールを送り続けたいと思います。そしていつか、この日の続きを聞きに、もう一度彼女たちに会いに行きたいと思っています。

 

EQを知る、EQを実践する

Six Secondsグループは、グローバルで、科学に基づき、実用性の高いEQを世界各国で伝えています。日本オフィスであるシックスセカンズジャパンでは、最先端のEQの情報を日本語で発信するほか、Six Seconds国際認定資格セミナーの国内開催を行い、資格を持ち日本各地で活躍するEQチェンジエージェントと共に日本全国へEQを届けております。

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