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データから見える、職場の”本当の”感情|#EQリーダーシップ 第5話後編

by : シックスセカンズジャパン 代表 田辺康広  | 

2020年5月21日 | 

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日本で流れている感情は、
一方ではゆるやかな「喜び」や「予期(関心)」であり、
他方では「怖れ」や「驚き」ということが言えます。

まさしくアンビバレントな状況、相反する感情を同時に持つ状況にあるのではないでしょうか。

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EQとはEmotional Intelligence; 感情知能のこと。職場を預かるリーダー、牽引者となる方は感情を味方につけ、最善の結果に結びつくよう適切な思考や意思決定、行動選択するためにEQ(感情と思考を効果的にブレンドする能力)発揮が必要です。このEQリーダーシップシリーズでは、6SJ代表田辺より前向きな感情を想起するEQを活用したリーダーシップについて、綴ってまいります。


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前回は「データから見える、職場の”本当の”感情」を取り上げ、
弊社EQ検査SEI(Six Seconds Emotional Intelligence Test: セイ)を2019年に受検した
4000人を超える受検者のデータから見える考察を共有しました。

今回は、「データから見える”従業員の”感情」をベースに話を進めてまいります。

 

約1500のデータから見る、「従業員」の感情

EQ検査SEIでは、ご自身の職業について選択頂く項目があります。
そこで今回は、「従業員」と選んだ方たちのデータのみを抽出して、同じように見てみましょう。
データ個数は1,499個、年齢幅は20歳から63歳まででした。

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「喜び」が圧倒的に多く全体の38%を占めたのは全体データの傾向と同じでした。次に多かったのは「怖れ」で13%でした。つづいて「信頼」10%、「予期」と「悲しみ」「嫌悪感」が9%と続き、全体データとは少し違った様相を呈しました。

では、強弱を荷重した平均値ではどうなるでしょう。

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ここでも「驚き」と「怖れ」がトップ2となりました。

では、それぞれの強弱を見てみましょう。

まずは、「喜び」です。弱い感情の「平穏な感じ」を選択している人は43%、中間の「うれしい」を選択した人が53%、そして強い感情の「痛快である」を選択した人は4%でした。

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次に「驚き」を見てみましょう。ここでは65%の方が「驚愕」を選択しています。全データにみる選択の割合より高い値ですね。職場ではいったい何が起こっているのでしょうか。

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次に、「怖れ」を見てみましょう。ここでもほとんどの方(87%)が「心配」を選択していました。従業員の皆様の持つ心配は「漠然とした不安」なのでしょうか、それとも「具体的な心配事」があるのでしょうか。

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相反する感情を同時に持つ職場を、どこへ向かわせるのか

まとめると、日本の職場で流れている感情は、一方ではゆるやかな「喜び」や「予期(関心)」であり、他方では「怖れ」や「驚き」ということが言えますね。

まさしくアンビバレントな状況、相反する感情を同時に持つ状況にあるのではないでしょうか。
米国グーグル社が大切にしている組織運営のキーワードに「セレブレート」と「サプライズ」があると聞きます。上記の感情「喜び」と「驚き」をむしろ意図的に想起させることで、円滑な組織運営や組織活性化を目論んでいるように見えます。

この文脈で行くと、日本の職場にはすでに 「セレブレート」と「サプライズ」が生む感情「喜び」と「驚き」が発生しているので、職場のリーダーたちはいかにして「喜び」の感情を増幅し、そして「驚き」の感情を撤退ではなく「畏敬の念」の方向に向かわせるかではないでしょうか。

 

「喜び」を増幅させ、「驚き」を「畏敬の念」へナビゲートする、リーダーの3つの行動

リーダーが発揮したい行動:EQリーダーシップは次の3点ではないか、と思います。

・・・

  • 些細なことでもよいからハイタッチをしたり、「グッ、ジョブ」と声掛けしたりして、「喜び」を増幅する組織風土を常態化させる
  • また、「すごいな」「素晴らしいな」「驚くね~」と少し大げさすぎるくらいに職員の行動や発言に関心を寄せ、次第に職場全体が相互をさりげなく「承認する」行動を定着化させる
  • そして、時には職員が予期しない、そしてワクワクさせる発想や行動を示し、良い意味での「驚く」を楽しむ職場文化を作る

・・・

 
このような行動をとることで、以下に見る職場のEQスキルの向上が期待できます。
職場全体のEQが高まることは、生産性の向上や事故防止、離職防止やイノベーション文化の醸成などさまざまなテーマに対応できます。

[ 1 ]
「喜び」を増幅する組織風土を常態化させる

職場全体が今の自分の気持ちに気づくスキル「感情リテラシー」や、必要な行動をとらせるための感情想起スキル「感情のナビゲート」が高まり、いずれは職員が自ずと今の自分の感情に気づき、目的や目標達成に必要な感情へのナビゲートができるようになります。

[ 2 ]
行動や発言に関心を寄せ、相互をさりげなく「承認する」行動を職場全体に定着化させる

いずれは職場全体に相手の心情を慮る「共感力の活用」スキルが根付き、職場全体に「信頼感情」が芽生えていきます。

[ 3 ]
ワクワクさせる発想や行動を示し、良い意味での「驚く」を楽しむ職場文化を作る

「ワクワク」「ドキドキ」は職員の「内発的なモチベーション」に火をつけます。そして、上司の発想が予想外であればあるほど、職員が「あ~、あんな発想をしてもいいんだ。」「あそこまでしてもいいんだ!」という理解が浸透し、職場全体に「楽観性の発揮」という楽観思考を意図的に活用できるスキルが定着していきます。

 

コロナウィルス問題の渦中だからこそ、リーダーが発揮したい能力とは

今、世界中がコロナウィルス蔓延に戦々恐々としています。まさに「おちつかない」「心配」「恐怖」の感情が日に日に増している状況です。
医療従事者たちが、今の状況に屈することなく最善を尽くすために互いにエールを送る拍手をしたり励ましあう光景がニュースで流れています。自分たちの気持ちに気づき(感情リテラシー)、最善を尽くすために必要な行動をとるために自分の感情を想起させる(感情のナビゲート)まさに、上記の[ 1 ]の行動です。

このような時こそ、職場を預かるリーダー、牽引者となる方は感情を味方につけ、最善の結果に結びつくよう適切な思考や意思決定、行動選択するためにEQ(感情と思考を効果的にブレンドする能力)発揮が必要です。

 


 
前編・後編と2回にわたってお届けしてきた「EQリーダーシップ第5話」はいかがでしたでしょうか?
 
次回は、「なぜ職位の高い人ほどEQ総合値が高いだろう?」と題してお届けいたします。
 

シックスセカンズジャパン株式会社
代表 田辺 康広

 


田辺 康広
シックスセカンズジャパン代表取締役

90年のEQ理論発表時より、組織および人材開発・活性化のキーファクターとして注目し研究。専門性を活かし、様々なセクターにおけるマネジメント・リーダーシップ研修を創り、日本におけるEQの第一人者として、普及・発展に寄与している。


 

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