店長に贈る EQスキルアップ連載 第2弾「選ぶ」②
by : EQファシリテーター|掛川 幸子 |
2023年4月11日 |
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※この記事は、シックスセカンズ認定資格者として活躍するパートナーの皆様による、実践事例やEQ活用のヒントを紹介する記事です。
「スタッフの行動を変える為にあなたが選択出来るもの」(選択するのは自分自身~行動選択の助けとなるEQコンピテンシー~)
前回は自分の行動を意図的に「選ぶ」ためには、Know Yourself(自己認識)というEQ領域を働かせて、自身の感情や感情によって引き起こされるパターンについて認識することが最初のステップであることを学びました。
今回は、自己認識を働かせた後、効果的な行動選択のために鍵となるEQコンピテンシーの活用について学んでいきましょう。
効果的な行動選択の鍵「結果を見すえた思考」
他の行動を選択できるか否かは、自分がとろうとする選択肢のメリットとデメリットに関して行動をとる前に考える事が出来るかどうか(結果を見すえた思考)が重要です。
自分が選択した行動が周囲に及ぼす影響をプラスとマイナスの面でしっかり考えることが出来れば、実は他の行動ファイルもあるのだということも見えてくるのです。
自分の衝動的な感情や習慣的な反応をナビゲートし、意図した行動をとるために必要なスキルなのです。
前回の記事で、「厨房スタッフのA男がアイドルタイムになるとホールスタッフへのおしゃべりが目立つ」場合にB店長が取れる選択肢の例として、以下の3つを挙げてみました。
2.伝えずいつも時が過ぎるのを待つように負の気持を我慢する。いつかA男も成長するかもと願う。(A男の行動がエスカレートしていくかもしれない不安が残る)
3.強い口調で注意する。(怒鳴ったりはしていないが、注意した時に少しいやーな空気が流れる、A男も少し不機嫌になり、まわりのスタッフにあたったりするかもしれない。A男の心には少し響くかもしれない)
「1」を選択すると、その場の空気を乱さず乗り切ることができるのでB店長はいつも「1」を選択していました。
では、いつも「1」の行動を選びがちな店長が「結果を見すえた思考」を活用する事が出来たらどうなるでしょうか?
「1」の行動を選択すれば、例えば以下のようなメリットがあります。
- *A男に仕事を割り振れば、お店の空気は悪くならない。スタッフも嫌な気分にならない。
- *その場のおしゃべりはやむ
- *自分の失態をさらさなくてよい
しかしデメリットも沢山あります。
- *これからも毎回アイドルタイムにA男はおしゃべりを繰り返すかもしれない
- *おしゃべりするスタッフの姿にお客様からクレームがくるかもしれない
- *「しゃべってもいいのだ」という空気が蔓延し、お店のモラルが下がるかもしれない
- *結局店長はA男には頭があがらないんだとスタッフからの信頼を失うかもしれない
B店長の「上手にすり抜けたほうが、もめごとがなくよい」という習慣的な行動は、一時的なメリットはあっても将来的なデメリットがとても大きいことに気づきます。
本当はきちんとA男に「なぜいつもこのような行動をとってしまうのか」そして「いつもキレ気味になってしまい、店舗の空気を少し嫌な雰囲気にさせてしまうことをどう思っているのか」を聴き、A男にはモチベーション高く、クオリティの高いスタッフになってほしいことを話したいのです。
しかし「もめる」かもしれないし「反発」されるかもしれないし「時間」もかなりかかるかもしれない。「改善」させられるかどうかも自信がない。
そういう結果だけが自分の中でクローズアップされてしまうと、どうしても事なかれパターンの行動を選んでしまうかもしれません。
「結果を見すえた思考」に「楽観性の発揮」が加わることで選択の幅が広がる
そこで、もう少し深く結果を見すえた思考を働かせ、本当に自分がとるべき行動を考えてみましょう。
*一時的にA男は自分に敵意を見せるかもしれないが、もしかしたら敵意を見せないかもしれない。敵意を見せると思いこんでいるのは、どうしてなのだろうか。
*自分はA男の得意としている厨房の作業が苦手である。そんなA男に自分が注意をすることに引け目があるのでは。
*A男は店長である自分を困らせようと思って悪意をもっておしゃべりをしているのか?きっとそうではない。
*彼におしゃべりをさせてしまう何かがあるのであれば、きちんとそれを聴くことが出来れば、どうだろう?もしかしたら彼に対して抱いていた苦手意識はなくなってしまうかもしれない!
*根本的に彼の行動が変われば、店舗全体のクオリティも上がるかもしれない。
*そして自分の店長としてのモチベーションはさらに上がるかもしれない。
「行動を選択するのは自分自身である」と言うこと、そして「新しい行動を選択し、トライする勇気をもつこと」。
これはEQの中では
「楽観性の発揮」ともいいます。何も考えていないのではなく「希望や可能性を信じ、自分から前向きな展望を持てる」というコンピテンシーです。
人は常に楽観や悲観を織り交ぜて物事を考えたり感じたりしています。どうしても「悲観」的なものの見方をしてしまう時は、こうして、自分が行動した際のメリットとデメリットを真剣に考えてみると良いのです。
こうした「悩み」には多くの「思いこみ」や「余分な情報」が自分の行動も大きくそうしたものが「悲観」的なものの見方へあなたを導いていしまっていることもあります。
ベーシックメッセージで相手の行動の本質が理解できない時は、相手に聴いてみるしかありません。
一時的な「トライ」は勇気を出すだけで、メリットの方がとても大きいものもあるという事が発見でき、それが発見できた時、何百通りの行動ファイルがある事に気づくのです。
マスクの裏側を減らす、表の分厚さがへる
前回の記事で「マスク」について話をしました。
トライした結果、自分の「見せたくないマスク」の一部はなくなる可能性もあります。
店長である自分の「観られたくない裏側」が減ってくれば、維持するための表側の分厚さが減り「本当の姿」となります。店長としてのあなたには「裏がない」ということになり、自然体で店長を行えるようになるでしょう。
いつも見ている店長が真の姿になるのです。
真の姿に接するスタッフは真の姿のあなたに「本当の信頼」を持つ事でしょう。
B店長のトライ
B店長はトライしてみる事にしました。
いつもの通り、アイドルタイムにはスタッフにホールスタッフにおしゃべりをし始めるA男
そんなA男にB店長は「A男、ちょっと聴いてもいいかな」と声をかけました。
A男は怪訝そうに「なんすか?」と言ってきました。
B店長は「お店がアイドルタイムになると、A男がホールのスタッフとおしゃべりを始める事が多いように俺には見えるのね。それってA男は何か意図があってしゃべっているのかなあ」
B店長は出来るだけ思いこみを封じ込め「~のように見える、~のように聞こえる、~のように感じる」と現象面だけを伝えました)
それを伝えるとA男はぱあっと明るい顔になりました。
「店長気づきました?俺ね、前の職場でめちゃくちゃシェフが怖くって、いつも厨房とホールの空気感が悪かったんですよ。
正直厨房って調理している時って時間との勝負だからカリカリもするしね、だから自分が厨房にいるときは、手が空いたら出来るだけホールの子にドラマの話とか関係ない事話しかけて、空気を和ませようと思ってたわけ!」なんとも自慢げに話すA男。
そうA男には「意図」があったのです。しかも空気を良くしようと。B店長は「だらけてしゃべっている」と思い込んでいた自分を反省しました。
そしてA男に提案しました。
「A男、厨房とホールの空気がよくなるのはすごくいい事だ。正直俺は厨房が苦手だから、
どんな時にカリカリしてしまうのかはよくわからない。だからどんな時にカリカリしてしまうのかも教えてほしい。そうすれば、今真剣な時なんだって俺もわかるしね。
きっと厨房がわからないスタッフは「真剣」なのを「機嫌が悪い」と思いこんでしまう子もいると思うんだよね。それってもったいないから、それは俺に教えてよ。
厨房とホールの空気をよくすることに着目してくれて有難う。あと、せっかくA男がホールに話しかけてくれるのだったら、ホールの子も厨房にとって良い情報を提供出来るような話しに成長させていく事は出来るかな?」
「成長?」「そう!例えば『今日のランチのお客様の感想は?』とか『どんな感じの言葉を交わしながら食べてる』?とか。
A男がそういう言葉をかけるだけでホールはそういう事に意識がいくし、A男も厨房にさらに磨きがかかるだろ?きっとホールの子たちも自分たちの情報がホールに役に立っているって感じて嬉しいとおもうよ。そういう「仕事へのクオリティをあげる」話題に成長させていく事は出来るかな?」
「なんか難しそうっすけど、店長時々アイデアくれるんだったらちょっとやってみます」
「ありがとう!」
「店長いっつもそんないろいろな事考えてたんっすね、意外っす。」
B店長はA男とほんの少し信頼関係を築けた気がしました。そしてほんの少し新しい行動を選ぶ自信になりました。
「どの行動を選ぶのかは自分自身」
あなたも自分の行動パターンを一度考えてみてみましょう。そしてその行動パターンをつくっている店長のマスクの表と裏を。そこをしっかり見つめ、新しいパターンを選択する勇気を持ちましょう。すると新しい世界が見えてくるかもしれません。
選ぶ Choose Yourself:自己管理
無意識の自分の反応に気づき、自分が取ろうとする選択肢のメリットとデメリットを見定め、意図的に選択していくプロセスが「選ぶ」にあたります。
シックスセカンズEQモデル詳細≫
効果的な意思決定や行動選択のためのEQ3つのステップについて「知る」「選ぶ」と進めてきました。次号では「活かす」というテーマでお話ししたいと思います。
株式会社イーアンドシーエスサポート
代表取締役社長 掛川幸子
6セカンズ認定 EQプラクティショナー
CEQF:(上級)EQファシリテーター
株式会社イーアンドシーエスサポート代表
自分の世代も、その次の世代も、またその次の世代も、ずっとずっと人類が幸せに生きているように。
300年後「掛川さんがいたから今も幸せだよね」と言われるような、EQを広める人物でありたい。
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