クリティカルシンキングとEQの切っても切れない関係
by : EQチェンジエージェント|株式会社Hyper-collaboration 吉田裕美子 |
2020年5月27日 |
ビジネスに役立つ思考法の1つクリティカルシンキング。批判的思考とも呼ばれ、感情や主観に流されず物事を判断しようとする思考プロセスです。クリティカルシンキングを教育分野に応用展開する「教育のためのTOC」理事、人と組織のマネジメント変革を支援する株式会社Hyper-collaborationの吉田裕美子氏より、「クリティカルシンキング」と「EQ」という一見相反するようにも思える2つが、マネジメント力向上・リモートでも機能するチーム醸成の一助になる、とする提言です。
コロナウィルスの脅威にさらされ、浮き彫りになった難しさ
企業のマネジメント層が、メンバーの「思考力」ということに対して課題感を示し始めてから、しばらく経つ。マネジャーが全てを指示し、チームメンバーは、その手足となって「作業をこなす」ことで成立する、いわゆる量産型の経営が機能する時代はとうに過ぎ、一人ひとりが考えて行動を選択してくれないと、仕事が回らない時代になって久しい。学校教育も、それに合わせて教育の変革をなんとか進めようと努力している。更に、ここに来て、全世界がCOVID-19の脅威にさらされ、マネジャーもチームメンバーもそれぞれの自宅で仕事を進め、必要な会議やコミュニケーションはオンラインで・・というリモートワークが強制的に開始されたことで、指示しないと機能しないチームは、更なる運営の難しさに直面しているかもしれない。
なぜ「思考力」が必要か
ここで、もう一度、「思考力」が求められている背景を確認してみたい。
多くの仕事は、作業をこなせば良いのではなく、様々な点で、自ら考え、判断し、行動を選択する様な領域が増えてきている。それが仕事の品質にも生産性にもつながる社会になってきているのは、多くの方々が認識されている通りである。顧客が求めるものは多様化し、更にスピードも要求される。私たちの日常生活を思い起こしてみれば、大人も子どもも、欲しいと思ったものを、ネットで検索し、自らの価値観で選択して注文したものが、その翌日には家庭に届くということが当たり前と思う様になってきているのだから、世の中が求めるサービスや製品がいかに多様に複雑に、そしてスピードも同時に求められているかは想像がつく。この様な社会の状態があるのだから、それに対応するには、誰かがまとめて大半の仕事の指示を出し、管理だけしておけば良い状況ではないことは容易に想定でき、「思考力が求められる」所以でもあると言えるだろう。
ところで、自分で考え、判断し、行動を選択していくことを求めると同時に、メンバーの仕事ぶりをきっちり「管理したい」という感情がマネジャーには芽生えている事実も、あちこちで見聞きする。これは、マネジャーに責任感があることの現れかもしれないが、さてこの2つは同時に叶えることができるのだろうか。
クリティカルシンキングという思考法と、EQというスキル
クリティカルシンキングという思考方法がある。自分の判断の元となっている論理構成に対して、今一度問いを立てて、吟味する思考方法だ。唯一の解がないと言われる現代社会において、より適切な答えや判断にたどり着こうとする思考プロセスである。テクノロジーの進化に伴い、複雑で、より高域に繋がった社会の中で変化が激しく起きている今、これまで当たり前の前提としていたことに、実はバイアスが含まれていたり、すでに時代が移り変わってしまってその前提が通らないということは多くあるものである。だからこそ、今、クリティカルシンキングの力が求められている。
ここで、クリティカルシンキングには、感情知能(Emotional Intelligence:EQ)が不可欠であると私が書いたら、読者の皆さんはどう感じられるだろう。
クリティカルに物事を考えるときに、感情などは必要ないどころか、感情に思考が左右されてしまっては、元も子もないではないかと思われる方もいるかもしれない。もしかすると、感情という言葉が私たちに与える印象が、その様な誤解を生んでいるのかもしれない。
EQは、感情を読み解き、その情報を人が思考するために活用する能力である。そもそも、感情というのは、脳の一部で発生する反応である。思考という活動が脳の中で行われている以上、脳の一部の活動だけ度外視することが可能である様には思えない。どんなに思考に感情を交えない様にしたいと思ったところで、私たちの感情は脳内に湧いてきてしまい、私たちの判断に影響を与える。クリティカルに考えるためには、この感情という人間誰もが持っている脳の一部から発せられる情報を読み解き、自らの思考の中で論理構成する必要がある。そして、感情という簡単に言語になりにくい情報をクリエイティブに活用していくためには、その感情からのメッセージに問いを立てて、吟味する必要がある。これこそ、「クリティカルシンキング」そのものだと言えるのではないだろうか?
「管理したい」気持ちを読み解くことができたなら
マネジャーが部下の仕事ぶりが見えなくて不安を感じ、管理ツールを導入したというニュースが先日流れていた。マネジャーの「不安」という感情は何を伝えていたのだろうか。
- そもそも、「管理したい」という気持ちは、どの様な条件のもと湧いてくるのだろうか
- そして、主体的に考え、行動を自ら選択する部下が必要だという要望と、リモート環境にいる部下を管理するという行動の選択は、どの様な関係性にあるだろうか
- 自らの感情のメッセージを読み解き、目指すべきゴール、ありたい状態に向かって行動を選択できたとしたら、どの様なオプションが生まれてきているだろうか
EQとクリティカルシンキングは、どちらか片方では成り立たない関係にあると私は考えている。この2つの能力が相互に高まることで、単純に仕事の生産性や品質が上がるということでなく、共に活動するチームの相互作用も大きく変わっていくに違いない。
株式会社Hyper-collaboration|EQチェンジエージェント自らの内面の探究が、自らの答えを導き出し、その自らの答えが、仲間を惹きつけ、新しい価値を生むという時代は、すでにはじまっています。全てのリーダーがEQという知性を手に入れることで、私たち誰もが「自分に最もフィットする豊さ」に満ちた社会の形成に貢献できるようになっていくことが実現します。
EQを学びたい方へ
Six Secondsグループは、グローバルで、科学に基づき、実用性の高いEQを世界各国で伝えています。日本オフィスであるシックスセカンズジャパンでは、最先端のEQの情報を日本語で発信するほか、Six Seconds国際認定資格セミナーの国内開催を行い、資格を持ち日本各地で活躍するEQチェンジエージェントと共に日本全国へEQを届けております。