EQが照らすイノベーションの道
by : グロースワークス合同会社|宮木 俊明 |
2025年2月7日 |
EQを実践する, EQリーダーシップ, イノベーション, ケース, ノーブルゴールの追求, 共感力の活用, 内発的なモチベーション, 感情のナビゲート, 感情マネジメント, 感情リテラシー, 楽観性の発揮, 結果を見すえた思考, 自己パターンの認識
※この記事は、シックスセカンズ認定資格者として活躍するパートナーの皆様による、実践事例やEQ活用のヒントを紹介する記事です。
私はイノベーションの「主体的実践者」「支援者」「支援者を増やす人」の3つの立場で活動をしています。それぞれの立場において、ビジネスモデルイノベーション協会等でもお伝えしているグローバル標準のツールやメソッドを利活用するのと同時に、それらをより深い人間理解と共に取り入れていくべく、EQ(感情知能)の知見を習得し始めました。そこから更に、自身のみならず、それぞれの立場でメンバーやステークホルダー、あるいは顧客との関係性の中に「お互いの感情を知り、行動と調和し、目的に向けて役立てる」ことを取り入れ、それらが大いに役立っていると実感しています。
今回は、これらのEQの探求と実践が、それぞれの場面でどの様に役立っているかを、個人の経験からお伝えできたらと思っております。
鬼軍曹の時代
実は、そんな私もかつては「鬼軍曹」的な働き方だった頃があります。営業担当として、あるいはプロジェクトマネージャーとして、関わる人への共感などは考慮せずに、「正論とアイデアと行動」だけで乗り切ろうと、孤軍奮闘・悪戦苦闘していたのです。そんな私を見て、ある後輩からは「宮木さんは原子力発電所だ」(発しているエネルギー量はすごいが弊害もあるし近寄りがたい、ということでしょう)と評されたりもしていました。10年以上前に取り組んでいたあるプロジェクト(いまでいうDX)では、メンバーから”総スカン”を食らって、ほぼ一人でベンダーとやり取りしながらローンチした苦い思い出もあります。
その頃はそれがある意味で「正しい」やり方だと思っていました。そして、申し訳なかったとは思いつつも、当時の私には他に選択肢を持てなかったというのが正直なところです。しかしながら、その後、起業や転職を経て徐々に、様々な学びや創造の機会を提供するファシリテーターとしての「あり方」を実践的に習得しつつ、その中でEQを始めとした脳や心の仕組みを理解し、仲間づくりの考え方を改めながら「キャラ変」して来ました。
そして、時を経て俯瞰してみて思うのは、もっと別のやり方をしていたら人間関係をもっと良好に保てただけでなく、自身の成長にも大いにつながるより豊かな時間を過ごせたであろうということです。今となっては、ありがたいことに、仲間たちと深く対話した上でも、上記エピソードは「想像つかない」と言っていただけるので、ちゃんと「変態」できたのかなと実感したりもしています。
近年、私は新規事業開発やイノベーションの実践者、あるいは支援者として多くの経験を積む中で、このEQの発揮が成功に大きく関わることをに着目し、探求と実践を進めています。(参考記事:イノベーションと感情知能(EQ))
これまでも、EQの構成要素である、「感情リテラシー」、「自己パターンの認識」、「結果を見すえた思考」、「感情のナビゲート」、「内発的なモチベーション」、「楽観性の発揮」、「共感力の活用」そして「ノーブルゴールの追求」について、それぞれのイノベーションとの関係をnoteでも考察してきました。
これから、これらの知見を包括しつつ、イノベーションの「主体的実践者」「支援者や指導者」「支援者や指導者を増やす人」の3つの立場でのEQ実践について、具体例を交えてお伝えしてみたいと思います。
主体的実践者としてのEQ活用
大企業に所属し、新規事業開発に取り組むグループのマネージャーとしての私は、毎日のようにいくつもの「不確実性」「モヤモヤ」「急展開」に見舞われています。その中にあって、メンバーとの関係構築や、社内外のステークホルダーを巻き込むプロセスにおいて、EQがまさに「鍵」となっています。
特に意識しているのは、「共感力の活用」と「楽観性の発揮」です。例えば、新しいアイデアを社内で推進する際、関係者が抱く不安や懸念をしっかりと受け止めることが、彼らを巻き込む第一歩になります。そして、予測不可能な事態に直面した際も、自らの感情を冷静にコントロールし、前向きなエネルギーをチームに伝えることが、プロジェクトの進捗に大きく寄与しています。
例えば、PoCを目的としたパートナーとの連携などにおいて、先方の都合や双方の不可抗力で進捗が計画通りにいかず、頓挫することなど日常茶飯事です。それら一つ一つの結果成果に一喜一憂していては前に進んでいくことはできません。こんな時、自身の感情と向き合い、そこに建設的かつ前向きな意味付けをしていくことはもちろんですが、これをメンバーに対しても同様に行っていく必要があります。メンバーがこの様な報告をしてきたときに、リーダーとして(あるいはマネージャーとして)どの様に振る舞うべきでしょうか?メンバーから報告や相談を受ける際は、まずはしっかりと状況を理解する傾聴に務めると共に、困難な状況に共感を示しつつ、「これは面白い」などとコメントしたりすることがあります。これにより、困難な状況でも「楽しむことができる」ことを共有できたりするものです。
まだまだ至らない点や、悔しい思いもたくさんしながらですが、それでも時折、社内外で「ひとたらし」などと言われるのは、単なる親しみやすさではなく、こうしたEQを基盤にしたコミュニケーションがあったからだと感じています。
もちろんこれらの前提となるのが、「ノーブルゴールの追求」があること。つまり、成し遂げたいことやありたい姿が共通善に向かっていることなのですが、それだけでは成し遂げられないことを、経験を踏まえて考察しています。
支援者としてのEQ活用
私は大企業に所属する傍ら、グロースワークス合同会社の創業代表でもあり、独立した起業家としての活動も行っています。そこでは、企業の新規事業開発への伴走支援やイノベーション人材・DX人材の育成に関わるセミナーやワークショップを提供しているのですが、ここでもEQは欠かせない要素となっています。
そこで大切にしているのは、「感情リテラシー」と「結果を見すえた思考」です。コンサルタントとしても、ワークショップのファシリテーターとしても、セミナー講師としても、クライアントや参加者が抱える見えない不安や課題を感情面から察知し、まずはしっかりと受け止めるとともに、その感情をどの様な結果に結びつけるか?そこに向けた双方向コミュニケーションの場を作ることを最優先にしています。そこから、変革に関わる者に特有の心理状態などをEQをテーマにした独自のコンテンツを通じて理解頂くとともに、参加者自身が自分の感情や他者との関係性を深く理解するきっかけを提供するなどしています。
目的に応じた様々なアプローチを取っていますが、初歩的なところでは、チームビルディングや振り返りのタイミングなどで「感情」を言葉にするトレーニングなどを取り入れています。「今感じていること、感情、気持ちを言葉にしてくだいさい」と書いたり話したりしてもらったとき、多くのビジネスパーソンは、感情語を使わずに「考えたこと」を言葉にします。よくあるのは「考えたこと」+「と感じた」という言い回しのパターンで、「どうにかしたいと感じた」などとなります。この場合、同じ「どうにかしたい」という思考でも、それに伴う感情が、落胆しながらなのか、怒りを感じているのか、ワクワクしているのか、などなど、心の在りようとしては様々な場合が想定されますよね。なのでここから更に突っ込んで、それらを自分なりに表現してもらうようにするのです。この様に「感情を言葉にする」ことは、自己理解につながることはもちろん、メンバーの理解や顧客の理解にも大いに役立つ「感情リテラシー」のトレーニングなのです。
新規事業開発がテーマなのに、ワークショップ後には「自分の感情にこんなに向き合ったのは初めてだった」「魂を感じた」等々を声をいただくたびに、EQの力を再認識します。また、クライアントとのプロジェクトでは、EQを活用して信頼関係を構築し、単なるビジネスの枠を超えた「伴走者」としての役割を果たすことに務めていますが、この様な人間本位のスタンスが、顧客満足度の向上だけでなく、継続的な関係にもつながっていると感じており、またその様なフィードバックを頂くことがあるのでともて嬉しく思っています。
支援者を増やす人としてのEQ活用
大企業所属、自身の会社の経営に加えて、一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会の代表理事として、コンサルタントの養成やコミュニティ活動も行っております。ここに携わる場面では、EQはまさに「エンジン」であり「自分が何を大切にしているか」といった内省を深める上で機能していることを実感します。
ここでは特に「自己パターンの認識」や「内発的なモチベーション」を大切にしています。協会の運営に関する方針決定や、受講生とのやりの中で、自らの感情に気づき、それがどのように行動や選択に影響を与えているのかを理解することで、自身の成長につながるとともに、その様な気づきを周囲とも分かち合うことを通じて、共感的・対話的なリーダーが世の中に増えていく事にも期待しております。
ビジネスモデルイノベーション協会では、事業を俯瞰する視点(鳥の目)であるビジネスモデル・キャンバス(BMC)、そして、顧客のインサイトをしっかり探索する視点(虫の目)であるバリュー・プロポジション・キャンバス(VPC)、そして、未来を見すえながら潮流を読み解く視点(魚の目)としてシナリオプランニングとワールドカフェを組み合わせたメソッドなどをお伝えし、それらを用いたコンサルティングや伴走支援ができる人材を育成しております。私の自己パターンであり、内発的なモチベーションでもあるのですが、「可能なかぎりわかりやすく」「正しく伝えたい」という自らのこだわりに気づくことが多い活動でもあります。
そして、私がこれらの講師をつとめる際には、自らのEQをフル活用しています。ここでは、EQに関して直接的な示唆をあたえるというよりも自らの「あり方」が、意図せずに周囲に与えている影響に気がつくことのほうが多いのですが、例えば自己紹介タイムや休憩時間などに「なぜこの講座を受講しようと思ったのか」を丁寧にヒアリングすることなどを心がけていたりします。常に目の前の人が何を成し遂げようとしている人なのかにフォーカスすることがある意味での人と接する際の私の「自己パターン」になっていると感じます。
そうすると、そんなやり取りの中でも、受講者が自らの価値観や使命に触れ「自分はこれがやりたかったんだ!」「こういうことだったのか!」と目を輝かせる瞬間に立ち会うことがあったります。こんなやりとりの嬉しさも、協会の活動を続ける原動力にもなっています。誰かの内発的モチベーションにふれることが、自らの内発的モチベーションの再発見につながっているといったところでしょうか。
この様なあり方は、受講者がクライアントやチームと向き合う際にも大きな武器となるはずです。どこまでお伝えできているか、ですが、コンテンツだけでなく、「それをどんな存在として、どんな場で提供するか」というコンテキストを大切にする姿勢が体験的に受講者の皆さまにも伝わっていけばと願いますし、彼らが経験を重ねる中でふと思い出してくれる様なタイミングがあればとても喜ばしいことです。
パラレルワーカーとしての複雑性とEQの力
これまでご紹介してきた通り、ビジネスの面だけでも「3足のわらじ」を履いており、複数の立場を持ちながら活動することは、時に複雑で困難な状況を生みます。異なる役割間の優先順位のバランスをとることや、それぞれの場面で異なるニーズに応え続けることは簡単ではありません。ここで役に立っているのが「感情のナビゲート」と「ノーブルゴールの追求」だと考えています。
表面的には忙しそうに見えるからか、「いったいいつ寝ているんですか?」等と言われることも多いのですが、多くの関係者のご理解や温かいご支援、そして所属している企業の制度などにより、人一倍寝れている方だと思います(笑) ありがたい限りです。それでも尚、余裕がなくなることも多々あるのですが、その状況を楽しめるように受け止め方を変え、自らの感情を適切な感情へと変化させることを通じて、案件が立て込んだりスケジュール調整がこんなんな際などもも、俯瞰的に捉えて新たな打ち手をみ言い出す「余白」を持てることにつながっていると感じます。
そして、ストレスフルな状況に陥ったときや、上手くいかないタイミングなどにおいて、それでも前に進むための原動力は常に「ノーブルゴールの追求」にあります。私は、プライベートも含めたすべての活動領域において一つのミッションを生きており、それこそがノーブルゴールの追求の具現化であると考えています。
そのミッションが「社会に新たな価値を創造する挑戦者を増やすために、挑戦者を支援するとともに、自らのイノベーションへの挑戦を発信し続ける」です。
これは「ありたい姿」でもあるのですが、総体としてここに向かいつつも、並行していくつかの領域で活動をしていると、ある領域では行き詰まっていても、別の領域では新たな兆しやチャンスが見えていたりすることも多くあります。そしてその状況を俯瞰してみたときに「全体としては前に進んでいる」と実感できる効果は、とても大きいと感じます。活動領域が人より多くあるため、全てに行き詰まるということが確率的に低くなるということでしょう。これを生んでいるのがまさに「のノーブルゴールの追求」の効果であり、その効果を意図的に発揮させるコンピテンシーが「感情のナビゲート」であると考えています。
EQを軸に感情を大切にし、しかしそれに振り回されるのではなく意図的に活用することで、「自分自身が何を大切にしているかに気づく」→「大切にしていることを大切に行動する」→「大切にしていることが自らの役に立っていることを実感する」→「自分自身が大切にしていることをより深く理解する」という好循環が生まれています。これがまさに、複雑性を乗り越え楽しみながら生活をすることを可能としている、『EQが照らすイノベーションの道』だと感じているのです。
まとめ:EQがもたらす可能性
イノベーションに関わるあらゆる活動において、EQは単なるスキルではなく、人と人をつなぎ、価値を生み出す原動力です。そしてそれらが「主体的実践者」「支援者」「支援者を増やす人」という3つの立場で活動する中で常に私を支え、道を切り開いてくれたことをお伝えしてまりました。
最後に、「なぜこの文章を書いているのだろうか?」と俯瞰してみたいと思います。ぱっと思いつくのは、これを読んで頂けた人に、ささやかでもなんらかのプラスの影響があればいいな、そう考えるとワクワクするな、というシンプルな答えがあります。
そこから自らの価値観を深堀りをすると、自らの経験と先人たちからの学びを調和させ「使える知恵」を紡ぎたいという思いが見えてきます。
また、読んで頂いた方に具体的にどんなプラス影響があることを期待しているのか?と考えてみると、これを共有することで「挑戦ってもちろん大変なこともあるけど、結果成果だけでなくプロセスを楽しむ方法があるんだな。それの一つEQなんだな」ってことを共有したかったんだなと気が付きました。ここまでお読み頂く中で、こんなエッセンスが少しでも伝わっておりましたら大変ありがたく、よかったらご感想などお寄せ頂けるととても嬉しいです。
これからもEQを実践しながら、イノベーションの道(変態道)を追求していきたいと思います!
最後までお読みいいただきありがとうございました!
グロースワークス合同会社
宮木 俊明
グロースワークス合同会社
「社会に新たな価値を創造する挑戦者を増やすために、挑戦者を支援するとともに、自らのイノベーションへの挑戦を発信し続ける」をミッションに、先人の叡智を自らの実践を通じて得たインサイトと共に、楽しく豊かな学びの場を共創します。
EQを学びたい方へ
Six Secondsグループは、グローバルで、科学に基づき、実用性の高いEQを世界各国で伝えています。日本オフィスであるシックスセカンズジャパンでは、最先端のEQの情報を日本語で発信するほか、Six Seconds国際認定資格セミナーの国内開催を行い、資格を持ち日本各地で活躍するEQチェンジエージェントと共に日本全国へEQを届けております。