EQと経営シリーズ Vol.2
by : シックスセカンズジャパン 代表 田辺康広 |
2023年6月20日 |
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EQのなりたち ~IQ偏重教育が生んだ社会への問いかけを背景に生まれたEQ~
第1回は、下記の3つのテーマについて話してきました。
今回はEQが開発された経緯や注目されたいきさつを紹介いたします。
EQが開発された背景と経緯
すべては1987年の夏、2人の心理学者から始まりました。
「ピーター・サロベイ」と「ジョン・メイヤー」というアメリカの学者が家のペンキ塗りをしながら、話をしていたときに、「EQ-感情知能」の全体構想が誕生しました。ピーター・サロベイ(イエール大学学長、イエール大学の心理学教授)とジョン・メイヤー(ニューハンプシャー大学の心理学教授)の2人は、この日、認識や感情に関する研究について話しているうちに、政治家へと議論が及び「これほど賢い人がどうして、これほど愚かな行動をとれるのか?」と、彼らは不思議に思ったそうです。
そこで、不思議な事が起こりうる要因として、2人の出した最終結論は、「賢い意思決定には従来のIQで測定した知性を超えるものが必要」、「従来と異なる知性を超えるものが必要」、「従来と異なる知性が無ければ、現実に起こっていることの説明ができない」、ということから新しい研究ははじまりました。
1)研究の芽生え
提唱者のサロベイ博士とメイヤー博士によると、とくに1960年代、70年代にかけては、人工知能(AI)やスキャニング技術を使った脳科学の研究にともない、心理学の世界においても感情と知能の解釈の見直しが加速度的に進んだと言われています。
このように、感情に関するさまざまな分野で新たな議論がなされ、1つの帰結として、感情知能(EI)論を提唱したと説明されています。
他の研究者や思想家も大勢、感情知能の概念に貢献してきています。ルーベン・バーオンも1980年代後半から、業績における感情の効果を研究し続けてきました。実際に、彼の博士論文の草稿に「EQ」という言葉を用いています。
2)教育学的見地からも知能論の再構築
一方で、70年代の米国の退廃的世相を生み出した原因が、IQに偏り過ぎた教育システムにあったのではないかとして、教育学的見地からも知能論の再構築が議論されました。
1960年代後半から70年代の米国では、J.F.ケネディ大統領の暗殺、ベトナム戦争の泥沼化、ドルの金本位制の崩壊、ウォーターゲート事件といった大きな事件が起こっていました。これらの出来事の大半は、IQの高い賢い人達によって意思決定されたものばかりです。
● 薬物の乱用
● フリーセックス
● 暴力、銃による悲劇的・刹那的な事件の増加
など、本来の人間が求める幸せな状態は消え失せ、市民生活も退廃化していました。
次世代を担う子供たちの教育現場に目を向けると、IQ偏重の教育システムが体系的に構築され、運用されていました。
このような状況の下、ハーバード大学教育学部のH.ガードナー博士は「欲望や衝動のコントロール力の低下、倫理観の欠如」などの課題は、人間の知能のごく一部しかみていない「IQ偏重主義の教育システム」が原因ではないだろと考え、知能を幅広く捉えるべきという理論「知性の多重性理論」を提言しました。
H.ガードナー博士は次のように述べています。
そして数ある知能を上げました。(2009年時点)
● 言語的(Linguistic)
● 論理数学的(Logical-mathematical)
● 身体運動的(Bodily-kinesthetic)
● 音楽的(Musical)
● 対人的(Interpersonal)
● 内省的(Intrapersonal)
● 博物学的(Naturalistic)
といった知性が存在し、評価すべきだとしました。
シックスセカンズの会長である、カレン・マッカーンは、1967年に「子供をランク付けするのを止めて、子供達がそれぞれに持って生まれた才能や資質を見つけ、それを伸ばす」ことを目標とした「ヌエバスクール」を開校しました。
EQが注目されるようになったいきさつ
米国心理学ジャーナリスト、ダニエル・ゴールマンがその著「EMOTIONAL INTELLIGENCE(1995)」にて新しい知能論を紹介したことが世界にEQを広めたと言われています。
彼は自分の経験論からではなく、大脳生理学の見地を引用して、感情の発生、制御のメカニズムを説くとともに、サロベイとメイヤーの論文(1990)をベースに、感情をコントロールし、人間関係を上手に維持する知性の発揮こそがビジネスや自身を取り巻く社会生活を豊かに築くキーであると展開しました。
社会生活におけるEmotional Intelligenceの活用についてはさまざまなシーンでの具体的例を挙げながら、実践しやすいように説明をしました。
また、発刊後の、雑誌「TIME」の特集でIQに対峙する能力(実際はEQもIQと同じIQであり対峙はしない)としてEQという新語を生み出し、理解しやすく、イメージしやすい言葉ということで、世界にEQという言葉で浸透をしました。
翌年の夏には、日本語訳「EQ-心の知能指数」(土屋京子訳、講談社)発刊時もEQという言葉を利用し、国内でもEQという名称が定着しています。
論文の著者であるサロベイやメイヤーたちによれば、ゴールマンの著書を通じてEQが世界中に広まった要因として考えられるのは以下のようなものであるとしています。
● ゴールマンの本が読みやすく、興味を誘う内容だったから
● 誰でもEQを使ってもっと賢くなれると約束されていたから
そして、この本の第15章「情動教育のかたち」には、ゴールマンがヌエバスクールの取材に訪れた様子が書かれています。
ヌエバ学習センターの「セルフ・サイエンス」の授業風景だ。…この私立学校では、EQの理想に近い授業を行っている。セルフ・サイエンスの授業テーマは「感情」だ。自分自身の感情と、人間関係から生じる感情。教師も生徒も子供の心の問題に注目することになる。…”
(出典:ダニエル・ゴールマン「EQこころの知能指数」、講談社、1998、pp.408-409)
この本がきっかけで、ヌエバスクールに世界中から問い合わせが殺到しました。そして30年以上続く「セルフ・サイエンス」のエッセンスを世界中の人々に届けようと、カレンマッカーンを始めとするヌエバスクールのメンバー達が「シックスセカンズ」を設立しました。
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次回は第3回として「EQの産業化への導入経緯(欧米)」をお届けします。
シックスセカンズジャパン株式会社
代表 田辺 康広
EQを学びたい方へ
Six Secondsグループは、グローバルで、科学に基づき、実用性の高いEQを世界各国で伝えています。日本オフィスであるシックスセカンズジャパンでは、最先端のEQの情報を日本語で発信するほか、Six Seconds国際認定資格セミナーの国内開催を行い、資格を持ち日本各地で活躍するEQチェンジエージェントと共に日本全国へEQを届けております。
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