【EQが生徒と教師にもたらすポジティブチェンジ】第1回-出会いと気づき、そして実践の始まり-
by : 成城学園中学校高等学校|森下 浩行 |
2025年9月12日 |
※この記事は、シックスセカンズ認定資格者として活躍するパートナーの皆様による、実践事例やEQ活用のヒントを紹介する記事です。
2022年春にSixSecondsのSELプログラム「セルフサイエンス」(日本語版)がリリースされ、EQエデュケーター資格認定講座も開講して資格認定者も順調に増えています。そして2023年には「EQフォーラム in ジャパン 2023 EQ for エデュケーション」が開催されました。Six Secondsは1964年設立のヌエバスクールを原点としていますが、シックスセカンズジャパンがいよいよ日本の教育分野に参入してきました。私は「シックスセカンズSELプログラム」普及推進プロジェクトに実行委員として参画し、EQフォーラムの第2部では教育現場に導入した事例報告の機会をいただきました。中学・高校での「セルフサイエンス」実践事例をもとにEQが教育にポジティブチェンジをもたらす可能性についてお伝えします。
EQとの出会いが私に光を与えた
私は教員としてのキャリアを歩みはじめて20年を越えました。
勉強に部活動、委員会活動と充実した学校生活を送っている生徒が多い一方、学校生活に前向きになれない生徒もいました。学ぶ意欲が湧いてこなかったり、友人関係に深く悩んだりする生徒たちはやがて不登校になり、ドロップアウトすることもあります。今や小・中・高校生のうち不登校の数は41万人(2023年度・文部科学省調べ)に上ります。
クラス担任をしているときには、できることなら学校生活を楽しみたいと思いつつもそうならない現実に苦しむ生徒の思いに寄り添い、何とか事態の打開を図ろうと、生徒・保護者と一緒にもがきました。すべての教師ならきっとそうするでしょう。対応が功を奏する場合もありますが、そうでないことの方が多いのが現実です。これまで自分が受け持ったクラスでドロップアウトした生徒の名前と顔は、今も忘れられません。
かみ合わなくなってきた歯車をまずは自分で調整する力を育むことができれば、彼ら彼女らの道の歩み方も変わっていた可能性があります。その力を育むにはどうしたらよいのか手あたり次第に新しい学びにつながる情報を求めて、キャリア10年目を過ぎるころの私は悩んでいました。
そんな時に出会ったのがEQでした。
変化の起点は自分
メンタルダウンしてしまう生徒との向き合い方を模索していた私にとって、EQについて学ぶことが、生徒理解のためだけでなく教師としての自分についての理解が進んだのは大きな収穫でした。
SixSecondsの、EQモデルでは、EQを発揮するために3つの領域を探求することから始まります。3つの領域とは、「知る(Know Yourself):自己認識」・「選ぶ(Choose Yourself):自己管理」・「活かす(Give Yourself):自己方向付け」です。
EQにふれた当初、2020年3月のアセスメント(SEI リーダーシップレポート)によると、私は3つの領域すべてが「機能レベル」でした。機能レベルとは、慣れた状況では十分なレベルとされています。学校生活に困難を抱える生徒への対応は、「慣れた状況」とはいえません。なかでも「知る」の領域は、機能レベルにやっと届いたという程度でした。
3つの領域は船のスクリューで例えられます。スクリューの大きさがアンバランスであると順調に航行するのは難しいでしょう。
3つの領域は8つのコンピテンシーで構成されており、8つのバランスはさらに崩れています。「知る」に含まれる感情リテラシーと、「選ぶ」に含まれる内発的なモチベーションは、機能レベルの手前の開発過程レベルでした。これがまさに当時の私の状態(感情を的確に捉えて向き合ったり、エネルギーを自ら生み出すことに苦労している)を物語っています。
EQコンピテンシーについての詳細≫
検査についての詳細≫
EQの学びを進めていくに従い、生徒のことを念頭に置きながらも自分と向き合う時間が増えました。アセスメントは「その時の自分」がどのくらいEQを活用できているかを伝えてくれます。
自分はどんな感情をいだきながら、目の前のことがらを見つめ、行動を選択しているのかに意識が向くようになりました。生徒と向き合っている時、保護者対応をしている時、多岐にわたる膨大な校務をこなしている時。トラブル対応においても生徒や保護者の発言から相手の気持ちを感じ取りながら傾聴し、即時的な反応ではなく、認知している自分の気持ちをのせて意見や考えを伝えることができるようになりました。EQについて学び続けていき、3年後のアセスメントでは、3つの領域の開発も進みました。
届けたい相手がいることの幸せ
2022年に普及推進プロジェクトの実行委員として出会った「SixSecondsのSELプログラム」には認定講座での学びが体系的・統合的なレッスンプランとして凝縮されていました。日本語版教材を仕上げていく過程で、これを教育現場に普及する必要性を強く実感し、2023年度に勤務校で開講した「セルフサイエンス入門」でその思いを形にすることができました。
「セルフサイエンス入門」の概要
対象: 高校3年生の自由選択講座(履修者は平均約20名)
形式: 週1回・50分×2コマ(100分)
期間: 4月から12月まで合計20回実施
スタイル: ワークショップやゼミナール形式
授業を構成する3本柱:
【1】UEQをヒントにしたワーク+セルフサイエンスプログラムの実施
8つのコンピテンシーに紐づいたレッスンプランを実施し、BBP(ブレインブリーフプロファイル)も受検
【2】EQ関連書籍の輪読
生徒が分担して各章ごとの要約を報告し、学校生活での体験と結び付けてEQを高める「問い」を作成
・2023年度、2024年度
ラリー・セン『ムードエレベーター 感情コントロールの新常識』(芸術新聞社)
・2025年度
ダニエル・ゴールマン、ケアリー・チャーニス『ゾーンに入る EQが導く最高のパフォーマンス』(日本経済新聞出版)
【2】システム思考の導入
氷山モデルや推論のはしごといったツールを紹介し、ワークショップを実施。
EQとシステム思考を融合させる考え方は、次の書籍に紹介されています。
ダニエル・ゴールマン、ピーター・センゲ『21世紀の教育 子どもの社会的能力とEQを伸ばす3つの焦点』(ダイヤモンド社)
次回は・・・EQの授業を受けた生徒たちは、何を感じ、どんな「変化」を遂げたのか。
感情に向き合うことで、高校生たちが抱える迷いや不安はどう変わったのか。生徒の生の声から見えてくるEQの力を掘り下げます。そしてその先に待つ、教育の未来と教師の成長の物語へ。
成城学園中学校高等学校
こたつプロジェクト
森下 浩行
「SELや非認知能力の実践って実際にはどうするの?」「導入する時にどんな準備や壁があるの?」「シックスセカンズのプログラムは他とどう違うの?」そんな疑問を解消し、現場での取り組みを共有し合える場です。孤軍奮闘しがちな教育現場で、仲間とつながり、学びを深めませんか?詳細・お申込みはこちら≫

開催日程:2025年11月16日(日)14:00~17:00 (13:30受付開始)@東京会場
※終了後、会場を移動して懇親会を予定しております。希望者は本申込み時に「懇親会参加」に☑を入れてお申込みください。懇親会参加費用は別途6000円を当日徴収させていただきます。
会場:ラボ教育センター会議室
〒169-0072 東京都新宿区大久保1-3-21
アクセス:https://www.labo-party.jp/company/
登壇者:森下 浩行氏

成城学園中学校高等学校 教諭
6seconds認定(上級)EQファシリテーター中学・高校での教育現場にて20年以上のキャリアを持つ。
2019年にEQに出会い、学校現場へのSEL導入・実践を探究。
2023年度よりシックスセカンズのSELプログラム「セルフサイエンス」を、日本で初めて通年で実践している。
EQを学びたい方へ
Six Secondsグループは、グローバルで、科学に基づき、実用性の高いEQを世界各国で伝えています。日本オフィスであるシックスセカンズジャパンでは、最先端のEQの情報を日本語で発信するほか、Six Seconds国際認定資格セミナーの国内開催を行い、資格を持ち日本各地で活躍するEQチェンジエージェントと共に日本全国へEQを届けております。