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職場のコラボレーション

by : Michael Miller, Six Seconds Global  | 

2022年12月14日 | 

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チームの多様化、デジタル化、ダイナミック化に伴い、職場におけるコラボレーションはより複雑になってきています。しかし、それにもかかわらず、チームを成功に導く基本的な行動や特性は変わりません。高業績のチームに共通する行動や特性とは何でしょうか?ここでは、職場でのコラボレーションに関する5つのチェック項目と、それをあなたのチームに導入するためのEQ(Emotional Intelligence:EI)のヒントを紹介します。

By Michael Miller, Six Seconds Global

原文:Collaboration at Work: 5 questions that predict how well teams connect, create and collaborate – and emotional intelligence tips to implement them with your team
(一部 3 Tips for Leaters to Increase Trust から抜粋)

チームのコラボレーションを向上させるための5つのチェック項目
あなたのチームですぐにできるEQ実践のヒント

最初の2つはGoogleのProject Aristotleから得たものです。これは複数年にわたりGoogleで行われた、効果的なチームの条件についての研究です。

1.メンバーが平等に意見を言える

2.メンバーの意見を聴く

そうです。世界で最もパワフルな企業のひとつが、チームワークを何年もかけて研究し、最終的に幼稚園の先生がずっと前に教えてくれたことにたどり着いたのです。それは、順番に話を聞くことです。

GoogleのPeople Analyticsチームは、当初別のより複雑な方法を試みていました。彼らは、高いパフォーマンスを発揮するチームを作る秘訣は、仲の良いメンバーや社交的な人を集めること、あるいは、内向的な人と外向的な人を適切な割合で配置するなど、性格を考慮した人員のバランスが重要ではないかと考えました。

しかし、結局のところ、「どんなメンバーがいるのか」はさほど重要ではないことがわかりました。どんなメンバーがチームにいるかということと、チームの成功との間には、何の相関関係もないことがわかったのです。
この発見は、別のところでも実証されています。

では、チームの成功には何が必要なのでしょうか。それは、「発言の順番を守る」「話を聴く」という2つの行動です。あるグループのメンバーの話す量がほぼ同じであれば、そのチームは成功する可能性が非常に高いのです。同様に、グループのメンバーがアクティブリスニングを実践していた場合、例えば、ノートパソコンを閉じたり、アイコンタクトを取ったり、誰かが言ったことを繰り返して(繰り返しの技法を用いて)いた場合も、チームの成功と強い相関がありました。

「発言の順番を守る」「話を聴く」ためのEQ実践のヒント

・チーム内の発言の機会の平等が保たれているか観察し、拡声器となってメンバーの発言を拾い上げる。
性格的なスタイルから無口な人もいれば、地位的な権力や影響力がないために無口な人もいるかもしれません。どちらの場合も、彼らの発言は軽視されることが多く、その結果、彼らはチームに安心・安全を感じなくなります。また他のチームメンバーも「ここでは、あの人の考えや意見を無視してもいいんだ」というシグナルを送ることになり、チームとしての心理的安全性も損なわれます。
見落とされているメンバーの意見や重要な視点を拾い上げ、グループの注意を向けさせましょう。
「さっきのジョアンナのコメントに戻りたいんだけど、みんな聞いてなかったかな。ジョアンナ、あなたが観察したことをもう一度言ってくれないか?」

・アクティブリスニングを実践する。
ノートパソコンを閉じ、目を合わせ、聴いたことについて繰り返したり要約したりし、議論や考えを深めるための問いを投げかけます。ミーティングでは、それをグループのルールとして設定します。

では、「発言の順番を守る」「話を聴く」だけで良いのでしょうか?発言内容も重要なのでしょうか?
次の項目は、このテーマをより深く掘り下げたものです。

3.チームメンバーは本音や本心を共有している

ペンシルベニア大学ウォートン校の経営学教授であるマイケル・パークは、チームの成功に関連するもうひとつの行動である「オープンな感情表現(emotional openness)」を発見しました。Organization Science誌に掲載されたこの研究によると、従業員が職場で感情を表現したり、メンバーが共感的な対応をとると、創造性の向上、より効果的な問題解決、新しいアイデアを生み出す能力の向上など、グループにとって生産的で有益なあらゆる成果を引き出すことができるといいます。

この発見は、「仕事では感情を排除するのが最善の策である」という、世界中の組織に今なお浸透している旧態依然としたマネジメントの信念に反するものです。この信念のために、従業員の感情を無視したり、抑圧したり、排除したりすることが常識になっていますが、この研究は、リーダーが全く逆のことをするべきであることを示唆しています。(もちろん、感情のままに行動しようということを提案しているのではありません。)

SiriusXMでWharton Business Dailyに出演したパーク自身の言葉です。
「リーダーにとっておそらく最も重要で緊急を要することは、感情に対処する勇気を持つことだと思います。それはポジティブなものだけではなく、あらゆる感情に好奇心を持ち、人々が感じていることを受け入れ、感情を排除したり無視したりしないことです。」

感情を適切に表現し、共感的に対応することで、チームの潜在能力が引き出されるのです。

チームに本音のやり取りを生むためのEQ実践のヒント

・不快感や不満を示す合図に注意し、耳を傾け、それについて適切な質問をする。
感情はデータです。どのような対人関係の場にも膨大な量のデータが存在しています。このデータにアクセスするには、一旦立ち止まり、会議をよく観察します。誰が顔をしかめているか?声のトーンはエスカレートしているか、攻撃的になっていないか?
こうした情報に意識を向けることで、心理的安全性に関して無言のメッセージが発せられていないかを感情を通じて特定することができるのです。問題が起きていそうな場合には、会議の後に一対一で話し合うのが良い場合もあります。
「会議中、あなたは顔をしかめてあまり話しませんでしたね。もしよければ、あなたが感じていたことについて少し教えていただけないでしょうか?」
あるいは、一般的に感じとったことであれば、グループに向けて話します。
「このトピックについて、皆様々な感情を抱いていることに気づきました。それぞれどんな気持ちか話してくれませんか?」
これを実践することで、いち早く心理的安全性がチームの基盤として構築されます。

・すべての感情には価値があることを認め、あらゆる感情を受け入れる。
人の感情を認め、共に探求します。「プルチックの感情の輪」は、何十種類もの感情のメッセージや意味を探るための素晴らしいリソースです。

感情の伝染と感情の共有の科学
感情の共有については別の言い方をすべきかもしれません。「チームメンバーは感情を共有しているか」ではなく、「チームメンバーは意図的に感情を共有しているか」と考えるべきでしょう。なぜなら、研究結果によると、集団内の人々は、意図的であろうとなかろうと、互いに感情を「共有」することが分かっており、これは「感情伝染(Emotional Contagion)」と呼ばれる現象だからです。私たちは皆このような現象を経験したことがあるはずです。不機嫌な人と会議をしていると、相手が言わなくてもそれがわかり、時にはその感情をもらってしてしまうことさえあります。感情は様々なメカニズムで広がっていきますが、そのほとんどは私たちが意識していないものです。
注:感情の伝染は、特に権力や権威のある立場の人の影響が大きいので、もしあなたがチームのリーダーなら、自分が他の人と「共有」している感情に特に気をつけるようにしてください。

次の質問は、チームの感情風土「心理的安全性」についてです。

4. メンバーはミスを恐れずチャレンジすることができる

GoogleのプロジェクトAristotleでは 、「発言の順番を守る」「話を聴く」といった目に見える行動に加え、職場で効果的なコラボレーションを促進するいくつかの信念や感情があることを明らかにしました。
その中で最も革新的でパフォーマンスの高いチームに共通しているのは、「心理的安全性」です。
心理的安全性:自分の意見を言ってもいい、ミスをしても罰せられないという信念です。
心理的安全性を定義するのは難しいですが、心理的安全性を持つ集団の中にいると、それを感じることができます。
現状や上司の考え、あるいは会社が現在進めているプロジェクトの方向性に異議を唱えるようなアイデアでも共有することができるのです。突拍子もないアイデアや、まだ完全に形になっていないアイデアでも、積極的に共有することができるのです。何か違うことを試みて失敗しても、叱られたり、不当に罰せられたり、解雇されたりすることはないと知っているからです。それは、インクルージョン、誠実さ、合理的なリスクテイクを大切にする文化です。

心理的安全性の核となるのは「信頼」感情です。特に集団生活の中で多くの行動を促す感情です。その効果は絶大です。信頼度の高い企業では、従業員のエンゲージメントが76%、生産性が50%向上し、燃え尽き症候群が40%減少していることが調査で明らかになっています。

全体として、シックスセカンズの2017年バイタリティ・レポートでは、信頼はなんと62%のパフォーマンスを予測することがわかりました。

チームに信頼感を醸成するためのEQ実践のヒント

信頼とは、以下のような感覚です。
●人を頼れるという安心感
●集団で協力し、チームワークを実感できる満足感
●思い切ったリスクを取ることができる自信
●信頼できるコミュニケーションを体験することで得られる透明性

それらを生み出すためには
・リーダー自らがメンバーを信頼することから始める。
シックスセカンズのCEOであるJosh Freedmanは、「信頼は双方向のものである」と説明しています。 信頼は、人と人との間に築かれるものであり、それが相互に作用することによって築かれます。しかし、「信頼してください」と言うだけで、信頼が得られるわけではありません。リーダーは、信頼を醸成するために、率先してメンバーを信頼する必要があるのです。

・目的の基につながり合う。
あなたのチームは、仕事のミッションやパーパスに向けて結束できていますか?あなたが発揮しているリーダーシップは、ミッションやビジョンを明らかにし、そこに人々を巻き込むことに時間を費やしていますか? より大きな目的に向かって結束しているチームは、より大きな信頼関係を築くのです。

・振る舞いや対応に一貫性を持たせる。
信頼を築くには、信頼に足る言動が必要です。約束を守り、振る舞いや対応に一貫性を持たせることが信頼感を生みます。

・組織感情や風土に関する客観的なデータを収集する。
信頼とパフォーマンスに関する上記のデータは、シックスセカンズの組織風土診断ツールから得られたものです。すでに高い信頼感がチームに醸成されていない限り、リーダーに直接話すよりも、まずは匿名性の高いアンケートで意見を出すほうが、本心を打ち明けやすいでしょう。

5. メンバーはチームの目標にやる気を感じている

マーティン・ハースマーク・モーテンセンは、20年以上にわたって、世界中の組織でチームの有効性を研究してきました。彼らの研究は、Harvard Business Reviewで取り上げられ、チームの成功に最も重要な要素は、説得力のある方向性や目標であることを発見しました。

「優れたチームの基盤は、メンバーに活力を与え、方向性を示し、参加させる方向性です。チームは、自分たちが何に向かって働いているのかがわからず、明確な目標も持っていなければ、刺激を受けることはできません。」

この言葉からも明らかなように、目標の共有が不可欠なのはモチベーションのためです。明確な目標がなければモチベーションは高まりません。控えめすぎる目標はモチベーションを下げ、無理な目標はやる気をなくさせます。さらに、本当にやる気を起こさせるためには、チームの目標が、人々の内発的なモチベーションに働きかける意義深い目標である必要があります。

チームの内発的なモチベーションを生むためのEQ実践のヒント

・外発的なモチベーションと内発的なモチベーションの違いを理解する。
外発的なモチベーションと内発的なモチベーションの違いを理解し、内発的なモチベーションを促す3つのヒントを実践することで、高いパフォーマンスを持続させることができます。

・メンバーの役割意識を醸成する。
明確で責任感のあるコミュニケーションを実践し、メンバーが目標とその達成に向けて果たすべき役割を理解するようにします。

この最後の質問は、グループが達成しようとしているより大きな目標と、その目標についてチームメンバーがどのように感じているかを探るものです。

コラボレーションを促進するリーダーとしてのアクションステップ

安全で、大切にされていると感じられ、目標が明確なチームでは、人々はより良いパフォーマンスを発揮することができます。リーダーの役割は、このような最適な状態を作り出すことです。まずは上記のヒントを参考にアクションを起こしてみましょう。
次のステップ?それは、あなたのEQを鍛え、継続的に向上させることです。EQは、学習可能で測定可能なスキルであり、高いパフォーマンスを生むリーダーとそうでないリーダーの差を分けるものです。

Six Seconds Japan シックスセカンズジャパン EQ Six Seconds

Michael Miller
Senior Content CuratorSix Seconds米国本部のライター。ノーブルゴールは、命の奇跡への感謝を共有していくこと。より健康的でバランスの取れた達成感のある人生を生きるための、最新の脳科学に基づいた実践可能で適応可能なヒントを中心に記事にまとめています。

 

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