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若手育成にはオンラインツールと感情を活かせ!

by : EQチェンジエージェント|ギビングツリーパートナーズ株式会社  | 

2020年9月29日 | 

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去る8月20日、シックスセカンズEQチェンジエージェントの一社である株式会社ボディチューン・パートナーズが主催する「がーさすフェスティバル2020夏」に登壇する機会を得た。
私のセッションのタイトルは「テレワーク時代における若手育成~これからの育成側に求められるコアスキルとロジカル×エモーショナルアプローチ~」。その中からいくつかの内容をこの場に共有したい。

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Six Seconds国際認定資格を取得し、EQチェンジエージェントとしてEQを活用し活躍されているギビングツリーパートナーズ株式会社 代表取締役 中川繁勝氏より、EQコラムをお届けいたします。


 

1. 「普通」が変わり始めた

今年の新入社員と私達の普通は違う。2020年がそんな年になると誰が予想しただろう。私達の多くは「今年は違う」「変わった」「ニューノーマル」というような表現を随所で使っている。しかし、この春に入社した新入社員たちにとってはこの春がノーマルなのだ。この春の新入社員研修が普通なのである。

私は講師として今年も3ヶ月以上に渡って新入社員研修に関わってきた。紆余曲折あったが、結局すべてがオンライン研修となった。仲間の講師の多くが、そして企業側の研修担当者たちも新しいやり方に戸惑い、試行錯誤で進めてきた。初めてのオンライン新入社員研修だったのだ。そんな中、もちろん新入社員たちも戸惑いはあったようだが、徐々に環境に慣れ、zoomやMicrosoft Teamsやクラウドストレージなどを使いこなし、オンライン上で共同作業を進め、同僚・人事の担当者・講師たちとメールとチャットの2つの非同期コミュニケーションツールで日々の研修を進めていた。もはやそれが彼らの普通だ。

一方で先輩社員たちはこの変化についていけなかったり、もとに戻ることを期待してついていこうとしなかったりする人もいたようだ。人はとかく変化を嫌う。できればこのままの日常が続いてもらいたい、と考える。だから変化に抵抗し、普通が変わることを心苦しく感じる。「この状況は普通とは違う」と考える。

私達にとっては普通に行われる名刺交換も、今年の新入社員にとっては普通ではない。オンライン研修では名刺交換の練習はないし、そもそもオンラインで仕事をしていると名刺交換をするシーンがない。初対面の相手とは画面上で挨拶をし、あるいはオンラインツールの上で名刺交換に代わる個人情報の交換をするのが普通となりつつある。

こうなると、「ITツールをどれだけ使えるか」が業務推進力につながっていく。昔、ワープロが使えないベテラン社員が恥ずかしい思いをしたのと同様に、キータイプ入力の速さ、カメラ・マイクの使い方、チャットの使い方等の巧拙が仕事の成果の差となっていくはずだ。

望むと望まざるとに関わらず、ITリテラシーの有無が仕事のパフォーマンスに大きく影響してくる。もう「パソコンは苦手」などと言っていられないし、「オンラインは苦手」とも言えない。
仕事の「普通」は変わったのだ。

 

2. 若手育成も変わり始めた

そうなると若手育成もその方法を変えていかなくてはならない。これまでは席を並べていたので顔を合わせて話すことができた。手を動かしている様子を見ながら指導もできた。

ところがテレワークとなるとそうはいかない。直接話せるのはWeb会議ツールでつながっている時だけ。会議を終了したらメールかチャットのようなテキストベースのコミュニケーションだ。

空気を読むことも難しくなる中では、テキストベースのコミュニケーションの中でどれだけ「感情」を表現できるかがポイントになってくる。これまで多くの企業ではメールに絵文字や顔文字を使うことはNGとされてきた。メールがビジネス文書の延長と考えられていたからだ。しかしこれからは絵文字や顔文字を積極的に使うべきだろう。お互いの感情表現を言葉で表現できればいいのだが、それが難しい人には絵文字や顔文字を使うことが感情表現の助けになる。そういう点ではLINEで使われているようなスタンプは感情やニュアンスを伝えるには好都合なのである。普段からLINEを使い慣れている若手のほうが上手に使えるだろう。LINEのスタンプによるコミュニケーションをやや蔑んで見ていた諸兄にとっては苦々しいかもしれないが、往々にしてそういう方々は感情表現が苦手な人も多い。だからこそ、絵文字、顔文字、スタンプを積極的に使って若手とコミュニケーションをしたほうが若手の心は開きやすいはずだ。もちろん、感情の機微を言葉で表現できることに越したことはないのだが。

若手のドキュメントに対するレビューの姿も変わってくる。これまでは「ちょっと見せてみろ」と言って自分の席まで印刷したものを持ってこさせ、赤ペンで指摘するような事は、よくある光景だった。しかしこれからはそれもオンライン上で行うことになる。さて、どうやる?イメージはつくだろうか?例えばWordのドキュメントであれば校閲ツールを使えば指摘コメントも入れられるし、修正箇所を記録して残すこともできる。そういうことをサラッとやらなければ、若手から先輩として軽んじられる可能性さえある。なにせ若手のほうが使い方をよく知っているのだから。

自分にできること、できないことを認め、わからないことは若手にさえ聴いて解決するような働き方も、これからは普通になってくるのかもしれない。そうやって若手に頼り、彼らに満足感や優越感を与えることはモチベーションの向上に寄与する。そういう育て方も一般的になってくるかもしれない。となると、組織内での関係性はよりフラットな方向に向かいそうだ。

 

3. 相手の立場で「感じる」力

人と人の物理的距離が離れるからなおさら、私達は相手の立場に立って考え、感じ、それを伝え合う必要が高まるだろう。そうやって物理的距離を越えて絆を作って行く必要がある。論理的に考え諭すだけではなく、相手に共感し、相手の気持ちを動かしていくコミュニケーションが仕事を動かしていく。そう考えるとますますEQの時代であることを感じる。

「相手の立場で考える」とは私が小学校の頃に担任の先生からよく言われた言葉だ。不思議と今でも記憶に残っている。しかし最近はこの言葉に新たな解釈を加えたい。相手の立場で「考える」だけではなく「感じる」事が必要なのだ、と。いや、元々そういう要素も含めて先生はおっしゃっていたのかも知れないが、こんな時代だからこそ相手の立場で「感じる」ことに注目したい。EQという言葉だけ聴くと小難しく感じられる人もいるだろうし、それを理解しようとするのも大変に感じる人もいそうだ。EQが大事なことに異論はないが、EQという言葉を表に出さずに感情のセンスを高めることはできるだろう。その第一歩が自分の感情に目を向けることと、相手の感情に目を向けることではないだろうか。だとすると、そういうことも若いうちから指導すべき時代なのではないかと思う。

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これからの若手育成に求められるスキルは、ITリテラシーとEQであると私は思う。デジタルとエモーショナルというかけ離れた2つの要素が融合すれば、これからの時代の新しい働き方も見えてきそうだ。

EQチェンジエージェント

ギビングツリーパートナーズ株式会社 代表取締役 中川繁勝

 

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ギビングツリーパートナーズ株式会社

代表取締役 中川繁勝
 

―― EQ活用を伝えたい理由
組織の仕事はロジックが重視されてしまいますが、根本にあるのは人の感情です。人の感情を理解することなしに良い組織はできませんし、良い仕事も成り立ちません。EQをよりよく理解しながら各種のスキルを使うことが、現代社会をよりよく生きていく術であると、私たちは考えています。